太陽がくれた安寧
重力と速度がバランスすることにより、秩序ある太陽系が成立っている。
その中で地球は特等席を得ていると言って良いだろう。
夕暮れの丘に座り、沈み行く夕日を見つめる。
ぼくらは、明日の朝、再び日が昇ることを知っている。
そして、太陽は、それを裏切ることはない。
天空の中で、一番目立つ星と言えば、間違えなく太陽である。
青空の先。
更に、上へ上へと登れば、そこは宇宙空間である。
中心には燦然と輝く太陽。
このように、系の中心を成す星を恒星という。
宇宙には、太陽のような恒星だけでも、もの凄い数があり、我が銀河系だけでも千億以上あると言われている。
肉眼で見える星の数は、空気が澄んだ場所でも2000個程度であるが、実際には、そんなものではないということだ。
そんな多くの恒星の中のひとつが太陽である。
ぼくらは間違えなく、太陽が支配する空間にいる。
明日も、明後日も、太陽は裏切ることはなく、この大地を照らし続けてくれる。
この暖かさも、安寧も、太陽がくれたものである。
実際の宇宙空間は暗く冷たい。
輝く太陽がなければ、そこは凍てつく暗黒の世界である。
太陽から貰う熱量と地球が宇宙に放出する熱量が釣り合うことで、地球の環境は決定している。
太陽の周りを回っている星達は惑星と言われ、地球も、その一つである。
太陽に近いところから、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星。この8つの星が、太陽系の惑星である。
海王星の外側には、準惑星や小惑星が周回する領域がある。ここまでが太陽系と考えると、直径にして約150億km(光で約13時間)である。
これに対して、お隣の恒星となると、4.24光年先となる。(太陽系の直径の2800倍以上)
その間は、ほとんど何もない宇宙空間である。
暗く冷たい空間は広大であり、お隣さんは、かなり遠い。
例えるなら、太陽系は、太平洋の真ん中にぽつりとある小さな島のようなイメージだ。
支配者である太陽がなければ成り立たない、小さな王国だろうか。
高台に立ち、地球の大地を眺めてみれば、
大地を形成する土、そこに立つ多くの樹木、コンクリートの建物が見える。
大地を削り、川は流れ、その下には、岩盤があるのであろう。
上を見上げれば、空高くまで空気の層は続き、上空には白い水蒸気も見える。
この地球を形成している物質だけでも膨大な量である。
太陽は、更に、でかい星である。
体積比率で、地球の約100万倍、質量で約40万倍という大きさだ。
太陽系にある物質の大半を占める正に王たる存在である。
宇宙とは、本当に凄いものである。
これだけの物質がどうやって集まってきたのだろう?
4.24光年先まで、ほとんど何もない空間は続いている。
その隣の恒星だって、同じように離れているのだ。
その広大さは想像するのも困難なほどに広い。
御存じの通り、太陽は凄まじい熱を発する天体である。
これは、太陽の莫大な質量により、内部が圧縮され、その圧力と熱により、核融合が起こっているからである。
天然の原子力熱源と考えて良いだろう。
また、熱源であると同時に、水素からヘリウムなどを生成する元素工場としての役割もある。
太陽からは、光だけではなく、有害な放射線も地球に向かって飛んできている。もし、もっと地球が太陽に近かったら、降り注ぐ熱もさることながら、放射線などの影響も深刻化しそうである。
温室効果が大きい(熱放出しにくい)影響もあるが、地球の内側を回る金星は灼熱地獄(最高気温は約460℃)である。
気温だけを見ても、とても、人が住めるような環境ではない。少なくとも、地表には生物は存在しないだろう。
太陽の近くを小さな水星が周回し、その外側を金星、地球の順番で回っている。金星と地球は同じくらいの大きさで、金星は地球から最も近い惑星である。
その外側を周回するのが、第四惑星の火星である。体積は地球の1/7程度と小さいが、環境的には地球に一番近い惑星かもしれない。
そうは言っても、平均気温は-50℃~-60℃と、地球の極点より低く、昼夜の気温差も100℃以上に達するらしい。しかも、大気は地球の1/100以下で、酸素はほとんどない。
おまけに、地表は水もない砂漠のような地なので、人が住もうとするなら、かなり過酷な環境である。
この火星までの4つの惑星が岩石型惑星と言われるもので、核だけでなく地表までが岩石のような固体でできている惑星達である。
たぶん、生命体が存在するためには、岩石型の星であることが最低条件だろう。踏みしめる大地や海水を支える岩盤がなければ、なかなか難しいと思われる。
この火星の外側を周回するのが、太陽系最大の惑星である木星だ。
