第一話、少女、暴食の魔女。
よくよく考えるとおかしな話だ。
自分のものじゃないものに価値をつけて売るなんて、本当によく分からない。
私は盗んだパンをちびっ子にあげたこともある。暮らせない人に手を貸すのも普通のことだ。
なのに、卑しいだとか、価値がないとか、マイナスだとか、価値をつけてくる奴らの方がよっぽど価値がない。腹が立つ。
何も出来ないまま二日たった。
「よぉ、孤児。生きてんのか?なんかしゃべれよ。」
私は空腹でそれどころではなかった。話す元気なんてある訳がない。
「いたいっ!やめて!うぐっ」
私はいきなり来た警備兵の男に踏まれている。
急に降りたかと思ったら剣で縄を切り始めた。
「なんで?」
「なんでってこういうことだよっ」
私は蹴られて壁にぶつかった。
「なんで?こんなことするの?」
「死んでもいいんだよ。おまえみたいな奴は。価値がない俺の付属品がよ。不敬罪でまとめて処刑されたりでもしたらどうするつもりだったんだ?おいっ!」
この前の太った金色に言った言葉に怒っているのか?
「どうして価値を決めるの?商売人だから?」
「生きるも死ぬも戦争だからだ。お前らが何も食べられずに死ぬように俺らも仕事しながらお前の言う価値って奴を作っている。その義務も果たさず盗みで生きてきたお前に卑しい以外の言葉などないだろうが。」
「まあ、ほらパンでもやるよ。食えよ死なれたら目覚めが悪い。」
そういって目の前に懐からパンを出した。
「ありがとう。」
警戒しながらそのパンをとろうとする。
「調子に乗るなよゴミが。貴様に飯などやる価値もない。また盗みを働かれても困る。」
そう言いながら私を蹴る。殴る。蹴る。殴る。蹴る。殴る。
気づくと私は傷だらけで倒れていた。
傷の痛み、空腹による飢餓感が急に襲ってくる。
涙が出てくる。鳴き声は上げないエネルギーの無駄。そう思っても鳴き声を上げずにはいられない。
私は生きるために頑張った。それなのに助けられるのに助けないそんな奴らの住む国なんて価値なんてない。
生きるも死ぬも戦争?ふざけるなよ。私を見るだけ見て助けない奴らもだ。
全員同じ目に遭えばいい。死にたいと思うような空腹に襲われればいい。そんなことになったことがないから人に価値などつけられる。私がそんなことにさせてやりたい。
何であいつだけ力が認められて。パンを食べてる。私と一緒にいたのに勇者の力はないかもしれないけど
一緒に光を浴びて、太った金色のところに行った、もしくはあいつが連れて行った?記憶がないから分からない。
何で私だけ?どうして?
怒りと疑問、それすら考えられないほどお腹が減っている。
ふと少女が手にしたのは人間の手。
本人は気付いていないが今、死体処理の馬車に乗って運ばれている。町に魔獣が来ないようにするための餌に死体を使うからだ。
「人肉?食べれる?」
食べれる。食べれない。そんな話じゃない。
少女はおもむろに二の腕と肩の中間辺りをかみ切る。
今の彼女を動かしているのは単なる飢餓感だけじゃない、不平等に対する怒り、差が生じる疑問。
生きて、生きて、生き抜いて、私に価値をつける奴らなんて死ぬような思いさせてやる。
人肉を食べる、神が作った世界の規則に反している、この世界における禁忌とされている行為。
大罪である。
そんな彼女を突き動かしている感情。
それらが混ざり合う。
今ここに世界を滅ぼす<悪食の魔女>が誕生した。




