↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女医乃深雪の記録ー快楽の追及ー日常侵食編  作者: 女医乃深雪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/147

第20話 約束の余韻


病院のカフェテリア。 白衣姿の久慈は紙コップのコーヒーを揺らしながら、深雪の席に腰を下ろした。 「新しいMRI、調整が難しいって皆言ってるわね」 「ええ、研修医も手こずってました」深雪が淡く笑う。 ほんの数分、ふたりはただの同僚医師に戻ったかのようだった。


だが、コーヒーを口に運ぶ深雪の横顔を見た瞬間、久慈の胸にわずかな違和感が走る。 ――どこか、冷たくなった? 問いを飲み込むように視線を逸らす。


深雪はカップを置き、主任をまっすぐ見つめた。 「……主任。近いうちにまた、ご協力をお願いすることになるかもしれません」 「ご協力?」久慈の眉がわずかに動く。 「外科の大きな症例が片づいたら、改めてこちらから」 声は柔らかいが、含むものは重い。 久慈は笑みを保ったまま、指先が一瞬止まった。 「……そう。分かったわ」 短い沈黙が二人の間に流れた。


その夜、久慈宅。 ワイングラスを手に、一日の疲れを解きほぐす。 赤い液が揺れるたびに、昼間の深雪の眼差しが蘇る。


視線を逸らすと、テーブルの隅には読みかけの医学書とカルテが置かれたまま。 「結局、家に戻っても医者のままなのね」 小さく苦笑し、グラスを唇に運ぶ。


その瞬間、首筋がわずかに締め付けられる錯覚が走った。 冷たい拘束具が皮膚に食い込んだ感覚――前回の記憶が脳裏をかすめる。 指が一瞬震え、「……違うわ、思い出す必要なんて」と声に出して否定する。 だが呼吸は浅くなり、頬の紅潮も隠せない。


鏡に映る自分の首筋に、まだ消えきらぬ痕を見つける。 「約束は……まだ果たされていない」 低く呟き、グラスの底を見つめた。 ワインの赤が揺れ、深雪の冷ややかな視線と重なるように滲んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。