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2-5 接敵

「吸血鬼かぁ、ミミはこの魔剣の能力については知っていたか??」


「……、しりません。それにコーメー君のお話を聞く限りだと、墓守として伝えられてきたもの自体に疑問を持ってしまいます…」

 少し落ち込んだ様子をミミは見せる。


「まぁその辺はしょうがないさ。為政者ってのは自分に都合のいいように歴史を改竄して伝えるからな…」

 確か前世でも占領した国の文化を奪う、歴史を消すなんてことは珍しく無かったよな。宗教戦争なんかもその類の話し出しな。


 強いものが残る。

 所詮この世は弱肉強食……、ってやつだな。


「オイラもそう思うよ。別に何が悪いってわけじゃないし、当事者だったオイラが言うのも変だけど」


「そうだな。それにミミの一族は、どんな経緯があったかは知らないけど封印を守ってきたじゃないか。それにハクたちとも上手くやってきていたんだろう?」


「わん!」

 ハクは慰めるようにミミに身体を摺り寄せる。

 

「……。ありがとうございます」


「でも今は吸血鬼だな。何か弱点とかはあるのか? 俺は何も知らないんだが…」

 前世の記憶では、日光を浴びせる、心臓に杭を打つとか、にんにく、十字架なんかあったけどこの世界じゃ通じない気がする。


「オイラが知っている限りじゃ、特に弱点とされるものはないね。ちなみに吸血鬼は全て元は人間だったと言われているよ。ある天才的な魔法使いが、永遠の命を得ようとして作り上げた奇跡の技。【感染する悪意マリファス・トゥ・インフェクト】はそれを簡易的に再現するものさ」


「改めて思うけど、随分と危険な魔道具だな」


「でも、いきなり強力な吸血鬼になるわけじゃないんだよ。あの種族は、血を吸った分だけ強くなる。相手の魔力を血を媒介にして直接取り込めるんだ。だから不死者となってからの時間が長いほど強かったりする」


「ちなみに普通の打撃が効かないとか、霧になって消えるとか、そういう特殊能力はあるのか?」


「いや、基本的には不死者の特性を持っているくらいなハズさ。でも生前の知識を持っているし、知能はそのままだから厄介だよ」


 だったら、血を吸われない事に気をつけるくらいか? 対人戦と考えると、血を吸って強化される前に早めに倒した方が良いな。


「倒すには、魔石を破壊もしくは取り出せばいいんだな?」


「そうだね。それで問題は無いはずだよ」


「よし、だったら俺が吸血鬼とそのなり損ないゾンビを倒して終わりだな。吸血鬼が血を沢山吸う前に倒してしまおう」










     ――――――









 ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 ビシャ! ヒュン! ヒュン! ヒュン!

 

 ヒュン! ヒュン! ドゴッ! ヒュン!


 ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒューーーーーーン ドン!



 俺は、ミミたちを休憩所に残して村の広場まで来ていた。コーメーには実体化を解いてもらい、俺と意識を共有してもらっている。

 【武骨者たち(バンプキンズ)】のブンセンスと一緒に作り上げた武器で、ゾンビを端から薙ぎ倒していった。動きの遅いこいつ等はまさに格好の的だったので無双状態だ。


<それにしても、その武器は何なんだい?>


「名前は考えてなかったな。15メートルの鎖の両端に大小の分銅をつけたもの、としか言いようがないな。前世の鎖分銅をかなり長くしたものだよ」


<じゃあ鎖分銅ってことだね。あ、右のモジュの木から2体出てきた。それに左後方からももう1体来たよ>



 ヒュン! ヒュン! ドゴッ! ヒューーーーーーン ドドン!


 俺は分銅を振り回しながら、遠心力を高めて分銅を投擲した。右手から伸びた鎖は一直線にゾンビの心臓めがけて飛んでいった。ゾンビはかわすことも出来ずに、直撃を受けた。小分銅は先に刃が付いている為、胸を貫通させて大きな穴を開けていた。

 今度は左手で掴んでいた鎖を後ろへと回し投げた。その先には大分銅(鉄球みたいなもの)がついており、勢いよく弧を描くようにしてもう1体のゾンビめがけて頭上からの一撃を加えた。大分銅はゾンビの頭から股までを問答無用で押しつぶした。


 ビュォオオオーー! シュンシュンシュンシュン ブワァァーーー!


