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3-6 Dランク昇格試験 スタート?

区切りが良いので短いです。

明日も投稿予定です。

 昨夜は色々と吐き出せたので、比較的スッキリとした俺は集合場所へと向かっていた。二日酔いにもなってない、ムンちゃんには夜通しお世話になったので戻ってきたらお礼と何かプレゼントを渡そうと心に決めていた。早朝ではあるが、門の近くの通りはそれなりに人通りが多い。この世界は皆朝早くから行動するようなので、むしろ俺は遅い方なのかもしれない。


 そんなことを考えていると、目的地に俺以外の面々がいることがわかった。


「すいません。遅かったですか?」

「いや、そんなことは無い。2番鐘はまだ鳴ってないしな」

「そうですね。私たちが早く着きすぎていただけですよ」

「ん? 随分と軽装だな。盾も持ってきてないのか?」


 待ち合わせの東門に着くと、試験を受けるどうパーティーのメンバーが寄ってきた。ちなみにミミのいるパーティーは北門集合だ。目的地までの道を分けて、パーティーとしての行動をきちんとチェックするためらしい。

 亜空間に荷物やらなんやらを収納できるので、俺が軽装なのはいつものことだ。そこを指摘されるのは毎度のことだ。でも盾とはなんのことを言っているのだろうか? そんなことを聞いてきたのは、この臨時パーティーのリーダーになったグチパのリーダーだ。昨日はミミにも勝っていたし、それなりに実力もあり、この中で1番経験豊富だ。



「荷物に関しては持ってますよ。魔法で収納してますが……。でも盾って何ですか? そう言えば、皆さんも……シン以外は持っていますね」

 他のメンバーは各々盾を持参している。魔法使いのレイラまで半身が隠れるくらい幅広の盾を持っていた。


「おい、もしかしてお前もツキサシドリのことを調べてないのか?」

お前も(・・・)ってことは……?」

「ああ、俺もそうだ」

 そう言ってシンが前に出てきて胸を張っている。なぜ得意げなのか? それは別に良いとして、俺は失敗したことに気付いた。


 指摘された通り、今回の試験の対象はツキサシドリの卵。その持ち主であろうツキサシドリのことを一切調べていなかった。これは試験的にもマイナスかもしれない。

 前世でも上司から「仕事は準備が9割だ」と口酸っぱく言われていた。営業でも何を言われても、何が起きようとも、対応できるように準備しろ。なんてことも言われた気がする。面倒くさがりの俺は反発して「実際は何が起きても、なんて言ったら準備に終わりは無い」なんて言ったら、屁理屈言うな! と頭を叩かれた記憶がある。

 面談前の移動中も上司から、こう言われたらどうする? この話題は喋れるのか? など質問攻めにされたことがあった。シミュレーションだ、1人の時も頭の中で繰り返しやっておけ。なんてことも言われけど実行はしなかったな。


 まぁ、そんな前世のことはどうでも良い。いや、良くはないが放っておく。今はこの試験についてだ。俺の冒険者としての師匠でもあるウェンキッシュが言っていた。「冒険者は臆病なくらいが丁度いい。一歩間違えれば死んじまうんだから、準備は怠るな」と、珍しく真面目な顔して言っていた。

 俺はこの街に来て、それなりに準備を怠ったことは無かったが、まさか試験でやらかしてしまうとは……。うわ、試験官のリースカが俺を見て笑っていた。無口な人間の笑みはちょっと怖かったが、試験的に減点されたんだろうな。はぁー、幸先が悪い。


「あー、すいません。おっしゃる通り下調べが出来ていないです。申し訳ありません」

 俺は自分の非を認めて素直に謝ることにした。頭を下げてお願いをする。

「ただパーティーに迷惑を掛けられないので、出発までに情報を共有していただけませんか?」

 俺はぼーっとしているシンの頭を押さえて下げさせながら言った。


 俺の態度が低かったからから、特に不満も出ずに皆は目的地についてや、出現する可能性の高い魔物について色々と教えてくれた。ちなみになぜ盾が必要か、これはツキサシドリの習性に対応するためのものだった。この魔物は、頑丈な長い嘴を利用して巣に近づく外敵に向かって物凄いスピードで飛んで来るらしい。鉄のプレートメイルでも貫通することがあるとのことなので、厚みのある幅広の盾で身を隠しながらでないと巣に近づけないらしい。

