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女医乃深雪の記録ー快楽の追及ー日常侵食編  作者: 女医乃深雪


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第41話 篠原美沙子の帰宅


玄関の鍵を外し、静かに扉を閉めた。 篠原は無言のままスーツジャケットを脱ぎ、椅子に掛ける。肩から重みが外れた瞬間、委員長として背負っていた緊張がわずかに和らぎ、代わりに空虚さが胸に広がった。


ブラウスのボタンを外し、スカートを下ろす。 脱ぎ捨てたパンツを手に取ったとき、思いがけない湿りに気づいて指が止まる。 小さく息を呑み、視線を伏せた。 (……これは、さっきの……?) 言い訳できない熱が、自分の身体に確かに残っていた。


姿見に映る自分を見て、さらに息を詰める。 胸元にはセンサーを押し当てられた薄い痕が残り、膝下には拘束ベルトが当たっていた赤い跡がまだ消えていない。 どちらも、委員長ではなく「ただの被験者」として台座に横たわった事実を刻んでいた。


そのまま浴室へ入り、熱い湯を浴びる。 指先が無意識に胸元をなぞり、膝下の赤みを確かめる。 (研究者なら“記録”と呼べる。だが、委員長としては……報告できない) 湯の下で目を閉じた篠原の胸に、研究者としての未練と、女としての揺らぎが入り混じっていった。


シャワーを終えた篠原は、髪をざっと乾かし、シンプルなルームウェアに身を包んだ。 リビングの灯りを落とし、ソファに腰を下ろす。 グラスに注いだ琥珀色の液体をゆっくり口に運ぶと、舌の上に広がる苦みがわずかに落ち着きをもたらした。


だが、瞼を閉じれば――胸元のセンサーの冷たさ、膝下のベルトの締め付けが蘇る。 「……臨床のため。ただの簡易計測。それだけ」 低く声に出してみる。けれど、濡れたパンツの感触が思考を否定していた。


(私は……委員長。制度を守る盾でなければならない。けれど、あの数値を見た瞬間に――研究者としての自分が、顔を出した)


篠原はグラスを机に置き、ソファに身を沈めた。 (……揺らいだのは、装置のせいか、深雪の視線か。それとも――私自身の渇きか)


篠原はソファに沈んだまま、端末を手に取った。 報告書の下書きフォルダを開く。 「……公式には十二件。それで十分」 指先で文字を打ちながら、思考の隅で先ほど見せられた波形がよみがえる。 赤く跳ね上がった曲線――久慈のデータ。


(あの数値は危険。委員会に出せば研究ごと潰れる。……でも、見た以上は、忘れられない)


画面を閉じ、深く息を吐いた。 グラスの底に残った琥珀色を飲み干し、独りごちる。 「……私は、どこまで委員長でいられるのかしら」



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