第51話 空中迷宮に挑戦しました
空中迷宮に踏み入れてみると、見た以上の恐怖があります。
先ほどまで歩いていたラーウスの町がミニチュアのように見えるほどの高さを全く見えない床と壁で覆われているこの空間は、アウラの動きを見る限り階段等もあるらしく、相当複雑な構造であるとみて間違いないと思います。
「すごい…。」
先ほど、竜也が落ちたときにそうなったそうに、安全装置がしっかりと働くと知っていても、さすがにこの高さは腰が引けます。
「さーて、最後の挑戦者さんはゴールできるかな? リタイヤはいつでもどうぞ!」
後ろから係員のそんな声が聞こえてきます。
そんなこと言われなくともゴールして見せますとも…
私は、一歩ずつ確実に進んでいきました。
さて、私が挑戦を開始してから早30分…
私は、迷宮に対する恐怖よりも下の風景に見とれていました。
私の足元に広がっている風景と言うのは、ラーウスの町並みなのですが、その町並みは大きく整備されており、中心にある教会を中心に放射線状に道が伸びていて、大きな通り…ラーウス街道と南北街道がひときわ大きくて目立っていました。
「…ちょっと、怖いけどこの風景はすごいかも…。」
下に広がる風景を見ながらゆっくりと確実に進んでいきます。
「あれなんだろう?」
ゴール付近にまで来た時、建設中と思われる建物を見つけましたが、そこで工事が行われている様子はありませんでした。
「牡丹! どうしたんだ?」
「ごめんごめん!」
建物の事は気になりましたが、私は急いでゴールの方に進んでいきました。
空中迷宮に行ったあと、私たちは町の中心にある教会に行くことになりました。
この教会は、旧王国時代に建設されたもので、旧王国の最後の王…すなわち亮の指示で造られた建物の一つだそうです。
「これが、国王が残した手記の一部だ…なんだか複雑な言語で書かれていて読めないのがなんてなんだが…もしかしたら亮と同じ世界出身の牡丹や竜也なら読めるかもな…。」
ヴァーテルは、そう言いながら手記の前から離れました。
ガラスケース越しに置いてある手記にはこう書かれていました。
街道整備計画
㋐ ラーウスより東へ国境を越えた街道を整備し、各国の物流の効率化を図るとともに、小国が多くあるこのあたり一帯の国々で協力し、国境を越えた交流を図る。
㋑ 王都から南へ街道整備を整備する。近く訪れるであろう帝国との戦線に備えて有事の際に住民を南の国に避難させるルートとして整備する。
㋒ これらの街道と既存の街道を効率よく接続し、各街道沿いに一定規模の町を整備する。
㋓ これらも目的と共に街道を整備していくが、ゆくゆくは戦いのない世界が訪れ、たくさんの人々がこの街道を使って気軽に世界中を旅することができる世界になることを望む
私が、この手記を読みあげるとヴァーテルはこう言いました。
「なるほどな…一番目のは、ラーウス街道、三番目のは、スズランやナデシコと言った町なんだろうな…しかし、二番目の街道に関しては、存在していないから実現できなかったんだろうな…四番目に至っては夢のまた夢ってところか…。」
ヴァーテルは、改めて手記を見始めました。
「街道だけじゃないみたい…だって、ラーウス街道は結局旧王国領内で終わってるから、完全に実現できているとは限らないし、街道沿いの町ももっと整備するつもりだったかもしれない…。」
「そうだな…まぁ実現が結構難しい内容も含まれているから、さながら国王の夢だったんだろうな…平和な世界ってやつが…。」
おそらく竜也の言う通りなのでしょう…
大陸全土を帝国が納めている今は、大きな戦いは起きていませんが、亮が国王を務めていた当時は、帝国からの侵略や周辺の小国同士の戦争が絶えなかったそうです…
そんな時代だったからこそ、亮は、争いのない平和な世界を望んでいたのでしょう…
亮が考えていた理想の世界…
それはきっと素晴らしいものだったに違いありません…
私は、過去にいる亮を思い目をつむるのでした。
読んでいただきありがとうございます。
「ひだまりの国」の外伝にあたる「ひだまりの国 外伝 あかねと炎竜」を投稿しました。お時間がある方、そちらの方も見ていただけますと幸いです。
これからもよろしくお願いします。