 つまり、巣にある卵を奪うために必須のアイテムだということだ。完全に準備不足だな。


「でも今からじゃ大きな盾も準備出来ないので、私とシンは何か対策を考える必要がありますね。……シン、何か案があればあ願いします」

「まぁ、無い事は無いけどな……。でもリーダーもそうだけどさ。なんか皆、意地悪だよな。つーかケチ? 試験に受かる気あるのかな?」

「はぁ? どういうことだよ??」

「何で俺たちが悪いみたいな言い方すんだよ」


 シンがいきなり爆弾発言をし始めた。

 明らかに俺とシンは個人的な準備不足で、パーティーに迷惑を掛けている。そんな俺たちに、皆はわざわざ時間を割いて情報の共有をしてくれた。お礼こそ言うが、意地悪なんて貶めるような事は言うべきでは無い。というか、ありえない発言だ。


「……シン。準備不足の事を棚に上げて、俺たちの避難をするなんて、良い度胸だな。これからパーティーとして試験を受けるのに和を乱すなよ!」

 リーダーはそう言いながらシンに詰め寄っていく。他のメンバーも同じ気持ちなのか、敵意ある瞳でシンを睨む。

 ああ、リーダーの言葉じゃ無いけど、これじゃあパーティーとして機能しないぞ。この試験をぶち壊す気か?? ほら、試験官のリースカも驚いた顔してるぞ。

 シンはさも心外だ、と言わんばかりに笑みを浮かべる。


「いやいやいや、パーティーの和を乱そうとしてるのはそっちじゃ無いのか?」


 ブチィ!


 リーダーの顔つきが変わって、得物に手をかける。自分の身の丈よりも大きな大剣だ。あれを巧みに使って、昨日はミミを完封していた。なかなかのやり手だと俺は思っている。

 ってか、こんな街の中で抜剣なんてしてみろ。試験どころか、衛兵に引っ立てられかねないぞ。ここの剣呑な雰囲気に周りの人たちも遠巻きに様子を伺っているから、言い逃れできそうに無いし。くそっ、押さえに入るか?


「いやいや、ちょっと待ってくれ!」


 俺が止めに入ろうと動き出す寸前に、シンが両手を上げて制止をかける。


「ごめん。別に本気で文句を言ってるわけじゃ無いんだ。それに俺だって試験を台無しにしたくは無いんだ」

「……じゃあなんだって俺たちを悪く言う?」

 すんでのところで、動きを止めたリーダーが低い声で話しかける。


「いやさ、あんたは今回の臨時パーティーのリーダーだろ? だったらさ、昨日の解散時になんで何も指示を出さなかったんだ? 全員で標的について調べるぞ! ってな感じでさ」

「そんなのは自己責任だろう。それにこれは試験だぞ」

 リーダーはシンに反論する。まぁ確かに試験のことで俺たちは何も打ち合わせをしていない。もしかしたらグチパ内ではやっていたかも知れないが……。


「まぁ自己責任さ。確かに自分で調べようとしなかった俺やクオンセルはダメだな。……でもあんたたちはそれで良いと判断したんだろ? おそらくギルドの資料室で今回の依頼についての情報を得てはずだ。この街の冒険者はまずはそこから情報を集めるからな!」

「確かに俺たちはそうした。当たり前じゃ無いか!」


「いや、だからさ。俺やクオンセルが居ないことは分かったんだろ? なら盾を用意していない事は想像がつく。だったら俺たちに連絡して教えるとか、余分に用意しておくとか、対策ねっめフォロー出来ただろ?」

