第12話 ついに旅立ちです
私は、町を見下ろす位置にあるあの丘の頂上に座りました。
その時は、もうすでに夕日が町を赤色に染め始めていました。
「もうこんな時間なのね…。」
この世界には時計と言うものが存在しないようです…
太陽の高さを見て判断するとか…
私には、はっきり言って判断しかねますが、待ち合わせ等をするときは「申の刻に噴水の前で!」みたいな会話があるようです…この西洋建築に囲まれた街の中なのに…
何でも、これは、最近この国が交流を持ち始めたジパングなる国の文化らしく交流が盛んな国ではジパングの建築様式をまねた建物があったりジパング人地区があったりするらしいのですが、ここ町は、異国はおろか他の町との繋がりも薄いらしいので、子、丑、寅、辰、巳と言った時間の数え方が広まっているぐらいだそうです。
「まさか、百々までこっちに来ているとは…。」
あまりにも驚きました。
でも、百々がこちらにいると言う事を考えるとある仮説が生まれます。
「もしかしたら他の人もこの世界に来ている?」
そう考えるのはたやすいことでした。
もっと多くの人がこちらの世界に迷い込んでいるのではないか…そうなると原因はなんなのか…
「誰かがこちらの世界に連れてきている?」
なぜか、そんな結論にたどり着きました。
一人だけならともかく何人もとなると何者かが意図的にやっている可能性もあります…
「でも、そうなると誰が何の目的でこんなことを?」
夕日が沈んで徐々に町の家に明かりが灯っていきます。
「ってもうこんな時間? まぁ誰かがやったとは限らないしさっさと宿に戻ろうかな…。」
私は、立ち上がって宿へ向かって歩き出しました。
さすがにあの丘にいた時間が長すぎたのか町は少々暗いです。
そんな中、宿に戻るとヴァーテルが荷物をまとめてました。
「ごめんね…おそくなっちゃって…。」
「別に気にしていない…ただ、もう少し考えて行動してくれればな…。」
そう言い残すとヴァーテルは部屋に入って行きました。
次の日、自分の荷物を持った私は宿の入り口でヴァーテルが降りてくるのを待っていました。
「おはよう!」
階段を下りてきたヴァーテルに声をかけると
「あぁ…おはよう…。」
と言って外へ向かって歩いていきます。
「待ってよ!」
私は、ヴァーテルのすぐ後を追って宿を出て行きました。
早朝のせいか昨日の活気はまだありません。
「それで? どこに向かうの?」
「この町から東の方に歩いたところにある町へ向かう…そこには大きな市場があるはずだから旅に必要なものをいろいろと買っておかないとな…。」
ヴァーテルは、私に気を使っているのか最初よりかは幾分かゆっくり歩いてくれているようです。
歩いているうちに町を見下ろす位置にあるあの丘に来ていました。
「ここって…。」
「この丘は、北海岸を東西に抜けるラーウス街道の中間点にあるんだ…。」
このどこにでもありそうな丘は随分と重要な場所だったようです。
私は、町の方を振り返りました。
日が昇ってきたせいなのか、町には人があふれています。
「行くぞ…じゃないと夕方までに次の町につかない…。」
ヴァーテルはもうすでに歩き出していました。
「ちょっと! ヴァーテル!」
私は急いでヴァーテルを追いかけます。
そして、丘の上に行ったときに振り返って
「さよなら百々…またどこかで…。」
風に百々へのメッセージを託して私は、ヴァーテルの後を追って歩き始めました。
なんで、昨日会ったときにちゃんと別れを言わなかったかって?
それは、百々が真正面からそう言う事を言われるのが嫌いだからです…
彼女が言うには世界は思ったほど広くないわけでどうせすぐに会えるからいちいち別れの挨拶はいらないそうです…
私は旅人、百々は行商。
お互い旅をしているので、また、どこかで会える気すらします。
百々の前ではいつもの自分に戻ってしまいましたが、私は、この世界に来てから自分を変えようと努力してきました。でも、そんな私でも、親友である彼女がこの世界のどこに行っても変わらずに過ごしていけるよう願わずにはいられないのです…
複雑な思いを胸に私は東に旅立ちました…
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