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2-27 ハーピー討伐作戦


「……よって、ローレンシウム辺境伯様の依頼を、冒険者ギルドビルリア支部ギルドマスターである私は受託しました。これにより【緊急収集依頼:ハーピー討伐作戦】を現時点を持って発行します‼︎」


 仮説で作られた壇上から、ギルドマスターの演説のような話が聞こえてくる。彼女はさほど声を張り上げてはいないのだが、不思議とギルドの端っこにいる俺までその美しい声が聞こえてきた。


 時刻は7番鐘がまだ鳴っていない。依頼を終えた冒険者もギルドに戻ってきているのでギルド内の人口密度はかなり高い。

 そして緊急収集依頼の発行と共に、ギルド内に詰め寄せた冒険者から雄叫びのような声が上がった。


 どうやら俺たちが遭遇したハーピーは大量発生の前触れと認識されていたようだ。ギルマスが言うには4年前にも同様にハーピーが大量発生したことがあり、今回も当時と同様の傾向が見える。そこで領主である辺境伯から、街の被害を最小限に抑える為にハーピー討伐の依頼が出されたようだ。

 ちなみに4年前は街にハーピーが押し寄せて来てかなりの冒険者や兵士だけでなく一般人にも被害が及んでしまったらしい。空を飛ぶハーピーには街を囲う砦のような壁も意味を成さなかったらしい。俺の周りにいる冒険者のほとんどが当時のことを知っているようで、各々様々な感情の入り乱れた表情をしている。親しい者を亡くした人や、稼げると喜んでいるものなど様々なんだろう。


「そして今回の討伐依頼の現場総指揮を【血の乙女(ブラッディメイデン)】リーダーのフランにお願いしてあります。フラン、作戦の説明をお願いします」

「現場総指揮を任されましたAランクのフランです。皆さん、よろしくお願いします」


 ギルマスに指名されて、フランが壇上へと上がり挨拶を始める。冒険者たちから結構な量の歓声が聞こえてくる。どうやら彼女は他の同業者からも好かれているようだ。チームの活動や彼女の容姿を考えれば当然かもしれないが…。


「作戦の概要を説明します。まず私たちは『探索班』『奇襲班』『追撃班』『防衛班』にパーティー単位で分かれます。班分けは作戦参加者の能力や力量でギルドに選別してもらいます。

 探索班には今夜から斥候に出てもらいます。目撃情報からハーピーの巣は、南の街道付近にある森であると推測されます。発見はさほど難しくは無いでしょう。

 そして、奇襲班と追撃班は明日の4番鐘と共にこの街を出て現地へと移動。ハーピーの活動がおとなしくなる明日の深夜に攻撃を開始します。

 残っている防衛班は街から離れた南の街道で待機です。可能性は低いですが、撃ち漏らしたハーピーがここに迫ってくることも考えられるので、その対処要因です」


 スラスラとよく通る声でフランは説明をしている。気性の荒い冒険者達も静かに聞いている。


「先に断っておくが、E.Fランクの者たちは防衛班に回させてもらう。報酬に関しては作戦参加者には1人につき銀貨3枚だ。決して高額では無いが、街を守るためだ、我慢してくれ。ただし、倒したハーピーの素材については各自自由にしてくれ。それに領主様から作戦終了後は宴を開くと聞いている。作戦参加者は無料で飲み食いできるから楽しみにしていてくれ!」


 ランクが低いものや、報酬の安いことに多少の不満の声は上がったが、領主による宴と聞いて歓声が上がる。領主はまだ見たこと無いが、さすがに人身把握術は心得ているようだ。


「さらに細かい説明は選別された班のリーダーから聞いてほし。では作戦参加への希望者はカウンターで受付をしてくれ! 最後になるが、私はこの街が好きだ! 故郷では無いが、この街には多くの大切な人たちがいる。彼ら彼女らの為にもハーピーにこの街を蹂躙されるようなことは絶対にさせない。その為にみんなの力を貸してくれ‼︎‼︎」


 フランの号令と共に冒険者たちが再び歓声をあげる。そしてこの場にいる人々はそれぞれの役割を果たす為に動き出す。ギルド内は活気にあふれている。

 俺とミミ、そして満腹で幸せそうな顔をしたハクはギルドの端で彼らのことを静かに見ていた。


「冒険者というのは凄いですね」

 ミミがそんなことを言うが、何がすごいのかは分からない。この人々の出す熱量に圧倒されているのだろうか。

「これがこの街の冒険者達なんだろう。でもミミだって…、それに俺ももう冒険者なんだぜ?」


 俺はそう言ってミミの頭を撫でてやる。俺の言葉を聞いてミミは少し考えるような仕草をしてから笑顔になる。


「じゃあ、クオンさん。私たちも参加しましょう!」

 俺はミミに腕を引っ張られるようにしてカウンターへと連れて行かれた。






「ほう。ではクオンさん達も明日のハーピー討伐作戦に参加されるんですね?」

「そうなんですよ。冒険者としての初仕事がこんな大舞台とは……。運が悪いとしか言えないですね」


 ここはビルリアにある高級レストランだ。約束通りにフィットと夕食を共にしている。目の前に置かれた料理は見た目、味ともに素晴らしかった。食材のほとんどが魔物に関係しているのがこの街らしいとら思える。