 最後に右手を鎖を引いて、小分銅を抜いて後方のゾンビへと巻きつけた。そのまま両手を交差させるように鎖を引き合う。すると大分銅が引き寄せられたゾンビの胸へと吸い込まれていき、その身体をバラバラに吹き飛ばした。

 攻撃した3体は魔石が消失したようで、全員が灰となってその場に舞い落ちた。


「うっし! これで何体目だ?」

<123体目だよ。半分以上は倒せたことになるね>


「そろそろ吸血鬼が出てきてもおかしく無いんじゃないか?」

<知性を持っているやつ等だからね。様子を見てるのかもしれない…>


「だったら、ゾンビを全部屠ってやるか。それでも出てこないんならミミたちと合流だな」

 俺は口を動かしながら、鎖分銅を操って124体目のゾンビを灰にした。




 話し合いの後、さっさと吸血鬼を倒すことにしたので、ミミとハクを休憩所に置いて村へと狩りに来ていた。

 ミミを残していくのに若干の不安を感じていたが、コーメー曰く『ハクが居れば問題は無いよ。魔物のランクで言えばAランク並なんだから』と太鼓判を押すので任せてきた。

 俺は見た目はただの大型犬だったので、疑いの目を向けてしまったが……。巨大化した本来の姿になったのを見せてもらって、考えを改めた。

 

 あれはヤバイ。

 体長は4メートルを軽く超えていた。牙とか俺の腕くらい太いのもあったしな。


 思わず、「モ○だ…」と呟いてしまった。


 でもあの状態のハクを神官たち(・・・・)は倒したんだよな。ハクが言うには奇妙な魔法を使って、身体が動かなくなったって言ってたみたいだけど。コーメーが訳してくれたけどイマイチ不明瞭なんだよな。

 ただ、あんなのを倒せるレベルがネパシーヴァ教にも居ることに少なからず危機感を感じる。メタボ王子と一緒に居たやつは、三下だったみたいだな。ちゃんと戦力を保有している集団だと、ネパシーヴァ教(やつら)の脅威を上方修正することにした。




 そんなことを考えながら、ゾンビを倒す手は止めていなかった。そして172体目を倒した時に、そいつらは現れた。


<……相棒。本命のご登場だ。正面から来るよ>


 俺は鎖を引いて分銅を手元へと戻しながら、正面を睨んで待ち構えた。



「おいおい、俺たちの眷属を殺しまわってくれたのはお前か? この糞ガキ」

「初対面の子供を脅すような言葉は慎みなさい。品格が問われますよ?」


「うるせーな、コリル。吸血鬼になっても小言は健在なのは、どうかと思うぞ? それに品格なんて今更だ」

「吸血鬼だからこそですよ、ブランツ。私たちは美しくある必要があると思います。せっかく守神様が私たちに新たな力を与えてくださったのに…」


「へっ! 血をすすって生きる化物だぜ? 普通の人間から見たら魔物だよ魔物」

「…違いますよ。私たちは人間を超越したんですよ」


「カカカッ! 何をかっこつけてんだか…。それもミールの教えか?? アイツは吸血鬼になって調子に乗ってるだけだろ」

「…ブランツ。ミール様のことを悪く言うと許さんぞ!!!」


「様なんかつけるなよ。アイツは元々村のはみ出しものだった奴じゃねぇか」

「重要なのは今なのよ…」


 ――――――ヒュン! パシュ!


