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転職したーいって叫んだら、異世界の傾国の王になった件  作者: MOKO773
第一章 王の国へ

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5. 外務大臣は社交好きの令嬢

「おーほほほほ、宜しくってよ。お任せなさい」


王からお茶会に招かれたとある令嬢の声が、静かな王城の庭園に響く。


本日は上位貴族の令嬢を数人集めたお茶会。

初夏の柔らかい陽光の下、王城の庭園には真っ白い薔薇が咲き乱れ、小鳥の鳴き声が聞こえる。

庭園の一角のガゼボの円卓に、アフタヌーンティーが用意され、サンドイッチ、スコーン、ケーキが並ぶ。

若草色と白を基調としてコーディネートされたテーブルを囲う令嬢達。遠目で見ると、たわいないお茶会に見える。


見目麗しい王と着飾った令嬢達との優雅な時間が過ぎるはずだった。


ーーーはずだった。


王は、巻き髪が激しいコテコテの悪役令嬢風少女に、席に着いてすぐ唐突に、挨拶もそこそこに外務大臣を打診する。


彼女の装いは、紅いビロードのワンピースをサテンの黒いリボンで結い、頭には黒いレースのヘッドドレス。

本日のお茶会のドレスコードカラーを無視した服装である。

彼女以外は、王も含めてその指定色である白色の装い。


王の打診に対して即答する悪役令嬢風少女。

一瞬でも考えたのか怪しいほど超早い了承の回答を、甲高い『おーほほほほ』と共に庭園に放つ。

ガゼボを囲う樹々から、小鳥達がばさばさと飛び立つ。

静かに控えていた給仕達の顔が強張る。


ガチャン!

令嬢Aが驚きのあまり、持っていた花柄のティーカップをソーサーの上に落とす。

給仕が駆けつける。


パリン!

水を飲もうとグラスを手にしていた令嬢Bが、テラコッタの床にグラスを落とす。

給仕がこちらにも駆けつける。


カラーン

ケーキをお上品に突いていた令嬢Cの右手から、小さな花の装飾があしらわれた銀のフォークが落ちる。

給仕達は、てんやわんやである。


悪役令嬢風少女以外の令嬢達は呆けている。

言葉を発していいのか分からず、彼女らの目が泳ぐ。

先ほどまでにこやかだった、父を現外務大臣に持つ令嬢Aは、泣きそうな表情で震えている。

部外者である令嬢達は、王と悪役令嬢風少女を交互に見て、とりあえず黙っておこうと決めたらしい。

何事もなかったように、3人の令嬢は各々、アフタヌーンティーのスコーンやケーキをつつく。


外務大臣にスカウトした悪役令嬢風少女は、社交界を裏で牛耳る小さなボスだ。各国に王族の御学友がおり、外交ネットワークは我が国随一。

この国の将来を見据えて、会食大好きな現外務大臣を解任し、外交話術の優れた彼女を起用するつもりである。


「私、国庫を黒字にする切り札を持っていてよ」

バサっと馬鹿でかい扇子を開き、また甲高い声で笑う。

扇子には黒い羽とレースがあしらわれており、真紅の薔薇が刺繍で緻密に描かれている。


「それは頼もしい」


(この子は、王とか関係ない自分の価値観の世界で生きているんだな)

すごくいい、と王は思った。


王は、本日のお茶会の要件が済むと、令嬢達にゆっくりしていって欲しいと挨拶をし、足早に庭園を去った。


ゆっくりできるはずがない令嬢達であった。一人を除いて。

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