光速の壁
光速を越えるのは不可能ではないが、実現は限りなく難しい。
それは宇宙空間自体が光速という定数で縛られているからである。
光。
その中には、いったい何が隠されているのであろう?
星もない夜、森の中に揺らめく炎があるなら、遠く離れた闇の中からも見ることができる。
でも、揺らめく炎の内にいるものには、辺りに広がる闇の中は見えない。
ぼくらの周囲は光でいっぱいである。
淡い光、閃光、高層ビルに灯る蛍光灯。
更には、空間を飛び交う無数の電磁波。
光は、数多くの情報を伝達してくれる確かなものであり、闇を照らしてくれるありがたいものでもある。
宇宙空間をも越えて、情報やエネルギーを伝達してくれる。
それは、デジタル的な情報であることもあれば、可視光線のように人々の心情に直接影響を与えることもある。
でも、その正体は、掴みどころがない。
観測者が動いていても止まっていても光速は変わらない。
止まることもなく、速くも遅くもならない。
波のように拡散する。
波のように重なり合う。
粒子のように、最小単位がある。
質量がない。
何もない宇宙空間でも、エネルギーを伝達できる。
とても不思議なものであるが、その存在は、誰にでも感知できる。
そして、人類を含む生命体にとって、光は不可欠なものでもある。
SFの世界では、タイムリープしたり、ワープ走行をしたりと、光速の壁など突き破ってしまった話も多々あるが、光速を越えるのは、相当に難しそうである。
また、越えた瞬間にどうなるのかもわからない。
まあ、全ては想像の領域ということだから、肯定も否定もしないが、少なくとも、ロケットなどの加速力によって、光速を打ち破るのは無理そうに思える。
先の宇宙船を思い出してほしい。
地球を出発した宇宙船が、例えば、光速の99%まで加速したとする。かなり、がんばった結果である。
しかし、宇宙船の乗組員が進行方向に進む光を観測すると、やはり、光速は変わっていない。まるで人類をあざ笑うかの如く、30万km/秒で追い抜いていくのだ。
だから、それに追いつくためには、更に加速、というか、振出しに戻ってしまうのだ。自分達は、確かに、地球に対しては凄まじい速度で飛翔している。しかし、それでも、まるで、自分達が止まっているかの如く、光は追い抜いていく。
即ち、この宇宙の中で、どこの時空間に移動したとしても、距離と時間の関係は変わらないということを意味している。だから、その限界比率を決定している定数である光速も崩れることはない。
言い方を変えれば、時間と距離(空間)は、必ずセットととして存在し、時間経過に対して存在し得る空間距離には限界がある。その限界点を決めているのが光速である。
端的に言えば、光速が普遍であるなら、それに追いつくのは困難なのだ。少なくとも、単純に速度を上げることでは、追いつけるとは思えない。
光速を超えるためには、光速普遍の定理を覆す(成り立たなくする)必要がある。そのためのアプローチは、速度を上げるということではない。
物理学的にも、特異点(物理法則が成立たない点)という存在は予測されているので、不可能とは言わないが、今のところ、確実な実現方法は存在しない。
今、知り得る範囲で、光速普遍の定理が成り立たない可能性があるのは、ブラックホールの中か、あるいは核反応を起こす粒子くらいだろうか?
他にもあるかもしれないが、それ以外は、思いつかない。
光速の壁は厚い。
たぶん、常識的なことを考えていても越えられないだろう。
単純な速度ではないのだ。
追記すると、
加速のために費やされたエネルギーの内、速度に変換できなかった分は、質量(質量エネルギー)に変換されることになっている。
費やしたエネルギーの1/900億分が質量に相当するエネルギーになる。
E=MC² という有名な式は、それを記述している。
(エネルギー)=(質量)×(光速)×(光速)
Eはエネルギー
Mは質量
Cは光速
この式は別な意味もあり、失われた質量がエネルギーになるということも表している。
E=M×900億
失われた質量の900億倍のエネルギーが得られる。
質量の消滅は莫大なエネルギーが生みだすことになり、これを利用したのが原子力発電とか、核融合、原子爆弾、水素爆弾などというものである。
たぶん、この逆もできるはずである。
太陽も核融合により熱や光を発している。
少なくとも、灯油を燃やすような化学反応では、100億年もの間、燃え続けてはいられない。要するに、太陽系のようなものを生成しようとするなら、核融合は必須のアイテムである。
神話によれば、太陽に手を伸ばしたものは、すべからく、その身を焼かれてしまう。古代に書かれた神話ではあるが、人類に対する警告とも受け止められる。しかも、ひとつの神話ではなく複数の神話に似たようなことや、そのように解釈可能な記述があるからおもしろい。
それでも、手を伸ばすか、否か?
「・・・・。」
ある鬼才が残してくれた方程式。
E=MC²。
まるで、闇の中にポツリと浮かぶような手がかりでもあり、全てを終わらせてしまうキーワードにもなりそうである。
謎を秘め、何かを予言しているような意味深い方程式である。




