第46話 亮の研究所につきました
さて、長らく続くかと思われた密林を抜けたところにある少し開けた場所にその建物は立っていました…
「ここが…。」
「そうだ…俺の研究所だ…自分の魔法を全開で行使して建てたものだ…ちなみにこのあたりの森は、この研究所を隠すためのカモフラージュだ…。」
この研究所のためだけにあったんですね…あの密林…
これほどまでに厳重にカモフラージュ(?)する必要性があるのかは知りませんが、緑色を背景としてポツンと建っているその白い建物は、何とも言えない異様な雰囲気を発しています。
「それで…この研究所で何をするの?」
「ちょっと見てもらいたいものがある…ついてきてくれ…。」
亮が、入口を開けて入って行きます。
「牡丹さん…行きますよ…。」
フルートにうながされて私も研究所に足を踏み入れました。
研究所の中は、たくさんのファイルが並んでおり、研究所と聞いてイメージする実験器具や標本と言ったものは見当たらなかった。
「これを見てほしくて読んだんだ…。」
私が周りを見ていると、亮が古びた本を持ってきました。
「それは?」
「この世界の創造伝説…それが書かれた古文書だ…。」
そう言いながら亮は、それを私の方に突き出しました。
「創造伝説? それと何か関係あるの?」
「いいから読んでみろ…。」
「分かった…。」
私は、その古文書を読み始めました。
始まりの魔女
時は、人類が生まれるよりも前、始まりの魔女が世界を創造した。その時、魔女は二つの世界を造った。一つの世界には、魔法をもう一つの世界には科学をそれぞれ与えた。それが、この世界の起源であり、魔法の起源でもある。二つの世界も始まりの魔女も現在も存在していると言われている…
「これは…。」
「おそらく科学が与えられた世界が、俺たちがいた世界で魔法が与えられた世界がこの世界だとすれば…。」
「二つの世界をつなぐ何かがある…そう言いたいの?」
私が聞くと、亮は静かに首を縦に動かした。
「牡丹ちゃんは、道中で俺がこの世界にとどまっている理由を気にしてただろ? 俺がこの世界にとどまっている理由は、このことが気になるからだ…二つの世界の間に何があるのか…始まりの魔女とは何者の事を指すのか…。」
亮は、私が返した古文書をしまいながらそう言いました。
「でも、その始まりの魔女って実在するの?」
「…この世界に来てから一度だけあったことがある…。」
「えっ?」
会ったことがあるって…始まりの魔女は、相当昔の人間のはず…
「あれは、俺がこの世界に来てからまもないころだ…偶然この町にたどり着いて、そこそこの生活ができるようになった時…彼女は来たんだ…。」
そう言って亮は、過去の事を語り始めました。
あの日、俺は、魔法の練習のために森の中にいた…
「『タッチアンドフライ…ゴーボックスアンドライト…』」
当時は、先に見せたような術式をすべて唱和していたから簡単な魔法を使うことですら至難の業だった…その時だ…彼女が現れたのは…
「魔法の練習ですか…あなたがその気でしたら存分に練習できる場を提供いたしますよ…あちらの世界の方ともたまにはお話ししてみたいですし…。」
黒いローブで全身を包んでいた彼女の姿をはっきりとみることはできなかったのだが、それ以上に私が向こうの世界からこちらの世界に飛ばされた人間だと一発で見抜いたことの方が驚きだった…
「何者なんだ?」
「…しいて言うなら始まりの魔女…そんなところかな…北上亮さん…。」
そう言った彼女の口角が吊り上った。
「さてと…さっきも言った通り、移動しようか…『創造魔術 何にも染まらない世界』」
彼女は、とうの昔に廃れた古い唱和方法を使って、俺に魔法をかけたんだ…
「その後、いろいろ彼女から聞いてな…比較的簡単に魔法が使える現在の方法を学んだんだ…。」
「そうなんだ…。」
始まりの魔女…何者なのでしょうか?
私の疑問は、ますます深まって行くのでした…
読んでいただきありがとうございます。
お気に入り登録が10件になりました。
本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。




