第17話 ナデシコの市場は大きいです
足早に森を抜けた私とヴァーテルは、ナデシコの市場に向かっていました。
「まずはどこから行くの?」
私は、前を歩くヴァーテルに尋ねます。
「そうだな…旅の道具を売っている店も服を売ってる店も全部西部の西部の市場にあるからそっちに向かう」
「西部の商業地区ね…と言うと、昨日の宿場町を抜けてお城の方まで行くの?」
「いや、町に入ったらすぐに西へ向かう。その方が早いからな。」
安土城もどきの前を通過しない方が早いということは、市場は町の北西に位置していると言う事でしょうか?
「そうだ…ここは、あの港町と違ってとても大きな町だからくれぐれも迷子になるなよ…さすがに、見つけられない…。」
「私をなんだと思ってるのよ!」
「…えっと…大きな迷子。」
私だって学習能力ぐらいあります。と言うか、大きな迷子って、ほとんど大きな荷物と変わらないじゃないですか!
「大きな荷物で悪かったわね!」
「荷物とは言ってない…お前は大事な仲間だ…それに旅は、1人より2人の方がいいからな…。」
だったら紛らわしい言い方をしないでほしいものです…
「そんなことより、もうすぐ着くからな…。」
左右に並ぶ建物は徐々に大きくなっていきます。
やはりナデシコは、大きな町なのでそれに比例して市場も大きくなっているようです。
昨日住宅が密集している場所でも、かなりの人でしたが、ここではそれ以上の人が往来していました。
「魚! 魚だよ! 早朝に北海岸で魚だよ! おっそこの奥さん一尾どうだい?」
「そうねぇ…それじゃあこれもらっちゃおうかしら?」
「おう! これは220Gだ!」
「そこの兄ちゃん! これは、北の森で取れた薬草だよ! 安くしておくよ!」
市場のあちらこちらにたくさんの人がおり商人からおばさん、子供までいろんな人がいます。
道の両側にたくさんの店が並んでいて、その前に露天が並ぶ風景はまさに圧巻です。
「…すごい…。」
「あぁ…ナデシコは北部最大の都市だからな…その中でもこの西部市場は最大規模を誇る…まぁ市場規模だけで言うならナデシコの市場よりも上があるがな…俺も昔はよく買い物に来たもんだ…それと、このあたりを抜けた先に俺のなじみの店があるからそこに向かうぞ…。」
ヴァーテルは、人ごみの中に向かって歩き出します。
「ヴァーテルって昔この近くに住んでたの?」
「あぁ…俺は、ナデシコのすぐ南にある村の出身だ…そうは言っても今は、ナデシコから南に行く街道が通行止めだから行けないけどな…。」
ヴァーテルは、北部出身でしたか…
まぁ北部しか行っていないので北部と南部の違いは分かりかねますが…
右へ左へ往来している人々をかき分けるように進んでいるとヴァーテルが、突然横の路地に入りました。
私があわてて曲がると
「着いたぞ。」
そう言ってヴァーテルが、ある店の前で立ち止まりました。
人々が行きかう大通りから一歩路地に入っただけなのに先ほどまでの騒がしさがありません。
「さっさと入るぞ…。」
ヴァーテルが、入口の扉を開けて中に入ります。
私がヴァーテルについて店に入って行くと奥から初老の男性が出てきました。
「おう! ヴァーテルじゃねーか! ここ数年見かけなかったからどうかしたのかと思ったぜ!」
「少々旅に出てな…そうだそうだ…こっちは旅仲間の牡丹だ!」
「えっと…初めまして…牡丹と言います…。」
私は、男性の方を向いて頭を下げる。
「ほう…牡丹ちゃんはジパングの文化に精通しているのかい? まぁいい…俺は、ここで雑貨屋を営んでいるセコンデだ! よろしくな!」
セコンデは、私の方に歩み寄って右手を差し出しました。
「はい! こちらこそよろしくお願いします!」
私もセコンデの方に歩み寄って握手を交わしました。
そんな中、ヴァーテルが口を開きました。
「さっそくで悪いんだが、牡丹の分の旅の用具一式をそろえたいんだ…それと、このあたりのいい服屋を紹介してくれ」
「わかったわい…とりあえず道具は取って来るから待ってろ」
そう言い残してセコンデが暖簾をくぐって奥に入って行きます。
「座って待ってるぞ」
ヴァーテルは、店内に設置してある椅子に座ります。
「それじゃあ私も…。」
私もその横に座りました。
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