第36話 お姉ちゃんが再来しました
あの港町を発ってから私たちは、かなりのハイペースで西へ進んでいました。
竜也の言う仮説をしっかりと聞きたいというのもありますが、蓮華や百々に会いたいという気持ちの方が大きいような気がします。
「それで、次の町まではどのくらいなの?」
「そうだな…確か5日ぐらいだと思う…。」
あと5日…隣の町までは結構遠いようです。
「それにしても暇だな…なんだか、イベントがあるとあれなんだけど…。」
私としては、平和な方がいいのですが、どうやら竜也は現状に不満があるようです。
「『召喚魔術 炎竜召喚』」
竜也がそう言ったその瞬間…突如として後ろに炎竜が現れました。
よく見ると、炎竜の下の方から白い煙が上がっているように見えます。
「ちょっとした、ハプニングをご所望のようですね~でしたら叶えましょうか~? 炎竜さ~ん…軽くでいいからやっちゃってくださ~い。」
「…主よ…その口調についてはもう少し何とかならぬものなのか?」
あっ…炎竜ってしゃべれるんだ…
前回は、口を利く云々の前にお姉ちゃんが目立っていたからまったく気づきませんでした…
「とりあえず…前もそうだけでど何でわざわざ竜に乗るの?」
「え~だって、紙を広げて唱和したら煙と共に突然出てきて面白いですし~」
やっぱりそう言う事でしたか…
「は~い、おしゃべりはおしまいですよ~ご所望通りトラブルをいい加減起こしてくださいよ~」
お姉ちゃんは炎竜に話しかけています。
「仕方ない主だ…それでは行くぞ…『炎の息吹』」
炎竜がいきなり…いや…予告はしていましたが、炎を吐き出しました。
「ちょっと! 危ないでしょうが!」
「別に~いいじゃないですか~けがもないようで~ご要望に沿っているかと思いますけど?」
ハプニングを要望したわけではないのですが、なんという間の悪さで登場してしまったのでしょうか…
竜也とヴァーテルは、お姉ちゃんのことを知っているのでいいのですが、アウラに至っては、お姉ちゃんのことを警戒しているのか、私の後ろから離れようとしません。
「それで、結局、お姉ちゃんは何しに来たの?」
「えっと…特に用はないからなんとなく?」
なんとなく…まぁお姉ちゃんがちゃんと目的をもって行動しているときの方が貴重なので特段おどろくことではないのですが、なんとなくでハプニングを起こされてはたまりません…
「まぁやることをやったわけですから帰りますけどね~それと、先ほど少し西の方で百々さんに会いましたよ~それじゃぁまた、会いましょうか~」
そう言い残してお姉ちゃんは炎竜に乗ってさっそうと去って行きました。
「なんだったんだろう…。」
「相変わらずあれだな…あかねさんは…。」
「お前が、もともといた世界には正常な人間はいないのか?」
「結局誰だったのあの人?」
私たちは、それぞれ東へ飛び去って行く炎竜の背中を見つめながらそう言いました。
さて、お姉ちゃんが去って行ったあと、私たちは、一路西へ向かっていました。
お姉ちゃんの言い方だとおそらくこの付近に百々たちがいるはずです。
「この辺にいるといっても、実際どんなものかわからないぞ…。」
確かにヴァーテルの言うことにも一理あります。相手も、同じ方向に移動してるのですから、それ以上の速度で移動しないと意味を成しません。
もう一つ気になるのが、お姉ちゃんは、百々と会ったとは言っていましたが、蓮華に会ったとは言っていません。お姉ちゃんの場合、あえて言わないという選択肢はないはずなので、蓮華は百々と出会っていない可能性が高いと言う事です。
「もしかしたら、どこかで百々と蓮華と会ってるかもしれないから、とりあえず話だけでも聞いてみようかな…。」
まぁ百々と久しぶりに会話したいという方が大きいかもしれませんし、竜也も百々とはそれなりに仲が良かったので、会いたくないということはないと思います。それに、ヴァーテルとアウラも百々がどのような人物か気になっているようです。
時々のトラブルがありながらも私たちは、西へ向かうのでした。
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