「おい、糞ガキ。こっちは話している最中なんだ。邪魔するな」

「…いやいや。お前から声をかけておいて、そっちが俺を置いて漫才を始めたんだろう」

 俺は小分銅による攻撃をかわされたことに、少なからず動揺してしまった。どうやらゾンビとは強さも知性も別格のようだ。


まんざい(・・・・)? 良く分からんが、俺の餌になるんだ。生意気言ってないで、さっさと血を吸わせろ」

「ブランツ。少し黙っていてください。彼には話を聞かなくちゃいけないんですから」


「……さっさとしろよ」

 ブランツと呼ばれた男は、足元の鎖を踏みつけながら俯いて静かになった。男が黙ったのを確認して、女の方が話しかけてきた。


「では、改めて。まずあなたは何者なの? なぜここにいるの?」


 さて、問題がある。ここで素直にお前たちを倒しに来た。と伝えてもいいものか? あちらからすれば、村人しかいないハズのこの土地ににいる俺は異分子だからな。でも聞きたいこともあるしな。他の吸血鬼のこと、それに『守神様が力を与えてくださった』だって? 何を言っているんだ?? とりあえずとぼけてみるか…。

 というか、こいつらも犬の獣人なんだな。墓守の一族はみんな獣人なんだろうな。というか亜人も吸血鬼になるのか…。


「俺はただの旅人だよ。食料補給のために森に入ったら、いきなりさっきの不死者に襲われたんだ。いい迷惑だ。あんたらの眷属なんだろ? 迷惑料を払えよ」

「それは迷惑をかけましたね。ただ迷惑料と言われても私たちには手持ちが無いんですよ。ここは黙って立ち去っていただけないでしょうか?」


「…おい。俺は殺されそうになったんだぞ。吸血鬼だか何だか知らないが、きちんと誠意をみせろよ。……そう言えば、ミール様ってのがいるんだろう? そいつが責任者ならここに連れてきて土下座させろよ」

「な……」

「カカカカカ! お前面白いな。気に入ったぜ」


 さて、女はプルプル震えているから怒り心頭のご様子だ。男は腹を抱えて笑ってる。鎖も足が離れたみたいだから、手元に引き寄せておく。

 それにしても、ずいぶんと感情豊かなんだな。不死者っていうくらいだから能面みたいな奴らかと思ってたのに。

<【感染する悪意マリファス・トゥ・インフェクト】で吸血鬼になっても、人間だったころと容姿や記憶はほとんど変わらないよ。ただ吸血鬼としての特性を得るのと、主に絶対服従なだけさ>

(だったら生前の知識はもちろん、魔法とかも使えたりするのか?)


<その通り!>

(おい、聞いてなかったぞ。後で殴らせろ)


 コーメーのせいで俺は不機嫌になった。

 うん、情報は大事だろ?


「…そこの女のひと。さっさとミールって吸血鬼をここへ連れてきてくれよ。黙ってないで返事ぐらいしたらどうなんだ? 部下がこんなに無能だと、ミールってのも使えない馬鹿なんだろうな」


「きっさまぁーーー!」

「お? 結局ヤルのかよ。俺も混ぜろや」


 俺の挑発にキレたみたいで吸血鬼が2体、ものすごい勢いで迫ってきた。女は手の爪が伸びた。なんと言うか、人間じゃなくなったんだなっての良く分かるな。男は生前の武器だったのか鉈を振りかぶっている。


 女は爪を突き刺すために真っすぐと腕を突き刺してきた。

 俺はそれをサイドステップでかわしながら、右手で小分銅を投げつけてその腕に巻きつけた。そのまま引き寄せて鎖で拘束しようとする。 

 が、鉈を持った男が俺へと上段から鉈を振りおろしてきた。

 俺は鎖を両手で広げて、鉈を受け止めた。


「ヒャー! このまま鎖ごと叩き切ってやるぜーー」

 男が力を入れるのと同時に、前蹴りを放って吹き飛ばした。距離が空いたので、大分銅を鎖で回転させながら攻撃をすると、右手で引いていた鎖から力が抜けた。


「な!?」


 俺は振り返ると、そこには鎖で拘束された腕を切断した女がこちらへと迫ってくるところだった。


「不死者ならではの抜け出し方だな」

「…死になさい!」

  意表をついたと思っているのか、女はやはり直線的な動きで迫ってくる。

 

