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3-10 結果発表!




 俺は朝食をすませて、シャワーで汗をながす。部屋に戻って調べ物に使っている魔物辞典に目を通して時間を潰す。

 3番鐘がなったのを機にギルドへと向かう為に宿屋を出た。

 俺は直接ギルドへは向かわずに、通りの屋台を冷やかしながらギルドに向かうことにした。コーメーの能力のおかげで出来立てをそのまま保存出来るので、気に入った料理は買い溜めするのが俺の趣味と化している。汁物や炒め物など、大量に買う為にわざわざ鍋や大皿を買っておくのも忘れていない徹底ぶりだ。

 この世界に来た時には前世の記憶で料理チートをしようと考えた時もあった。だが困ったことに先達が多いので、様々な料理が浸透したり独自の進化を遂げていたりする。そんな中で最近のお気に入りは串カツだ。


「はいらっしゃい! お、クオンじゃねぇか。毎度どうも!」

「おっちゃん。今日は何があんの??」

 目の前にあるのは、下処理されて串に刺さった肉や野菜たちだ。日本にいた時よりも具材の1つ1つが大きく、鮮やかな色の野菜が目立つ。

 鉢巻きをした浅黒い肌の大将と弟子が威勢の良い声で迎えてくれた。

「今日はメヘラジカのイキのいいやつを捌いたから、内臓系がオススメだな。野菜はオニランとクイント、それに朝摘みのビリーフがあるから肉巻きも美味いぞ」

「じゃあそれぞれ5本ずつちょうだい」

 オニクラは玉ねぎ、クイントはジャガイモに似た野菜で油で揚げると甘みが出て美味しい。ビリーフはエゴマの葉みたいで、少しクセがあるが肉とともに食べると非常に美味だったりする。

「あいよ、いつもどおり揚げた順に渡すからな。時間はあるんだろ?」

「おっちゃんの串カツが食べれるならいくらでも待つさ」


 この店の常連になった理由が、きちんと2度揚げしているところだ。勘違いして欲しく無いのだが、作り置きしたものを温め直すのを目的とした2度揚げじゃ無い。きちんと大きめで分厚い肉に火を通すための手法としての2度揚げだ。だから野菜なんかは比較的すぐに揚がるので、揚がった順に受け取る。基本的には1種類について1本食べて、残りは亜空間に保存する。

 ちかみに、ソースは壺で購入している。無論、持ち帰っても変わらぬ味を楽しむためだ。


「おっちゃん、これなんだけどタネになるかな?」

 俺は昨日の試験の時に捕獲したウォーキングマッシュルームを取り出して見せた。

「お、なかなか良いやつだな。下処理が必要だがうまいと思うぜ。でもデカイだろう」

 おっちゃんは体長が150cmはあるキノコの化物を見て、そんなことを言う。

「じゃあ俺の5本分とったらあとはおっちゃんにあげるよ。いつも美味いもの食べさせてくれるからそのお礼ってことで」

「そうか! じゃあサービスでチェックボアの大腰筋があるこらこれも持ってけ」

 おっちゃんはそう言って、足元の箱から肉の塊を出して切り出していく。大腰筋というのはヒレ肉のことだ。拳大のそれを惜しみなくサービスしてくれる心意気に思わず惚れそうになる。

 おっちゃんはキノコを弟子に渡して解体させながら、次々に様々なタネを揚げていく。


「おいしそうな匂いです。レイラ、食べていきませんか?」

「もう、すぐに屋台に入っていくのはやめて下さいって、いつも言っているじゃ無いですか?」

 そろそろ肉類が上がるタイミングで別の客が来た。タネを食い入る様に見る少女は垂れ気味の犬耳をしたミミ、彼女を引っ張り出そうと服を掴んでいるうさ耳のレイラがそこにいた。




