第47話 研究所に来た目的は…
さて、先ほどの古文書を奥にしまいに行った亮が持ってきたのは、先日も見た魔法の術式でした。
「これがどうかしたの?」
「まぁな…とりあえず時空魔術が完成しそうだから、いったん見せておこうと思ってな…。」
「そうなんだ…。」
なんと言いますか…早っ! 言いだしてから1週間もたっていないのにすでに完成目前まで来ているとは…
「それで…あとどのくらいで完成しそうなの?」
私が聞くと亮は、何やら難しそうな顔をしています。
「亮?」
「…とりあえずこの魔法自体は使える段階に入ったんだ…しかし、いくつか欠点が出来てしまって、それが改善されていない…。」
「欠点って?」
私が聞くと、相当言いにくいのか彼は黙りこんだままである。
「亮…言いにくくても言って…どんな答えでも文句は言わない…。」
この時点で何となく見当はついていました。
私を未来に帰す目的で造り始めた時空魔術…その最大の弱点を知っている私からすれば、亮が何を言いだすか大方の見当はついていました。
「…わかった…。」
亮が固く閉ざされた口を開けました。
私とフルートは固唾をのんでその様子を見守ります。
「…時空魔術では…未来に行けない…。」
やっぱりそう言う事でしたか…
「そうなると…どうするの?」
「…もう少し研究してみるが、おそらく不可能だろうな…やはり、原因調査に力を注ぐ方がいいのかもしれない…。」
「そうね…。」
大体予想はついていましたがやはり失敗ですか…やる前に一言言っておけば余分な時間をかけなくて済んだのですが、それで、歴史が変わってしまっても困ります。
「…今日のところはそれだけだ…明日からしばらく遺跡の調査をしようと思う…。」
亮がそう言ったのを最後に三人の中には重苦しい沈黙が続くのであった。
結局、あの後誰一人として言葉を発することなく家に帰りました。
時空魔術では未来には行けない…わかっていたこととは言っても残念でなりません…。
「入るぞ…。」
「どうしたの?」
部屋に入ってきた亮に私は話しかけました。
「例の魔法のことなんだが…すまなかった…。」
「…気にしなくていいわよ…別の方法を探せばいいし…ちょっと散歩に行ってくる…亮もどう? たまには息抜きしないと…。」
亮は首を横に振ったので、私は一人で散歩に行くことにした。
こちらに来てからあまり町の方を歩いていなかったので、今日はそちらに行くことにしました。
石造りの建物が並ぶこの小さな町は、月に一回王都から物資が届く関係で、多くの人が行き来しています。
王都から来る荷物の運搬には、主に魔法が使われているそうですが、私がいた時代ほど魔法が普及していない関係で魔法を使える人が少なく、月に一回と言うペースにせざるを得ないそうです。
「ここが過去なんて信じられないわね…。」
いろいろと事情は違いますが、私の目の前に広がるのは、私がいた時代と変わらない人の営みです…
奥様方が町を歩きそれを商人が呼び止める…子供たちは、たくさんの遊びを発見して、はしゃいでいている…
そんなどこにでもあるような風景が広がっているだけです…
「それにしてもヒメちゃんのことすっかり忘れてたけど、帰った不機嫌なのかな?」
ヒメリの性格からして、おそらく何で自分をおいてったのかとさんざん言われるような気がします…
「でも、そこが案外可愛かったりするのよね…。」
これが、私の率直な感想でした。
ヒメリは、ものすごくわがままなのになぜかそこがとてもいとおしく感じてしますのです…
子どもだからか、ヒメリだからなのかは知りませんが、ヒメリがかわいくて仕方ないのもまた事実です…
「あー牡丹お姉ちゃんこんなところにいた!」
噂をすれば(してませんが)何とやら、と言う言葉のごとくヒメリが現れました。
「ヒメちゃんどうしたの?」
「だって、牡丹お姉ちゃんが勝手にいなくなっちゃうし…。」
ヒメリは、体制を低くした私に抱きつきました。
「探してくれたの?」
私が聞くとヒメリは、その体制のままうなづきました。
「ごめんね…一緒に帰ろうか?」
「うん…だったらさ…はぐれないように手をつないでよ…。」
「はいはい…。」
私とヒメリは、手をつないで帰路につきました。
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