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第5話 観察対象
研究室の扉が開き、久慈真理子が入ってきた。
腕を組み、少しばかり面倒そうな顔。
「……また呼び出し? 心拍とか発汗とか、いつもの基礎データを取りたいんでしょう。
正直、もう充分だと思うけど――深雪の頼みだから仕方ないわ」
私は口元に淡い笑みを浮かべた。
「ありがたいわ。主任医師ともあろう人に協力してもらえるなんて」
久慈は苦笑を返し、台の上に腰を下ろす。
――本来なら主任である自分が指示する立場。
なのに深雪の瞳を見つめると、抗う気持ちは次第に薄れていく。
嫉妬もある、苛立ちもある。けれど、彼女に頼まれると断れない――。
カチリ、と拘束具の金具が閉じる音が響いた。
その瞬間、久慈は自分の体が“診察の対象”から、
いつの間にか“観察される対象”へと変わっていることに気づき始めていた。




