第二話、少女、ご飯を食べる。
『七罪の魔人』それは百年に一度現れる世界を脅かす存在。
その魔人には例外なく体のどこかに『罪人の証』と呼ばれる痣が現れるとされている。
名もなき彼女の小さな左手にはその痣が現れていた。
少なくとも今は食べることに夢中で当の本人も気付いていない。
人が近くにいる気配がしたので、食べるのをやめてとれかかった腕を人の山の中に隠す。
『ガバッ』
いきなり周りが明るくなる
「うわっなんだこりゃ。お前生きてんのか?」
「おじさんだあれ?」
沈黙が続く。しばらく考えた後、おもむろに口を開く。
「ミリカちゃーん!生きてる女の子がいる。」
「そんなことありますか?1週間馬車で移動したんですよ?」
「たくましい生命力だよ。ほんとに。」
「お前さんの教会で引き取ってやれよ。」
「そうですねこれも神のお導きです。」
黙って聞いていると、引き取ってもらえることが分かった。
「おっと聞かれたことに答えないとだな。俺の名前はビンスだ。冒険者をやってる。お嬢ちゃん名前は?」
「ない。捨てられたから。」
「すまない。まあとりあえず飯でもどうだ?」
「欲しい。」
「ミリカちゃーん、配置より先にご飯にしようぜ!」
そう叫ぶと、返事をしながらこっちに走ってくる修道服の女。
「紹介するぜ。ルーン教会のミリカちゃんだ。そろそろ俺の護衛がいらなくなるくらい強い女の人だ。
この人がいる教会にお前を連れて行く。それでいいか?」
すぐにでも太った金色と警備兵を私とおんなじ目にあわせてやりたい。
でも、このままついて行かなければ、また死にかけるかもしれない。
「だいじょうぶ。」
そう答えるしかなかった。
この人たちについて行くうちに気付いたが、ビンス含め冒険者は四人、修道士はミリカ一人で馬車二つ分の死体を運んでいた。
「あの、王都の孤児用の修道服があるので着替えましょう。」
ミリカにそう言われ、冒険者たちと別れた。
「着替え方はわかりますよね?ご飯の準備をしてくるので。着替えと血の拭き取りが終りましたら私に声をかけてください。」
濡れたタオルと、修道服、左手の手袋を手渡され、木の裏で着替える。
タオルで体を拭いているときに気付いた。
「なに?この手の痣みたいなの。」
フォークとナイフがクロスした痣だった。
あまり体が大きくないので少し修道服が大きい。手袋はぴったりだった。それに変な痣も見せなくていいし、ちょうど良かった。
着替え終ったのでミリカを呼び、冒険者のところまで行く。
しばらくして運ばれてきたご飯を見ながら、
「何で死体なんか運んでいるの?」と聞いてみた。
「魔獣を王都に入れないためだ。死んだ奴らを集める場所をいろいろな場所に作り魔獣に狩り場ということを教える。死体の位置を変えてゆき王都から魔獣を遠ざける。そうすることでいろいろな人を守る。そういうことだ。それが社会の仕組みってやつだ。」
「そっか。」
仕組みなら仕方ないか。
話すことが特にないため黙ってスープを飲む。
「ミリカちゃんなんでこいつ片手だけ手袋はめてんだ?」
「それはですね。宗教の教えに『子よ、罪を犯してしまったなら左手を切り出しなさい。不便を知り愚かさを学びなさい。』というのがあるんです。子供の修道服だけ左手の手袋がセットなんです。」
「そうなんだ。宗教って難しいな。」
「そうですね。」
私抜きで会話している。そんなことより気になることがあった。
「味がしない。美味しくない。」
調理されたご飯は久しぶり、約一年ぶりなのにだ。
「ご飯どうです。美味しいでしょう?」
そうミリカが聞いてきた。
「美味しい。久しぶりにご飯食べたから。」
そう答えたが、本当は砂を食べているみたいだった。
「ご飯が終ったら色々聞きたいことがあるんだけどいい?」
「いいですよ。何でも聞いてくださいね。」
太った金色の言っていたことを尋ねるのだった。




