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夢遥か~物理学など理解できないが、宇宙がどんなものなのかくらいは知っておきたい  作者: 鈴木樹蘭


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重力がなければ、バラバラ

重力とは、宇宙を創生する重要な役割を担っている。力であるとするならば、この力というのは宇宙空間をどのように伝わるのであろうか?

 林檎が木から落ちることからヒントを得て、ニュートンさんは万有引力の法則を作り上げた。

 きっと、ハラハラと散る桜の花びらでは、ヒントにはならなかったのであろう。


挿絵(By みてみん)


 古典物理学。

 ニュートンさんが編み出した運動法則は、実に整然としており、わかりやすい。しかも、現在においても、十分に通用できる程度の誤差しかない。


 300年以上の時を経ても、地上レベルの運動を記述するには、ほぼ事足りる。実に優れものである。


 さて、この章では重力について語ってみたい。


 立ち上がろうとするなら、足に力を入れる必要がある。

 鉄棒に掴まり腕の力だけで体を引き上げようとするなら、かなりの力がいるだろう。

 これは、重力があるからに他ならない。

 簡単に言えば、地球の中心に向かって引っ張られているのだ。


 物理学の世界では、重力は弱い力と言われている。

 いやいや、そんな弱い力ではないだろう、とも思えるのだが・・・。


 実例を上げさせてもらうと、直径1mの鉄球を接触するように置くと、どの程度の重力が発生するだろうか?

 万有引力、この引っ張る力が全ての物に適用できる力であるなら、この鉄球同士も引き合わなくてはならない。


 ニュートンさんの万有引力の方程式から、この二つの鉄球が引き合う力を計算すると、

 重力加速度は、0.0000001542 m/秒²となる。

(いきなり、重力加速度という言葉を使ってしまったが、それについての説明は後程)


 かなり小さい値であり、現実的には、これ程小さい力は感じることができない。これが重力は弱い力と言われる所以である。

 

 このように、地上スケールでは、重力は微々たる力なのだ。


 ちなみに、太陽による重力加速度(太陽が地球を引っ張る力)も、0.00594(m/秒²)と、意外なほどに小さい値である。ちなみに、月による重力加速度は、0.000033 (m/秒²)ともっと小さい(太陽の1/180)。


 余談にはなるが、月が引っ張る力の方が、太陽よりもずっと弱いのに、なぜ、海の満ち欠けは月の影響が大きいのだろう?

 答えは・・・?


 話を戻そう。

 地上での重力は、ほぼ決まっている。

 重力加速度=9.8m/秒²。

 これは、地表に穴が開いて落ちていくと、1秒間に9.8m/秒ずつ速度が上昇(加速)していくという意味である。そのくらいの力で引っ張られているということだ。

 実は、この9.8m/秒という値は、ぼくらにとって絶妙な値なのだが、そこについては後述するとして、話を進めたい。


 太陽が地球を引っ張る力より、地球の重力は遥かに強い(約1600倍)。

 もし、太陽が地球を引っ張る力が、地球の重力加速度を上回るようであれば、空に輝く太陽に引っ張られて、ぼくらは浮き上がってしまうだろう。

 そればかりか、海の水は空に舞い上がり、地表もバラバラになって吸い上げられてしまう。


 説明が遅れたが、重力とは、重力加速度に対象物の質量を乗算したものである。

 地上の重力加速度は確定値であるが、鉄棒に掴まり、体を引き上げる力(重力に抗う力)は、体重(正確には質量)に比例して変動する。体重の重い人の方が、強い力が必要というのは、イメージ的にも理解できると思う。

 だから、確定値である重力加速度に、自身の質量(体重)を乗算したのが重力(引っ張られる力)となる。


 またまた、余談になるが、地上の重力加速度というのは、かなり強力な加速力である。

 重力加速度(9.8m/秒²)により、ゼロヨン加速を行うと、何秒で400mに到達できるだろう?

