第11話 研究記録と静かな余韻
拘束を解かれた久慈は、ゆっくりと解剖台から降りた。
汗に濡れた患者着を押さえながらロッカーへ向かう。
布には赤みを帯びた皮膚の跡が残り、拘束の痕跡を示していた。
白衣に袖を通し、髪をまとめ直す。
主任医師の冷静な顔へ戻ろうとしていたが、頬の紅潮は完全には消えない。
「……こんな研究に付き合うのは、これで最後にするわ」
久慈はそう言って視線を伏せた。
深雪は端末を閉じ、わずかに上目遣いで見上げる。
「そういえば主任……お願いされていた学会レポート、完成しそうです」
久慈の肩がわずかに揺れる。
「……ああ、そうだったわね」
「次の研究もご協力いただければ――さらに質の高いものになりますよ」
淡々と告げる深雪の声に、短い沈黙が落ちた。
久慈はわずかに息を吐き、目を逸らす。
「……わかったわ」
白衣の裾を整えた久慈は、ドアの前で一度だけ振り返る。
深雪と短く視線を交わし、何も言わずに扉を開けた。
閉じる音が響き、研究室には冷却装置の低い唸りだけが残った。
――研究記録 No.011
被験体:久慈真理子(三十六歳)
実験内容:拘束下における性感応答測定
拘束具装着時点で皮膚電位上昇。緊張反応と同時に性感波形が一致。
乳頭部:吸着刺激により閾値低下。
膣前壁:蠕動型プローブで粘膜圧上昇。
下半身拘束:快楽閾値の増幅作用を確認。
呼吸数:20 → 52
心拍数:110 → 198
発汗量:平均値の2.7倍
筋電図:3.4秒周期の痙攣反応
備考:拘束は単なる固定ではなく「性感増幅装置」として作用。
羞恥を否定する発言に反して、反応は一貫して快楽優位。