 フィットは顔が利くらしく、わざわざ個室を取ってくれた。個室の中には俺とフィット、それに実体化したコーメーがいる。ミミとハクはさっきの騒ぎの罰としてお留守番だ! まったくひどい目にあった。


「あながち運が悪いとは言えませんよ? ここで活躍すればランクも上がるかもしれないですよ?」

「そんなに簡単にランクは上がるものなんですか?」


「今回のように緊急収集依頼では普段よりもギルドからの評価は高くなるものです。それにクオンさんはまだFランクです。昇格試験も無いでしょう?」

「……なるほど。でも今回は難しいかもしれませんね。私のランクでは防衛班に選抜されます。活躍の機会は少ないでしょうね」


 作戦にもよるだろうが、おそらく防衛班は大きな戦闘になることは無いだろう。追撃班が取り逃がしたハーピーのためとは言っているが、実際は後方支援部隊としての役割がメインだろう。

 ネーミングは低ランクの冒険者への建前からだろう。折角の大規模作戦なのに、戦闘がなければ素材や魔石を得られない。不満を抱えているものはそれなりに居るはずだ。仮に逃げてきたハーピーが居てもそういった稼ぎたい冒険者が狩ることだろう。


 俺としてはハーピーらを換金した額で、当面の生活に余裕が出来た。なんと、金貨6枚分にもなったのだ。旅の道中で仕留めた魔物も多く含まれていたので高額になったと思われる。

 だから今回は無理して稼ぐ必要は無い。



「まぁ無理をする必要はありませんからね。私としては普通に冒険者として名を上げたいと思っています」

「…やはりクオンさんも一攫千金を求められて冒険者に?」

「いや、金はあれば有り難いですがそれほど多くを求めてはいません」


「では名声ですか?」

「いえ、この程度はかまいませんよ。名声の方がもっといらないですね」


 なぜこんなことを聞いてくるのだろうか? 

 不審に思い、少しフィットを睨んでしまう。


「いや、すいません。お気を悪くなさらないでください。立ち入ったことをお聞きしました」


 少し嫌な空気になった。フィットは苦笑いでこちらを覗き込んでくる。この機会にフィットの真意を確かめてみるか。


「不躾な質問のお返しではないのですが……、お聞きしたいと思います。なぜ私に善くしてくださるのですか? 私としても自分の経歴は少し特殊だとは思います。ですが何の影響力も大きな武力を持っていません」


 俺の言葉にフィットは笑みを消して真面目な顔になる。これは演技か、素直な反応か……。


「商人のフィットさんからすれば、私に関わってもあなたの利益にはならないんではないですか?」


 フィットは俺の質問に目を閉じると、深く深く息を吐く。


「そんなに直接的に聞かないで下さいよ。躱し辛いじゃないですか」

 そしてにっこりと優しい笑顔を向けてくる。


「簡単ですよ。最初は空間の精霊であるそこのコーメーさんの能力に目を付けました。そして、ポロス様とのご縁も出来たので、それにあやかりたいとも思いました」


 あっけらかんと答えるので、俺は口を開けてぼーっとしてしまう。


「さらに聞いたところによると、あのビビアンさんにも勝ったそうじゃないですか。それに何度か話をしていますが、その度に思います。あなたは考え方や物事の捉え方が普通じゃない」


 手にした酒を一気に煽ると最後にこう締めくくる。


「だから……、そんな面白い人と友達になりたいと今は思っているのですよ」

「えっ?」


「いやだから友達になりたいんですよ、貴方と」

「はぁー、友達ですか」


「お嫌ですか?」

「嫌というかなんと言うか……」


 俺は予想と違う展開に戸惑ってしまう。友達? この世界に友達はいない。前世でも親しい友人は居なかった。ボッチだった……。


 友達か……。

 欲しいな。


「よろしくお願いします‼︎」

「はい、よろしくお願いします」


 俺は立ち上がると、どこぞの告白タイムのように頭を下げて右手を差し出した。

 その右手にフィットの手がきつく握られる。


「じゃあここからは対等な立場としてもっと砕けた口調でいきましょう」

「分かったよフィット。俺のことはクオンと呼んでくれ」


「ではクオン。そろそろお腹も膨れたし、親睦を深めるためにも次の店に行きましょう!」

「次ですか?」


「はい、気に入ってくれますよ」



 連れて行かれたその場所……、そこは楽園だった。


「アハハハ! ほらフィットももっと飲んで! それにムンちゃんもレニちゃんも飲んでじゃって〜〜」


 ここは前世で言うところの大人の楽しい社交場だった。そして俺はこの世界で大人になった。ムンちゃんはとっても暖かくて柔らかかった。


 早朝にフィットと2人で帰る頃、俺たちは親友のように心を解放して笑いながら歩いた。

 

 そして日課の早朝訓練をサボった俺は、鍛える約束をしていたミミにかなり怒られた。ミミには昨夜の出来事は秘密だ。秘密ったら秘密だ。



あと数話で2章も終わります。


今後もUnThikableをよろしくお願いします。

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