第15話 町はずれの宿に泊まるようです
ナデシコの中心部…さすが、北部最大と言われるだけあって城のすぐそばにある地区は、あの港町以上に人々の往来が激しく、少し気を抜くとすぐにヴァーテルとはぐれそうになります。
さらに町の中心部にあるお城の周辺は警備の兵がたくさんいて厳重に守られています。
「あのお城には、誰か住んでるの?」
「確か、国王に北部を任されている姫様がいるとか聞いたことあるな…かなりの実力がある魔女らしく時々お忍びで北部の町にいるとかなんとか…。」
なるほど…このお城には結構すごい人が住んでるんですね…
そんな事を考えながらお城の前を通過します…
大きな門の向こうにそびえる安土城もどきは天まで届くのではないかと錯覚するほど立派な天守閣を備え、広さについてもかなりの面積を誇っているように見えます。
「すごい…。」
私は思わず正面で立ち止まって上を見上げます。
「そんなところに立ち止まっていると邪魔だ…さっさと行くぞ…。」
ヴァーテルにうながされて私は歩き出しました。
「それで…どこの宿に泊まるの?」
「それなんだが、どうやらこの先に宿が集中している地区があるらしいからそこで宿を探す…。」
なるほど、どうやらこの町は地区割りがきっちりしているようです。
ちなみに今、歩いているところは左手側にお城がそびえたっていて、右手側に武家屋敷が並んでいます。
「まるで江戸時代にタイムスリップしたみたい…。」
「何の話だ?」
私は、率直な感想を言ったまでですが、ヴァーテルは意味が分かっていないようです。
「まぁいい…さっさと行くぞ…。」
ここまで来てわかりましたが、どうやらヴァーテルは用意周到な割には自分がわからないことに関してはあまり深く考えないようです…
私が、ナデシコの町並みに見とれているうちに宿場町に着きました。
大通りの両脇に大小いくつもの宿が立ち並んでいます。
「誰かにおすすめの宿を聞いてみるか…。」
ヴァーテルは誰かいないかあたりを見回し始めました。
「確かに口コミは重要よね…。」
私も誰かに声をかけようとしますが、なかなかうまくいきません。
「候補が絞れたぞ」
私が話を聞こうと声をかけようとしていた数十分の間にヴァーテルは、十数人に話を聞いてきたらしくその情報をもとに宿の候補を絞ったという状態です。
「よし! ここにしよう!」
悩むこと約1時間…ヴァーテルはようやく泊まる宿を決めたらしいです…
私はヴァーテルについて歩いて行ってるのですが、気のせいでしょうか? ナデシコの町から離れているような…
「あの…ヴァーテル、どこまで行くの?」
「あぁ…それなんだが、ナデシコのはずれの方にとてもいい宿があると聞いてな…町はずれなら魔法の練習にももってこいだからな…。」
なるほど…つまり、ヴァーテルは町はずれにある宿の中でいいところを探していたら時間がかかっていたわけですね…きっとそうだと思います…と言うか思いたいです…
ナデシコの町を出てから約30分…ナデシコの北にある高台の上…まさに崖っぷちと言える場所にその宿は建っていました…
「これは…話に聞いていたとはいえすごいな…。」
「ほんとにここが宿なんですか?」
崖のぎりぎりに建っている宿は小さな小屋ほどの大きさしかないようにしか見えません…
「こう見えて中は広いのかもしれない…言ってみる価値はある…。」
そう言ってヴァーテルは何のためらいもなく歩き始めました。
「ちょっと! ヴァーテル! 本気で行く気?」
とりあえず私は追いかけて行きます。
私が入って行くと中にはヴァーテルが立っていました。
「それで…中は?」
私が聞くとヴァーテルは足元にある梯子を指差して
「ここから入るらしい…先に行くぞ…。」
と言ってから下に下りて行きました。
「えっちょっと!」
私が急いで梯子を下りるとかなり広い空間がありました。
「ここって…。」
「どうやら地中に宿を造ったようだな…しかも、この立地だからしっかりと窓もある…。」
確かに壁には窓があって、その窓からは蒼い海が見えています。
「すごい…。」
すごすぎてこれ以外の言葉が思い浮かびませんでした…
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