第19話 風邪をひいてしまいました
どこかの村。
私は、男の子の背中におんぶされる形になっています。
「待ってろよ! すぐに着くから!」
男の子が、背中の私に話しかけますが、私は、意識がもうろうとしてはっきりとしません
「…大きい…大きな木…。」
私の目線の先には、樹齢100年は超えるだろうと思われる巨木がありました。
その巨木の前を過ぎて林を抜けると小さな家が見えてきました。
「着いた! おじさーん!」
男の子が、家の前にいたおじいさんに手を振ります。
「おー久しぶりじゃの…ってどうしたんじゃ!」
おじいさんが、背中におぶられている私に気づいて焦った様子で男の子に駆け寄ります。
「空き地で遊んでたらこの子が倒れてたんだ…。」
「そうか…わかった…治療してみよう…。」
おじいさんの家に男の子が入って行き、後ろからおじいさんが入ります。
「どれどれ…。」
男の子が言うには、おじいさんは元医者らしいです…
おじいさんは、私をベットに寝かせると手早く診察を始めます。
「うむ…まぁただの風邪じゃろう…薬を渡すからそれを飲ませれば大丈夫だろう…。」
おじいさんが、男の子に薬を渡すと男の子はお礼を言ってからふたたび私をおぶってその家から出て行きました。
私が目を覚ますと宿の天井が視界に入りました。
「…どうしたんだっけ…。」
体がだるくて額には濡らしたタオルが置いてあります。
横を向くとヴァーテルが椅子に座ったまま寝ていました。
ここまで語れば大体の方は察してくださることでしょう…
風邪をひいてしまいました…
なぜ、風邪をひいてしまったのか…それに関しては少々思い当たる節があります…
それは、昨日水魔術の練習をしていた時のことです…
「『水魔術 水流弾』」
私の上に大きな水の塊ができます。
「やった!」
そう喜んだのもつかの間…
できたのはいいですが、飛ばすのを忘れていました。
私の上にあった水の塊が重力に逆らえるわけなく、私の上に大量の水となって落下してきました。
季節は冬…雪がちらほらと降っている中でびしょ濡れになってしまったのです。
「あーあ…でも、そのうち乾くかな?」
今、考えればこの発想が危うかったのかもしれません…
冷静に考えてみれば、寒空の下でぬれた服で水使う魔法の練習をしてるにも関わらず風邪をひかない方がおかしいのだと思います…
そもそも、ヴァーテルに買ってもらった服も濡らすのが申し訳ないからと最初に着ていた防寒具の中のワンピース(防寒具はヴァーテルの物だったようです)で外に出た時点で間違いかもしれません…
私は、寝ているヴァーテルを横目に見ながらゆっくりと体を起こします。
昼間ヴァーテルが看病してくれてくれていたからなのか幾分か楽な気がしますが、体調がいいと言える状況ではありません…
ただ、このまま寝ているのも性に合わないので、ヴァーテルを起こさないようにゆっくりと立ち上がってそっとドアを開け外に出ます。
さすがにこんな状態で宿の外まで出るのはまずいので窓から外を見るだけですが…
「なんだったんだろう…あの夢…なんか懐かしい気すらする…。」
熱でうなされているうちに見た夢と言えば、幼い時に母に看病されていたりとかそう言うものだと思っていましたが、それは、マンガの読みすぎでしょうか?
「何だったんだろう…。」
少し考えてみますが、結論なんて出るわけないので、これについて考えるのはまた今度にします。
「お父さんもお母さんも元気にしてるかな…。」
風邪をひいてしまったからなのかはわかりませんが、今まで以上に家族の事が恋しいです…
曇っているのか星の一つも見えない夜空を見上げて私は、故郷に思いをはせるのでした…
「…丹…牡丹…牡丹!」
朝…ヴァーテルの声で目が覚めました。
どうやらあのままソファーで寝てしまったようです。
「あれ? もしかして私寝てた?」
「まったく…お前はどこまで俺を心配させるんだ…。」
ヴァーテルは完全に呆れていました。
「ごめん…。」
「まぁ歩き回れるほど元気になったならそれでいいかもな…昨日は大変だったからな…。」
具体的にどう大変だったのか聞こうとしましたが、なんだか聞いてはいけない気がしたので聞くのはやめることにします。
今度からは、ヴァーテルに迷惑をかけないためにも健康にはもっと気を付けて行きたいと思います。
読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