 (空気抵抗や転がり抵抗は無視)


 計算してみると、9.036秒で、到達点での速度は、時速318.8kmに達する。市販のスポーツカーレベルなら勝負になりそうな加速力である。


 この重力のお陰で、常に自分の体重をかなりの力で支えないといけないわけである。


 地球の重力加速度は、9.8m/秒²だが、月面だと1.6 m/秒²である。なので、体重60kgの人であれば、月面では約10kgになる。

 こうなれば、体は軽く、ジャンプも容易にできるであろう。幅跳びをすれば、凄い記録が出るに違いない。想像するに、動きやすく快適そうにも思える。


 しかし、重力が弱いと、気体を維持できないという重大な欠点がある。簡単に言えば、空気が宇宙に飛んで行ってしまうのだ。水も蒸発すれば飛んで行ってしまう。だから、月の重力では、地球のような環境は作れなかったのである。

 太陽からの距離は同じでも、月と地球の大きさの差が運命を大きく変えてしまったと言って間違えはない。


 もっと、極端な話、重力がなかったらどうなるだろう?


 空気も水も、自転する地球の遠心力で、空に飛んで行ってしまう。いや、それどころか、地表すら維持できずに、崩壊する。

 ちなみに、赤道上での自転による加速度は、0.0033 m/秒²、南極や北極だとゼロ。北極にいるよりも、赤道上の方が約0.34%、体重が軽くなる(60kgの人なら200gくらい)程度の遠心力である。


 地上の重力に比べて、自転による遠心力は弱いが、それでも、重力がセロになってしまえば、遠心力に逆らうことはできない。


 全部、バラバラである。

 地球は崩壊し、宇宙のもくずと化してしまうだろう。


 現実的には、重力がなければ、最初から宇宙の塵が集まって、星なるものが形成されることもない。何も生まれないということである。


 重力は物質を集約させる力であり、云わば、宇宙のクリエータである。

 更には、そこに秩序と安定を齎す重要なものだ。

 重力のない宇宙、それは、絶対にありえない世界である。


 空間に散乱している塵を集積し、星を生み出す力が重力というものであり、これがなければ、地球どころか、太陽も空に輝く星々も生成不可能ということだ。

 そして、この重力を生み出すのが、質量である。


 星の表層の重力は、その星の大きさ(中心から表層までの距離)と質量で決まる。もし、密度(体積当たりの質量)が同じであれば、星の半径の比率が、そのまま重力の比率となる。

 即ち、大きな星ほど重力が強いということだ。

 実際、地球よりも小さい月や火星の重力は弱い。


 「なぜ、地球の重力が絶妙な値なのか?」

 これを説明しておこう。


 地球の大気の中で最も多いのは窒素(約80%)、次は酸素(20%)である。しかし、宇宙の中で最も多い元素は水素であり、二番目はヘリウム。しかも、圧倒的に多いはずである。


 元素として、最も軽い(体積当たりの質量が軽い)のは水素、二番目はヘリウム、炭素は6番目、窒素は7番目、酸素は8番目。

 アバウトに言うと、宇宙にある元素は重くなるほど少ない傾向がある。


 「なのに、なぜ、地球の大気には窒素が多いのだろう?」


 それは、気体化している水素やヘリウムを大気として保持するためには、地球の重力は弱すぎるからである。水素やヘリウムは軽すぎて、地球程度の重力だと宇宙に飛んで行ってしまう。

 地球の重力は、窒素(7番目)を保持するのに丁度よい重力なのだ。だからこそ、空気の中には窒素が最も多い。


 もっと、強い重力であれば、おそらく、窒素よりも軽い元素が多くなり、重力が弱ければ、もっと重い元素、または、二酸化炭素のような重い分子しか保持できなくなり、当然、大気濃度は薄くなってしまう。

 生命を維持するために、絶対的に必要な元素は炭素(6番目)と酸素(8番目)である。地球の重力は、その間、7番目に軽い窒素に合っている。

 だから、絶妙な重力だということなのだ。


 この重力について、もう少し掘り下げてみたい。


 古典力学では、重力とは全ての物質(質量のあるもの)に適用される引き合う力と定義されている。

 AとBという二つの物質があるとするなら、必ず引き合うという法則である。その引き合う力は、AとBの質量を掛け合わせたものに比例して大きくなり、その間の距離が離れると弱くなる。


 Aを地球、Bを太陽として、イメージすると、引き付け合う力は、双方の質量が大きいほど強くなる。そして、双方の距離が遠くなれば弱くなる。

 重力加速度(太陽による重力加速度)は、太陽の質量とお互いの距離だけで決まる。

 即ち、地球の質量は関係ない。


 同じように、地球の表面での重力加速度は、地球の質量と中心からの距離だけで決定するものであり、地表では固定値となり得るのである。


 まとめると、古典力学においては、重力とは物質と物質が引き合う力であり、その力は双方の質量と距離で決定する。その論理は、全ての物質に成り立つ論理であるが故に、万有引力の法則と言われている。


