↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女医乃深雪の記録ー快楽の追及ー日常侵食編  作者: 女医乃深雪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/146

第2話 観察記録

深雪はカンファレンスを終え、個室に戻る。

紙コップのコーヒーをひと口。苦味が喉を落ちるより早く、内線が鳴った。


「……また、あの人か」


主任医師――久慈真理子(三十六歳)。

純日本風の顔立ちに、鋭い切れ長の目。

学生時代は陸上をやっていたらしく、その影は今も所作の端々に残っている。


院内では、私と彼女を「奇跡のツートップ」と呼ぶ者もいる。

対照的でありながら並び立つ姿が、そう見えるのだろう。

けれど、互いの内心はまったく異なる。


あの人は、私をよく使う。嫉妬も苛立ちも隠さないくせに、表向きは協力的だ。

私が昇進の話を断り、椅子を譲ったことを、彼女は知っている。

メスを握って研究に没頭できればそれで良い。

地位なんて、研究の妨げにしかならないのだから。


だから彼女も安心して上に座り続けられるし、私も自由でいられる。

互いに利用し合う――それで十分だ。


――観察記録。

主任医師、久慈真理子(三十六歳)。既往歴に特記すべき事項なし。

全身の筋肉量は均整が取れ、特に大腿四頭筋から臀部にかけての発達が顕著。

乳腺組織は年齢相応以上の張力を保持し、下垂はほとんど見られない。

皮膚は白く滑らかで、毛細血管の浮き立ちがわずかに観察される。


入浴後の身体を目にしたとき、蒸気に濡れた皮膚は光を受け、汗と皮脂が艶を増していた。

三十代後半特有の脂質の匂い――それは衰えではなく、むしろ肉体の熟成を示す徴候。

完璧に整えられた骨格の上に、女性器官としての機能美と、成熟した女の濃厚さが同居していた。


……scalpel――メスを入れたい衝動が、一瞬かすめた。

思わず震えかけた手を、私は静かに収める。


(痛みを取り除く術は知っている。けれど快楽を扱う術は、どこにも存在しない。

その応答を見届ける機会が、いつか訪れるのなら――)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。