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転職したーいって叫んだら、異世界の傾国の王になった件  作者: MOKO773
第一章 王の国へ

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4/12

4. 財務大臣は街の女将さん

「いらっしゃい。いつもの生姜焼き定食でいいかい?」


恰幅のいい肝っ玉母さんみたいな女将さんが、王に気さくに話しかける。


「2つください」


王も女将さんに笑顔で答える。


悪政で殺伐とした街の中でも、この定食屋だけは明るく温かい雰囲気。


王は市場の行きつけの定食屋に、今日はお忍びで来ている。転生を自覚した後でも、過去の記憶を体が覚えており、街を視察中に無意識にふらりと入ってしまった。


王族お抱えの魔法使いに金髪を茶色に変えてもらったので、誰も王に気が付かない。


(ちょうど良いタイミングで来ることができた。財務大臣候補と話そう)


それほど広くないこぢんまりとした定食屋は、昼どきを過ぎても満席で賑わう。

王は窓際の4人席に、側近のサクラと向かい合って座る。注文からそれほど経たずに、食欲をそそる生姜焼き定食が運ばれてきた。


「おばちゃーん、なんか今日、魚定食、いつもより高くない?」

作業着姿の労働者の声が店内に響く。

「ごめんね。うちは時価だから、定食料金が変動するんだよ」

そうかそうかと納得して、皆、各々の定食を食べる。

「あとね、今年は小麦が不作だから、パスタやパンがこれから値上がりするよ。米は暴落したけど、またきっと秋には戻るね」


(さすが女将さん、市場の動向は何でも把握している)


王は、お上品に生姜焼き定食を食べながら、感心する。

口数の少ない側近のサクラは、さすが元騎士だけあって、食べっぷりがいい。無言でもりもりと、肉と野菜をバランス良く食べ進める。

お代わり自由である二杯目の大盛りご飯を、女将さんがサクラに持ってくる。

王が女将さんへ話しかける。

「女将さん、副業興味ない?」

「副業かい?そろそろこの定食屋も息子夫婦に引き継ぐからねえ」

女将さん、脚をさする。膝が痛いらしい。

「引退後は、何かするの?」

「なーんにも。口と頭だけは元気だから、何かやりたいけれどね」

ちゃめっ気たっぷりに笑う女将さんは、街でも人望が厚く、何より現場を分かっている。

庶民の感覚を持った財務大臣が欲しい。貴族ではなく、平民から採用したい。

「おい兄ちゃん、女将さんは優秀だし人気者だから、雇うなら高いぞお」

「そうだ、そうだ」

職人のおじさん達が、王を揶揄う。

王、考える。どうしたら、女将さんが財務大臣を引き受けてくれるか。

回りくどく言っても仕方がないと思い、食堂の女将さんの目を真っ直ぐ捉えて丁寧に言う。


「女将さん、財務大臣をぜひやって頂けないでしょうか。給料は言い値で」


定食屋が静まり返る。次の瞬間、どっと笑いが起こる。

「兄ちゃん、冗談のスケールが大きすぎるよーー」

「そうだ。そうだ」

「財務大臣になれだなんて、王様以外、言っちゃいけないよーはははは」


(ここに居るんだが。王が)

側近のサクラが、水々しいシャキッとした線切りキャベツを、むしゃむしゃ食べながら、心の中で思う。

食べ続けながら、目だけで王と女将さんを交互に見る。


にこやかだった女将さんだけが、真剣な顔で考えている。


女将さん、お忍びが王だと分かっていたようだ。


「できるか分からないけれど、やってみようかね」

白いエプロンを巻いた腰に手を当てて、胸を張る女将さん。

腐敗した王政の立て直しと、破綻した財政、重税により頂点に達しつつある民の不満への対応が急務である。


さて、次は次期外務大臣のスカウトのため、アフタヌーンティーの茶会を開こう。

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