第33話 しつこい人たちです
さて、パームム商会スイレン支部の受付嬢から百々が所属している行商一行がナデシコから西のラーウスに向かっている途中だという情報を聞いたので、私たちは、百々を追いかける形となってスイレンを出発しました。
「ナデシコまで三日か…。」
「そうだな…だが、ラーウスまで追いつけないと仮定すれば、しばらくは会えないだろうな…。」
ヴァーテルの言う通りです…
お互いに同じ方向に移動しているのでは、なかなか出会えません。
「こういっている間にもあれからもしれないから、急ごうか…。」
「まぁそうね…。」
竜也のそう言った意見もあり、スイレンで一泊することなくすぐに西へ向けて出発しました。
月が雲に隠れて真っ暗になラーウス街道を手元のランプを頼りに西へと進んでいるとき…
「そこの奴ら荷物を…ってお前らは!」
突然現れた盗賊が私たちの顔を見て驚いたそぶりを見せます。
あーそう言えば旧国境超える前に盗賊さんに襲われた気が…
「あんときはよくも…今度こそ倒してやる!」
そんな時間はないのですが…
でも、やるしかありません…
「『雷魔術 稲妻乱舞』」
「『水魔術 水城形成 効果付与 耐雷』アウラ! 相手の人数とこのへんの地形の把握をお願い!」
私は、後ろにいるアウラに指示を飛ばします。
その間にも、稲妻がこちらに迫ってきています。
「なんかよくわからないけど行くよー『探知魔術 人数調査 条件:敵』……敵は全部で15人!」
「なんかあれみたいだし行くか…『観察魔術 敵情視察』…あー今、牡丹が相手してるのが一番強いみたいだよ…。」
「もう一度行くよー『探知魔術 地形把握』」
アウラはともかく竜也も後方支援に回ったようです…
「一番強いってどのくらい?」
「実力だけで言うとお前よりやや上だ! あと一つ重要なことが…」
「それだけわかれば十分! 『水魔術 水城改築 形状:攻撃特化』」
私は、彼の言葉をさえぎってから魔法を発動させます。
どうせ、聞いていたところで「なんだっけ」や「忘れた」で片づけられるのは目に見えているからです。
「水の壁ぐらいで俺の魔法が防げると思うなよ!」
稲妻が、水の防御壁を直撃しますが、不純物ゼロの純粋な水になるように魔力を付与した水なので電気を通しません。
「一体どういうことだ?」
「言ったでしょ? 耐雷付与って…水には、目に見えない色々な物質が混ざっていてそれが電流を通すの…だから、その物質を取り除いた純粋な水を使えば、電流を通さないからあなたの攻撃を防げる…そう言う事よ…。」
「くっ!」
まぁ水の不純物をゼロにするって言う案は、竜也の発案なのですが、彼の真意を聞けるまでどれだけかかったか…
それは、置いといて自分でも耐雷付与がこれほどの短期間でできるとは思っていませんでした…
「それじゃあ、こっちの反撃…『水魔術 水城 攻撃用意 方位:北北東 距離:20』…発射!」
水の壁の一部が、大砲の形に変わり、そこから相手に向かって弾が発射されました。
「くそっ! かなわない…撤退だ!」
頭とみられる男は真っ先に走り去って行き、取り残される形となった他の人たちもそれに続いて去って行きました。
盗賊さんたちが去って行ったあと、ヴァーテルがこちらに向かって走ってきました。
「大丈夫か? 突然撤退したが、いったい何が…。」
「あーそれなんだけど…。」
私は、ヴァーテルにこちら側であったことを説明しました。
「…なるほどな…不思議なものだ…水の中に見えない物質があるなんて考えたこともなかった…。」
まぁそうでしょうね…今まで見る限りこの世界では、魔法は発達していても科学はまったくと言っていいほど発達していないようですし、魔法で出来ればその原理は深く追求しない傾向があるようです。
「それにしても、すごいものだな…まぁ俺たちの勝利を祝ってくれてるのかは知らんが…。」
ヴァーテルが空を見上げながらそう言うと私を含めて皆が空を見上げました。
「きれい…。」
いつの間にか、空を覆っていた雲がなくなり空には、私たちの勝利を歓迎するように満天の星空が輝いていました。
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