「お前がな!」

 俺は遠心力で威力の上がっている大分銅を、カウンター気味に女へと放った。


「―――っぐ!」

 心臓付近を狙って放ったのに、避けようとしたためか、女の残った腕に当たり吹き飛ばすことになった。


「いい様だな女。ミールってやつに助けを求めたらどうだ? 両腕を無くして謝りながら懇願してこいよ」

 俺は鎖を引っ張って、女が自ら切り落とした腕を手に取った。それは冷たくて血も流れ出てこない。まさに死体の腕だった。気味が悪いので、捨てようと思ったが、女に拾われてくっついたりしたら困るので、亜空間にしまった。


<変なのを入れないでよ>

(わりぃわりぃ。相手に奪われてくっついて欲しくないのよ)


 コーメーに怒られてしまったが、ちょっと我慢してもらおう。



「うがぁぁぁああああ」

 どうやら吹っ飛ばした男のほうが復活したみたいだ。再度俺へと鉈を振りかぶって袈裟切りにしようとしてきた。


「馬鹿の一つ覚えだな…」

 俺は亜空間から手斧(トマホーク)を取り出して迎撃しようと構えた。


 ビュォオオーーーー!


 空気を切り裂くように一本の矢が、背後から飛んでくるのを【好都合領域コンビニエント・エリアが感知した。だが、その矢は魔力を宿しているようで、そらすことが出来ずにしゃがんで避けることになった。


「もう一体いたのか?」

 俺は振り返って矢が飛んできた方向へと手斧を投げる。

 その瞬間、茂みの中から飛び出してきたのは片耳が無く、鼻に傷のあるいかつい男だった。さっきの二人は身体能力は驚くべき部分があったが、元々はあまり戦闘に関わっていないものだったのだろう。動きが素人同然だった。

 でもコイツは違う。さっきの矢も魔力を込めて射ってき。身のこなしもそうだが、醸し出す雰囲気が違う。何というか、弓を持っていることも手伝ってか【狩人】といった印象を受ける。


「小僧。お前は何者だ? 今の一撃をかわし、この二人を圧倒するなど、ただの旅人ではないだろう」

「ふん。化物に何と言われてもな……」


「ちっっっくしょー。邪魔しないでくれ、ヴィンターさん。こいつはおれが殺す」

「いいえ、私の獲物よ!腕を返しなさい‼︎」

 鉈男は鉈を振り回して抗議をしている。女も立ち上がってきた。片腕がくっついている。やっぱり修復できるんだ…。 それよりもこのヴィンターってのが加わるのはやばそうだな。まともにやり合うと分が悪そうだ。



「頑丈だな、お前らは。俺のことを知りたかったら吐かせてみろよ。隻腕女!」

「き、きさまは――――――」

 俺の挑発で爆発しそうな女を、手だけでヴィンターと呼ばれた男は制した。


「止めろ。挑発だ。……ではこちらは三人でかからせてもらおう…」


 冷静な奴だ、やりにくいな。俺が3対1の戦闘に備えて、作戦を考えていると…



  ――――――ワァオオオオオオオオォォォォン……



 どこからか、雄たけびが聞こえてきた。


<…この声は!>  

(どうしたコーメー?)


 コーメーの動揺に気を取られていると、三人組に動きがあった。


「ヴィンターさん。戻らないと…」

 今まで威勢の良かった鉈男が身を竦めるようにして声を発した。


「そうだな…。小僧。ここは一旦引かせてもらう。死にたくなければ早々にこの森から離れろ」

 そう言って、俺から逃げるように背を向けた。


「待て、一つ聞かせろ」

「なんだ?」


 俺はなぜこんなことを聞くのだろう…。生前の記憶があるのなら、知り合いかもしれないから…、と思ったからだろうか。いや、俺の勘が変に外れた事は無い。だから、こんな言葉を口にした。


「ミミという少女を知っているか?」

「――――――ッ」


 ヴィンターは目を見開いてこちらを見た。

「なんでアンタがその名前を知ってんのよ?」

 

 女が訝しげな表情で聞いてくるが、無視して言葉をつづけた。


「彼女は生きている」

「…………そうか」


 ヴィンターはただ一言だけ、噛み締めるようにつぶやいた。


「行くぞ…」

 三体の吸血鬼はその場から、走り出していた。



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