「奢ってもらってありがとうございます」

「……ありがとう」

「わふっ!」

 屋台を出て、三者三様のお礼を言われることになった。理由は単純だ。串カツをおごったのだ。

「気にしないで。レイラには試験中にお世話になったしな。ミミとハクには試験お疲れさんってことだよ」

「そんな。私の方が助けてもらってましたよ」

「いやいや、風の魔法には随分と助けられたからね。……なんだハク? 足りないのか?しょーが無いな」

「ワン!」

 もっともっと頂戴、と一瞬で串カツを食べ終えたハクが前足を使って俺にじゃれてくる。よしよし、と頭を撫でてやりながら亜空間から豚の太腿を豪快に焼いたものを取り出す。

「ほら、これでも食え」


 俺の手にある肉にハクの視線が釘付けになる。だが今にも飛びつきそうなハクを制する声が響く。

「ダメだよ、ハク。こんな通りの真ん中で食べちゃダメ。ギルドに着くまで我慢しなさい!」

 幼い子を諭す様に叱るミミの姿が面白く、思わず笑みになってしまった。でもミミはそんな俺の表情が気に食わなかった様だ。

「クオンセルさんも、無闇に餌をあげないで下さい。ハクは止めないと際限なく食べてしまうんですよ? 太ってしまったらどうするんですか!?」

 なかなかの剣幕で詰め寄られたので、俺は数本後ろに下がってしまう。

「それにハクにも言いましたが、場所を考えてください!」

「ごもっともなご意見で」

 と俺はとりあえず同調しておく。だが、ミミの後ろで首を振っているハクを目にする。

 分かってるぞ、ハク。おそらく今のサイズに見合った量の食べ物しか与えられていないんだろう。一緒に旅してる時はオーク1匹をおやつ代わりにしてたぐらいの大食漢だもんなぁ。俺がミミにその思いをハッキリと伝えてやるぞ。

 俺はハクの目を見て頷く。ハクも俺が言いたいことが分かったようでなんども頭を上下させている。


「……でも、ミミさん。ハクだってじゅうぶ――」

「――でもじゃないんですよ。勝手なことしないで下さい」


「いやだって、は――」

「――だってじゃないですよ?」


「……」

 すまんハク。俺には無理なようだった。せめてギルドに着いたら腹一杯食わせてやる。だからそんな目で見ないでくれ。

 ミミの瞳に潜む恐ろしい何かに気圧された俺は、説得を早々に諦めることにした。




「ほらハク。たんとお食べ」

「ゎん」

 ギルドに着くと、馬の繋ぎ場の近くにハクを置いておくことにした。俺が渡した太腿の肉をすぐに平らげたハクが、キューンキューンと、おねだりを続けたことで追加の肉が認められたのだ。ミミはなんとも渋い顔をしている。

「じゃあハクはそこに居て下さい。そんなに食べてデブっても知らないですからね」

 不機嫌な様子を隠すことなくギルドの中へと入っていくのを、俺とハクは見送ることになった。

「なぁハク。ビビアンに会った時に食べ物の話はしておくから、もうしばらく我慢してくれ」

「くぅーん」

 普段の食事量によほど不満があるのか、俺の言葉に力強く頷く。その様子が不憫に覚えて、俺は馬の繋ぎ場の影にオークを2体取り出した。

「解体もしてないけど、これで我慢してくれ」

「ワォーーン!」

 ハクが飛びついてきて、顔をペロペロ舐めながら喜びを表現してきた。可愛い奴だな、とひとしきり戯れながら癒しを得てからギルド会議室へと向かう。途中、ミミに嫌われていることを自覚して凹んでしまった。




 部屋に入ると俺とシン、ヤオの2人以外の受験者がすでに集まっていた。それぞれがグループになって座っている。ミミの方へ視線向けると、露骨に顔を背けられた。隣でレイラがすいませんと、ジェスチャーで謝ってくる。気にするな、という意味を込めて手を振って、俺は近くの椅子に座る。手持ち無沙汰だったので、棒手裏剣を1本懐から取り出す。ペン回しの要領でピュンピュンと回す。最近発見した無魔法の訓練も兼ねた時間つぶしだ。

