プロローグ
父が戦争に行ってから妊娠が発覚、そのことを報告されることなく自宅ではなく天に帰った父、母は父が死んだ瞬間に育てる気がなくなったのか名前もつけて貰っていない名無しの少女。
それが私だ。
母は新しくできた男と毎日楽しく暮らしている。
その男は母が妊娠したのを皮切りに路地に捨てられた。
その男は捨てる前に言った。
「俺は商売人だ。生かすも捨てるも金がかかるだろ?値段をつけるのが俺の仕事。お前は名前も教育も受けてねえ四年生きてんのにだ。文字すら書けないそんな奴、マイナスだ、マイナス、捨てるべきだ。」
「しんどい。つらい。死にたくない」
死ぬ前に思い出すのが大嫌いなあいつらなんだ。
一年本当に生きたと思う。冬が終る少し前に捨てられて、泥水をすするのは上等、ゴミ箱あさり、盗み全部やった。死にたくないから。
「本当によくやったよ私は。」
荷物が運び込まれそうなところを盗みに行ったとき、兵士にばれ、警棒でボコボコにされた。蹴られた。
その傷のせいで熱が出て動けない。
人通りの良い場所に這いずっていく。
「だれか助けて。」
泣きながら、『バンバン』と気付いてもらえるように地面をたたく。
ちらっとこっちを見るだけ。誰も手を貸さない。
どうして?なんで?助けない?
そうか助けたらマイナスなんだ。不利になる。
そう言う人間なんだろう。私も含めて全員。
目の前に来た警備兵の足下が光る。
「なんだ?これっ」
とっさに私はその男の足下をつかむ。そこで意識を手放した。
「い。おい!おい!目を開けろ。不敬じゃぞ?」
全身鎧の人が私の頭を小突く。そこで私は目を覚ました。
「あの方は偉大なるお方だ。その前で寝ているとはなんたる不敬だ。」
どういうことだ?なんだこれ。なぜあんなにぶくぶく太り金色に光った男が威張っている?
隣にいた兵士はポーズをとっていた。私もとりあえず真似をしてみる。
「顔を上げよ。」
『ちっ』
小さく隣の警備兵、それから奥の全身鎧から聞こえた。
「何か申してみよ。」
「ここはどこでしょうか?」
そう言ったのは横の警備兵。
「ここはアリン公国じゃ。貴様を呼んだのは、そこの魔術師じゃ。」
ぶくぶく太り金色に光った男が言った。
指を指された魔術師とやらが礼をした。
「なぜ私は呼ばれたのでしょうか?」
「それはだな。この世界に厄災を与えるという七罪の魔人のうち暴食、色欲、怠惰以外の魔女現れてしまったのじゃよ。占いでは我が国は魔王か魔人に滅ぼされると出ており、それ故勇者として召喚させて貰った。そこの臭い娘まで着いてきたのは想定外じゃった。」
「召喚されれば勇者に近しい力が得られるらしいが?体に変化はあるか?」
「私は少し体が軽く感じます。五感も成長している気がします。」
「よい。素晴らしい褒めてやるぞ魔術師。」
何が起こっているのか分からない。
でもよく考えたら熱がもう出ていない。体も少し軽い。お腹だけは空いているが。
「私も体に変化した。変わった気がする。」
「黙れ!この戦争孤児が!貴様にしゃべる価値もない。あのときすぐ処理していれば私一人での召喚だったのだぞ!卑しい、本当に貴様ら孤児は卑しい。」
『ボコッ』
なぜか警備兵の人に怒鳴られ蹴られた。周りの人もニヤニヤしている。
私はここでもマイナスなのだろうか。本当に自分がいやになるな。
あいつの最後の言葉で気になることがあるから聞いておこう。
「私みたいなのはいっぱいいるんだ。何でお前はそんなに太っているの?何でそんなきれいな肌、服、金になりそうな宝石ばっかり身につけているの?そのお金で私たちは助けられないの?」
そう私が聞くと、
「何を言っておるのだ貴様!死にたいのか?貴様らは本当に生きてるだけで不愉快じゃ。助ける価値などあるわけがないだろう。おい、そこのものよこいつを縄でくくったまま路地へ捨ててこい。この娘にかける時間がもったいないわ。勝手に餓死でもさせておけ!」
また価値とか、こいつも商売人だ。人に価値をつけてる。大嫌い。嫌いだ本当に。
そこからはあっという間だった。縄にくくられどうやら路地に逆戻りだ。それに腹も減っている。
二日頑張って耐えた。
そうしたらあいつが来た。




