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地図を見ながら辿りついた真っ白な石造りの二階建ての建物にメイカは目を丸くした。
「あれ、ここって前にルリと一緒に来たカフェじゃない。住所はここの二階になっているけれど……」
大通りに面した一階は前にたい焼きを食べた日本風カフェだった。裏にまわったがカフェの倉庫らしきものがあるだけで、二階に上がる外階段らしきものはない。建物の周りをぐるぐる回っていると女性が近づいて来た。
「こんにちは! もしかして、エンに御用の方ですか?」
「はい、そうです。13時に面会のお約束をしているメイカと申します」
「あ、カレンさんの紹介の方ですね。ようこそいらっしゃいませ! 入口がわかりづらくてごめんなさいね~。ささっ、こちらですっ、どうぞ~」
愛想の良い彼女について裏の小さな門をくぐる。倉庫に隠れるようにして階段があり、上りきったところにしゃれた木製のドアがあった。上の半円形のガラスからは光が漏れている。案内人の女性が「はい、どうぞ~」と開けるとオフィスのように書類が積んである机が並んだ空間が広がっていた。
女性が「社長~、お客様ですよ~」とのんびりした声で告げると、一番奥の机に座っていた丸いメガネをかけた青年がすっと立ち上がった。
「初めまして、メイカさんですね。私はユウと申します。本日はよろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします」
ユウは20代前半ぐらいだろうか。シンプルな身なりをしているがどことなく貴族のような気品がある。それに思っていたよりもずっと若い方で驚く。
つい驚きが顔に出てしまったが、彼は慣れているのか穏やかな笑みをたたえてソファをすすめる。
「本日はようこそ我がエン社にお越しくださいました。カレンからここのことを聞いていますか?」
「はい、ほんの少しだけですが。発刊している雑誌に読者の方からの体験談を載せはじめたら、とても好評で人手を募集していると聞いています」
「ええ、ありがたいことにそうです。初めは身内やその知り合いに頼んで書いてもらっていたのですが、口コミで話が広がったようで。たくさんの応募がきていましてね。
メイカさんには送られてきた書類の整理と資料の収集、お客様の対応やお使いなどの他のスタッフの手伝いをお願いしたいのですが。どうでしょう?」
「精いっぱいがんばりますのでっ!! ぜひよろしくお願いしますっ!!」
つい食い気味に返事をするとユウはメガネの奥の目を笑みの形にする。笑うと人懐っこさが出てつられて微笑む。
「ありがとうございます。ところで、メイカさんは執筆の方にも興味があると聞きましたが。今日は何かお持ちですか?」
「は、はい。こちらです……」
おそるおそる差し出すとユウは丁寧に受け取ってさっと目を通す。ドキドキしながら様子を窺っているとにこりと笑う。
「これはとても面白い題材ですね。よければすべて買い取らせていただけないでしょうか?」
「わあ、本当ですかっ! ありがとうございます、ぜひよろしくお願いしますっ!」
「こちらこそよろしくお願いします。では、希望の出社日や時間ですが……」
こまごました話し合いの後、さっそく明後日から出社することに決まった。人気のない道に入ると、メイカは喜びを爆発させた。
「いよっしゃあああああああ!! 仕事とボーナスゲットだぜーっ!! カレンさんっありがとうございます!!」
太っ腹なユウは原稿を良い値段で買い取ってくれたうえに、また良い原稿を持ってきてくれれば追加のボーナスも出すと言ってくれた。自分の作った物が認められた上に大金も入るなんて、気分は最高だ。
――初めて書いた物が採用されるなんて! もしかして、私ってばすっごい才能があるのかも!?
浮かれまくったメイカはギルドに寄ってカレンにお礼を言うと、家に帰ってせっせと原稿を書きはじめた。