 ソニックからシングルアクセル、そしてリバース。時折ひねりを加えながら指周りで棒手裏剣をクルクル回す。前世でも暇があればペンを回していたので、今世でもそれなりに出来る。しかも無魔法を使って前世では出来なかった技も開発した。人差し指をピンと立てて、延々と棒手裏剣を回す。回転を止めずに中指、薬指、小指と移動させてまた人差し指へと戻す。そのまま手のひらを広げて、回し続けてから最後に手を返して、甲の部分でも回転させる。


「クオンセル、会議室で凶器を振り回したりしないで下さいね」

 そんな声とともに会議室に試験管であったジュラが入ってきた。その後ろには同じく試験官のリースカ、それと何故かシンとヤオまでくっついて来た。

 俺は注意を受けたので、棒手裏剣をマントの中へと隠した。

「では、全員揃っているので結果発表を始めたいと思います」

 ジュラ達が会議室の前方に座る。ちょうど受験生達に向き合うように座っている。

「ちょっと待った! なんでその2人がそちら側(・・・・)で座っているんだ?」

 おそらく、受験者全員の疑問であることをグチパのリーダーが質問する。


「ん? ああ、簡単なことだ。実は彼らは試験官補佐として活動していた。受験者達の仲を悪くしたり、難癖つけたりする役目としてギルドが雇っていたんだ。ちなみに2人ともCランクだ」

「「「「はぁーーっ?」」」」

 俺を含めて受験者全員が声をあげた。話題に上がっている本人達はニヤニヤするだけで、飄々と座っている。リュウケンが今朝言っていたことはこのことか、と俺は朝のことを思い出した。


「実はDランクの昇格試験前に、他所の支部からきたCランク以上の冒険者には試験に協力してもらうことになっている。勿論、断ることはできるが、2人は快く引き受けてくれてね」

「まぁそーゆーことだ。俺とヤオが試験中に文句言ったり、団体行動を妨げる言動をしたのは理由があったからだ。おかげて面白いことがあって色々と楽しめたよ」

「若がやりたいと言うので、私は仕方なくでしたが……」


「いやいや、ジュラさんから試験中は結構ノリノリだったって聞いたぞ?」

「そ、そんなことは……」

「2人とも脱線しないで下さい。と、まあそんなわけです。では早速試験結果と各人に対する評価を伝えていきますね」

 一通り2人についての説明が終わると、サクサクと試験についての結果発表に移っていった。グチパの面々やミミ達はシン達のことで衝撃を受けたままでキョトンとしている。

「ほら、皆もいつまでも惚けていないで下さい。冒険者たるもの速い切り替えは非常に大切ですよ」

 ジュラが手をパンパンと叩きながら全員の注目を集める。他の面々もフリーズしていた脳を再起動させてジュラの方へと向く。


「まずは気になっていると思うので、先に結果を言いますね。……今回のDランク昇格試験は全員が合格です。おめでとうございます」

 バチパチパチと試験官側の4人が拍手をしてくれる。だが、あっさりと合格を伝えられたのでイマイチ現実感がない。

「では各人の評価を伝えます。はっきり言いますが、全員が合格とは言っても至らない点は数多くありました。伸ばしていくべき点、改善するべき点をこれから言いますのでしっかりと今後の糧にしてください」

 ジュラがそう言うと、グチパのリーダーについての話が始まった。リースカとシンがそれぞれ気づいた点などを列挙していくようだ。


 俺はそんな様子を見ながらこの試験のことを振り返る。シンのあの態度はわざとだったということなので、何度か意見で衝突した身としては少しばかり気恥ずかしいものがある。ただ合格したのだから、問題はないだろう。

 でも訓練場でのヤオの殺気はなんだったのだろうか? あれも試験の一環なのだろうか。それにしては殺気が俺個人に対してのものだったりするので、よく分からない。他にも気になることはあるが

、後で質問するか。

 とにかく無事合格したことを喜ぼう。


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