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夢遥か~物理学など理解できないが、宇宙がどんなものなのかくらいは知っておきたい  作者: 鈴木樹蘭


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月光の哀しみ

広大な宇宙の中、唯一血を分けた姉妹である月であるのだが、運命は大きく引き裂かれ、悲しい程に違う姿となってしまった。

 真夜中の海。

 水平線の彼方に浮かぶ月。

 一筋の光が、もの悲しく、波間に揺れる。


 悠久なる時は、君とぼくを分け隔て、違う運命へと導いた。

 もう、あの頃に戻ることは叶わない。


 人類が生まれし頃から、ずっと君はぼくらを見守り、ぼくらも君の姿を見つめ続けている。

 何も語らず、何もせず、ただ遠くから見ているだけだ。


 暗黒の空に浮かぶ姿。

 それは、とても、美しくもあり、そして、残酷なまでに悲しくもある。



 初めて、人類が月に降り立ったのは、1969年。

 そして、2026年、再び、人は月へと向かった。


 月までの距離は約384,000km。これは、地球を9.6周分の距離であり、考えようによっては、それ程、遠い距離ではない。

 宇宙探査船ボイジャーなど、地球から200億km先を航行しているのだから、近いと言えば近い距離である。


 そんな月であっても、人が行くとなると簡単ではない。

 SFの世界のように、人類が遠い宇宙を旅する日は、まだ遠いと痛感させられてしまう。


 月の直径は3600kmあまりである。

 体積比にして、地球の1/50程度の衛星である。


 太陽系の衛星としては、比較的大きく、最大の衛星ガニメデでも直径が5200kmあまりなので、それに比べても大きく引けを取らない立派なものである。


 また、ガニメデの体積が木星の1/20,000程度なのに対し、月は地球の1/50である。母体の惑星に対しての大きさという点では、月はかなり大きな衛星と言える。


 太陽の周りを渦巻く塵や石から惑星が生成されたように、たぶん、木星を取り巻く物質からガニメデなどの衛星は生まれたのであろう。


 でも、月は違う。

 地球を取り巻く物質から生まれたにしては大きすぎるのだ。


 地球に多数の隕石が降り注いでいた頃、巨大な隕石(小惑星かもしれない)が衝突したというのが有力説である。この衝突によって、砕け散った破片が集積して月ができたというわけである。


 もしかしたら、双方のかなりの部分がバラバラに砕け、周辺に散らばった欠片が、月と地球に分かれて集積していったと考えた方がよいかもしれない。

 50対1の割合で別れたのは、単なる偶然なのだ。


挿絵(By みてみん)


 何しろ、地球と月は分裂した同胞である可能性が高いのは間違えなかろう。

 なので、生成物質もかなり似通っている。


 しかし、宇宙空間から月と地球の姿を見れば、その差は実に大きい。

 ブルーに輝く地球は海と陸も存在する美しい星である。

 対して、月は彩度に乏しい灰色のような星であり、地表には生気なるものがない。まるで、ミイラを連想してしまいそうな姿である。


挿絵(By みてみん)


 水も大気もほとんどない月は保温性が良くない。だから、星自体が冷え切ってしまっている。

 地球のような活発なマグマの動きもないので、地殻変動は極めて少ない。

 また、大気が希薄なために風化も進まずに、クレーターは容易には消えることもない。

 要するに、地球のような循環がないのだ。


 だから、宇宙から見ると、地球とは全く違う星に見えてしまう。

 水と大気を持つ地球は青く、美しく、生気に満ちている。

 でも、月は死んだような星に見えてしまう。


 ある意味で、血を分けた姉妹のような存在であり、太陽からの距離もほとんど同じなのに、二つの星は、全く異なる道を進んできてしまった。

 その運命を分けた最大の原因は重力の差と言っても間違えではないだろう。


 何はともあれ、地球と似たような地面を持ち、最も地球に近い星であれば、最も移住しやすい場所とも言えなくはない。


 しかし、環境的な違いは大きい。

 昼間の気温は100℃以上に達し、夜の気温は-200℃まで下がる。


 一日の長さが地球時間で27日あまりもあることと、表面に水がないどころか、ほとんど大気もなく温度を保持できないのだ。

 大気は非常に薄く、地球の1/200兆であり、酸素はないと言って良い。

 ただし、大気が薄いので、数値ほどの暑さと寒さは感じないかもしれない。


 また、地球と同じような位置にあっても、遮るものがないので、紫外線や太陽風、放射線などは降り注ぎ放題である。


 公転周期(地球を周回)は、27.32日で、自転周期と同じである。地球の周囲を一周する間に、自転も一周、即ち、月は常に同じ面を地球に向けている。(地球の重力により潮汐固定している)


 月面を見ると、かなりの高低差がある。水もなく風化もあまりないので、岩と石ばかりの世界である。イメージ的には、荒涼とした岩盤地形である。


 雨も降らないし、大気が薄いので、おそらく風もほとんど感じることはないだろう。


 月の大地に立って、地平線の彼方に浮かぶ地球を眺めるのも一興かもしれない。おそらく、大きく青い地球がくっきりと見えるはずである。

 さぞかし、美しい情景であると想像できる。


 しかし、この荒れ地に立ったなら、人が住むような場所ではないということを思い知らされるに違いない。

 いつしか、地下資源を求めて、月に穴を掘る日が来るかもしれないが、おそらく、それも限定的なものとなるだろう。


 月は居住すべき場所ではなく、縁側に座り、盃でも持ちながら、眺めるのが良い。見慣れてしまったかもしれないが、夜空を飾る神秘的な姿は格別である。


 30億年、40億年と時を遡れば、地球も月も高熱に覆われた同じような姿であっただろう。

 それは、仲良しの姉妹を連想させる過去である。


 しかし、今は違う。


 太陽が陽の象徴であるなら、月は陰の象徴である。

 しかるに、月は、最も愛すべき存在なのだ。


 例え、循環を失い死んだような星になったとしても、この広大な宇宙の中で、血を分けた星は月しかない。


 ぼくらは、それを忘れてはいけない。




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