太陽から地球までの距離を1とすると、火星は約1.5倍、木星の軌道は約5倍と、火星よりもかなり離れて周回している。
ガス型の惑星であり、表面は岩石ではなく水素とヘリウムが凍り付いたようなところだ。体積は地球の1400倍に達する。表層では、地上では考えられないような風が吹き、嵐は収まることもなくも延々と続いているようだ。重力も強く、大気も濃いので、その風の凄まじさは想像を絶するものである。
居住どころか、この星に着陸するのも、かなりの困難を極めそうである。
その外側を土星が周回し、更に外側を天王星、海王星というガス型の惑星が周回している。
ガス型惑星はいずれも大きく、最も小さい海王星でも、体積比率で地球の58倍の大きさである。
最も外側を周回する海王星から太陽までの距離は、地球と太陽の30倍もの距離がある。
太陽系の外に出れば、そこは果てしない程に広がる冷たく暗い宇宙空間である。微かなる宇宙の塵だけが存在する無秩序な空間が延々と続いているわけである。
今の宇宙船の速度では、何万年もかかってしまう距離だろう。
太陽の光、太陽の熱、太陽の重力、それらが届かなくなった世界は限りなく無に近い空間となる。
遥か先には、たくさんの輝く恒星が見えるだろうが、音もなければ熱もない世界がずっと広がっているだけである。
ぼくらの住む地球は、ゆっくりと太陽の周りを周回している。
一年かかけて、一周するのだから、ゆっくりと表現したのだが、実際の速度はかなり速く、30km/秒で、時速に直せば10万km以上というハイスピードである。
この速度で動いていれば、太陽の重力がなければ、当然、遥か彼方に飛んで行ってしまう。そうなれば、延々と暗黒の宇宙空間を彷徨することになり、間違えなく生命は死に絶えるだろう。
地球だけではなく、太陽系の惑星はみんな太陽の重力と釣り合うことで、ほぼ変わらぬ軌道を周回し続けている。
循環と継続を約束された安定した世界である。
逆に、動いていなければ、惑星は太陽に落下してしまう。
燃え盛る火の海に落ちて、太陽の一部と化すしかない。
速度、それは重力と並んで重要なものなのだ。
全てが停止してしまったなら、時間の意味もないだろう。
速度とは、活動そのものでもあり、その存在を具現化するものでもある。
惑星は動いている。
だからこそ、変化があり、進歩がある。
ただ、宇宙空間に浮いているわけではないのだ。
ぼくらとて、活動することで、その存在を示している。そこに関しては、単なる物質であっても、生命体であっても同じなのかもしれない。
重力による集約が星を作り上げる。
限りなく無に近い空間の塵を集め、巨大な恒星すらも生成するのだ。
そして、速度と重力がバランスした物質だけが恒星に吸収されずに惑星を生成する。
ぼくらの地球も、そうやって生成されたものだ。
この速度と重力のバランスしなければ、太陽系のようなものができることはない。
速度と重力は、アクセルとブレーキのようなものだ。
アクセルを踏みっぱなしであるなら、暴走してしまう。
ブレーキだけでは進まない。
双方がうまくバランスすることにより、制御可能な動きとなり、安定した状態となる。
その結果として出現したのが、太陽系なのだ。
現在、太陽系は秩序を維持している。更には、中心に輝く太陽が、暗黒の空間を光で照らし、暖かな世界を作り上げている。
それは永遠に続くものではないが、すぐに壊れるものでもない。
そんな安定した太陽系の中で、地球は、火星のように冷たくもなく、金星のように熱くもなく、ほどよい温度に保たれている。
これだけ、炭素系の生物に適した環境が実現できたことは、非常に確率が低いと推察できる。
地球の軌道や生成物質の割合が、ほんの少し違っただけでも、世間で騒がれる異常気象なんてものとは桁違いの環境変化が生じるだろう。
とりあえず、ぼくらは、この循環とバランスにより保たれている環境に感謝すべきだと思う。
宇宙空間を荒野に例えるなら、太陽系は至極のオアシスである。
そして、地球がある場所は特等席なのだ。
話を纏めてみると、
物質というものは、質量を持ち、質量は重力を生み出す。
重力は物質を集約させて、巨大な恒星を作り上げる。
そして、物質が動くこと、即ち、速度とバランスすることにより、無に近い空間に、安寧なる世界が生じる。
それが太陽系である。
宇宙。
それは、謎に満ちたものである。
ぼくらの手が届くのは、ほんの一部でしかない。
それでも、ぼくらは一歩一歩未知を解明していくことができる。
どこまで行っても、終わりには到達できないだろうが、きっと、それで良いのだ。
太陽系。
それは、混沌なる宇宙の中で、何十億年もの時をかけて構築された重力と速度がバランスした安寧なる世界である。
ぼくらは、その恩恵により生かされている。
この絶妙なるバランスが、ぼくらを生み出してくれたのだ。