「……なんで、わざわざ俺たちがそんな事をしなくちゃいけないんだ? ただの臨時パーティーだぞ、お前たちは!」


 ……なるほど。なんとなくシンの言いたい事が分かってきた。でも、それでも――

「だーかーらー、このパーティーは試験のための運命共同体だろ? だったらパーティーのメンバーのミスはカバーするもんじゃ無いのか? それも予想できるミスだぞ? わざわざ、シャッフルしてパーティーを組ませていて、その動向を試験官殿がチェックしているのに……」

 シンは試験官をチラッと見ながら言葉を続ける。

「別に今回の試験では合格者の人数は決まっていない。無駄な対抗意識は必要無いはずだ。見知らぬ他人でパーティーを組ませる事を考えれば、協力できるか否かが1つの判断基準になっている事は確かじゃ無いか? リーダー、普段のあんたならきちんとメンバーのフォローをしていたはずだ。だから意地悪だなって言ったんだ」


 この場に変な空気が漂う。誰も言葉を発せずに周りの喧騒だけが聞こえる。しれっとした顔でニヤニヤしながら俺を見る。なんか、勝ったぜ! みたいな雰囲気を出しているのが癪にさわる。


――ゴォォーン……ゴォォーン……――


 出発を告げる2番鐘の音が響く。こんな状態で試験開始か、最悪だな。俺は愚痴りたくなる気持ちを抑えて、試験官の方を向く。おそらく皆も同じ気持ちだろう。


「では、皆さん。試験の開始合図です。私は何もしません。ただ少し後ろを息を殺してついていきます。緊急事態以外でアドバイスや意見を言う事は無いので無視して下さい。では出発しましょうか」


 ぅお! リースカ試験官が急に話し始めた。今までの無口キャラはどうした?

 いや、それよりも今をどうするかだ。


「リーダー、出発前に少し良いでしょうか?」

 挙手して意見した俺に、リーダーは首を動かして肯定する。俺はただ黙ってシンへと近づく。相変わらずヘラヘラしたシンの頭にゲンコツを落とす。シンの背が高いのでジャンプする必要があったが、相手が油断していた事もあり綺麗に決めるとができた。

「いってーな! なにすんだよ」

 シンが抗議するが無視。

「お前の言いたい事は分かった。的外れじゃ無い事も理解した。だから頭を叩いた」


「わけわかんねーよ! お前はこっち側だろ?」

「こっちもあっちも無いんだよ。お前の言葉通り、俺たちはパーティーだ。これから死が隣り合う冒険をする仲間だ。変な区切りをつけるな」

 俺はシンに向き合って思いのほどを伝える。


「それよりもまず、俺とお前は事前準備でミスったんだ! それについてまず謝罪するのがスジだ。そんなことも出来んお前にとやかく言う資格は無い。少なくとも俺の価値観では受け容れられない。まずは謝れ!」

 思わず素の口調が出てしまったが、しょうがない。まずは立場を明確にしよう。問題の所在はこの際どーでも良い。パーティーとして機能しなくなるのは困る。

 

 その後、渋々ながらシンは謝罪した。

 変なわだかまりを表面化しないように、シンの意見でパワーバランスが崩れないようにするのが大事だ。出発時にリーダーを否定するなんて有り得ない。

 一先ずの落ち着きを取り戻し、移動中の陣形を決めてから門をくぐる。先頭をグチパの3人が三角形に広がる。その後ろに横並びに俺とレイラ、最後尾がシンだ。このまま森に入るまで移動する。予定通りなら昼には着くはずだ。

 道中では数体のゴプリンが出てくるだけで、特に問題もなく進んだ。時折シンから話しかけられたが、曖昧に返事をしておいた。「せっかくリーダー替えれそうだったのに…」、そんな独り言が聞こえてきたが聞こえないふりをした。

 さっきの問答にはやっぱりそんな意図があったのか、俺は内心で毒づく。このシンって奴は何を考えているのか分からない。何故かわざわざパーティーを分裂させるようなこと言っている。試験に受かる気が無いのだろうか?


 俺は道中ずっとシンのことについて考える羽目になった。だって、隣のレイラは空気にビビったのか、全然話してくれないんだもの。本当に幸先悪いスタートだ。




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