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何言ってるのよっ、私の方が伯爵様の真実の愛(笑)のために誘拐された被害者だっつーの!!
怒りの形相のヘンドリックにいきなり盗人呼ばわりされてイラッとする。ユウにおろしてもらうとメイカはヘンドリックに負けじとお腹に力を込めてぎろりと睨み返した。
「それはこちらの言葉です!! 一年間実家と私の生活を支援してもらったことには感謝しますがっ!
約束通りこの別邸で大人しく過ごしていたのにっ。そこの愛する奥様の話し相手になれといきなり屋敷に連れ戻されて、アディンゼル家の使用人たちに伯爵様と奥様の愛の邪魔だとねちねちいびられたあげく、今度は奥様との結婚に邪魔になったからとあなたに忠実な使用人たちに屋敷の中でいきなり誘拐されてこんなところに監禁されてっ! 私、助けに来てくれたこの親切な方々に助けてもらえるまでここで殺されるのだととっっっても怖い思いをしましたわ!!
何の興味もない伯爵様の結婚のために命までとられるなんてまっぴらごめんですっ! 今すぐ離婚してください!!」
ライターとして鍛え上げた語彙力を活かして離婚を宣言すると、ユウたちからは小さく拍手され、ヘンドリックは戸惑いながらも言い返す。
「誘拐? 殺されるだと? 何を白を切っているんだ。君は私たちが忙しくしている隙をついてそこの仲間たちを引き入れて私の執務室の金庫からいん……我が家の至宝を盗み出し、ここに逃げこんだのだろう!! おかげでアイリのお披露目は台無しだっ!! 腹立たしいが時間がもったいないっ。アレを返せば騎士団に罪が軽くなるように口添えしてやろうっ、さあさっさと出すんだっ」
「そちらこそいい加減に変な言いがかりはやめてください!! 屋敷にいる間は奥様の味方のメイドたちにずっと見張られていたし、そもそも伯爵様の部下たちがいつもいる執務室に疎まれている私が入れるわけないでしょうがっ!! どうせ奥様を応援する使用人たちが誘拐するついでに盗んだんでしょう!! だいたいさっきからアレソレコレって何のことよっ!! はっきり言いなさいよ!」
ユウたちまで疑いをかけられてカッとなって言い返すとヘンドリックはぐっと言葉につまった。と、彼の背中に隠れるように立っていたアイリーンが出てきて、周りの同情を惹くような儚げな声で答える。
「奥様。この別邸で自由気ままに毎日贅沢に過ごしている奥様が、その快適な環境を奪おうとしている私のことを目障りだと思う気持ちはわかります。でも、私はこの一年間、私とヘンリーを奥様が手助けしてくれたおかげでヘンリーと無事に結婚できることに心から感謝しています。
ですから、奥様が泣く泣く離婚される時には最大限の支援をお約束いたしますわ。もちろん、奥様が望むならばその後の今とはかけ離れたつましい生活の支援もします。
ですから、どうかヘンリーから奪い取った大事なモノをお返しください。そしてどうか私たちの結婚という長年の夢を叶えさせてください」
「アイリ……っ。君の晴れの場をわざと台無しにしたこんな性悪な女に情けをかけるなんて何て優しいんだっ。……くっ、仕方ない。私の天使に免じてアレを返せばこの件は不問にしてやろう。さあ、早く出せ!」
「うっわっ、とんだお粗末な茶番ね。要するに邪魔なメイさんを盗人に仕立て上げて排除して先代伯爵に2人の真実の愛(笑)を認めさせたいのね。ついでに自分たちが盗んだ大事なアレとやらを取り返して伯爵と先代伯爵夫妻に自作自演の恩を売りつけるってところかしら。うわあ、良い根性してるわ」
「そうでしょうね。この一年間アディンゼル伯爵の立ち回りが下手すぎて、あの女性との結婚の話も進んでいないようですから。立場の危うい女性の方がしびれを切らして強硬手段におよんだというところでしょうか。まあ、こうして堂々と嘘を吐く肝の太さはあの間の抜けた伯爵にはお似合いですが」
目を潤ませて切々と訴えるアイリーンにヘンドリックと伯爵家の使用人たちは感激するも、メイカはもっともらしい言葉を並べ立てて平然と嘘をつくアイリーンにドン引きした。カレンとユウにいたっては辛辣なことを言う。
おそらく2人の考えは当たっているのだろう。しかし、相手は貴族でこちらは平民たち(?)と元男爵令嬢で、一応はここは相手の敷地内。状況的にはこちらが圧倒的に不利だ。
何とか濡れ衣を晴らそうと「だから、アレって何なんですか!?」と問い詰めようとすると「メイカさん、ここは僕に任せてください」とユウが前に出る。