 上記に対して、現代の物理学(相対性理論)においては、重力は引き付け合う力ではなく、質量による時間と空間の歪により発生する見かけ上の加速度と定義されている。

 ほとんどの有識者は、こちらを支持しているので、こちらが定説ということになる。


 少々、理解しにくいかもしれないが、イメージ的には柔らかなゴムシートの上に鉄球が乗っているような感じである。ゴムシートの平面は、ぼくらがいる時空間で、鉄球を太陽とするなら、鉄球の重さで凹んでいるところが、太陽の質量により時間と空間が歪んでいるところとなる。


 この歪みに沿って、物体は太陽に向かって、加速しながら落ちていくという理屈である。  

 太陽から離れれば離れるほどに歪みは小さくなり、太陽が重ければ重いほどに歪みは大きくなる。


 地球が生み出している時空間歪みによって、ぼくらは中心に向かって落ちようとしている。しかし、それに逆らって、ぼくらは地上に立っているというイメージである。

 屁理屈のようだが、引っ張られているわけではなく、あくまでも時空間歪に沿って落ちるイメージである。

 だから、抗わずに落ちれば加速圧(G)を感じることなく加速しながら落ちていくことになる。


 難しいかもしれないが、時空間歪が生み出すのは、あくまでも見かけ上の重力加速度であり、引っ張る力ではないというところがミソである。

 そして、この重力加速度は空間の歪なので対象物の質量には依存しない。即ち、質量のない光であっても空間の歪に沿って曲がる。

 引っ張られる力がゼロであっても、曲がるということは、即ち、引っ張る力は存在しないということなになる。


 この屁理屈を提案したアインシュタインさんの言葉を借りれば、「重力により自由落下している状態と静止している状態は区別できない。」ということである。


 もう少し紐解くと、重力により自由落下(空気抵抗なども含めて、重力に抗うことなく落ちていく)するというのは、加速しているわけでもなく、動いているわけでもなく、ただ、歪んだ時間と空間に身を任せているだけの状態であり、静止している状態と区別がない。

 逆に、地表に対して静止するためには、この空間歪に抗う必要があり、そのためには上に向かって加速し続けていなければならない。


 また、質量が大きいほどに、時空間は大きく歪むので、そのものは動きにくくなる。イメージ的には、巨大な太陽などであれば、時空間が大きく歪み込み、その場から動き難くなるという感じである。

 故に、同じ加速度を得ようとしたら、質量が大きい物ほど大きな力が必要となり、体重の重い人ほど強い力で大地を押さないと、地表にとどまっていられないという理屈である。


 余り気にしていないかもしれないが、地上にいるぼくらは、常に下から押し上げられるようなGを感じているはずである。これは、常に上向きに加速しているからだというのがアインシュタインさんの理屈である。引っ張られているわけではない。

 スポーツカーで前向きに加速すれば、後ろから押されたようなGを感じるのと同じ理屈である。


 ニュートンさんの理屈では、AとB、二つの物質は、その質量と距離により、重力(引っ張る力)が発生する。それは、あくまでも引っ張る力であり、その力により加速度が与えられる。

 自由落下の際に、加速Gを感じないのは、重力は全ての物を引く力だからである。体の表面だけではなく、内臓も血液も、全てを引っ張るから加速による圧力は感じない。

 まあ、ニュートンさんの理屈の方が自然に思えるかもしれない。


 ただし、これだと、対象物の質量がゼロであるなら、重力はゼロとなり、加速度は発生しないこととなってしまい、質量のない光が重力によって曲がることを説明できない。

 と、いうことだ。


 数学的には古典力学でも十分に物質の動きを計算することができるのだが、上記のような矛盾点に気づき、それを解消するべき理論を生み出したのが、アインシュタインさんという天邪鬼なおっさんである。

 その根本的な違いは、原因を時空間歪と考えるか、万有引力という引き合う力と考えるかに帰着する。


 難解な相対性理論を理解する必要はないが、宇宙の原理を説明するにあたっては、この理論に頼るしかない部分も多々ある。


 なので、これだけは覚悟しておいてほしい。

 「アインシュタインさんの脳みその中には、常識などというものは存在しない。」

 「宇宙の原理は、地上における常識の延長線上にはない。」

 即ち、常識を捨てろ、ということである。


 まあ、何はともあれ、重力がなければ、みんなバラバラである。

 それだけは間違えない。



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