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第12話 寄生の幻影
深雪はマンションに戻ると白衣を脱ぎ、ワインを注いでソファに沈んだ。
静かな部屋でテレビをつけると、古びたB級ホラーが始まる。安っぽい触手が女優の顔に絡みつき、脳へ侵入していった。
「前頭葉に入ったなら、実行機能は奪える」
苦笑混じりに呟く。だが映像は奇妙に的を射ていた。肩から這う動きは神経叢を押さえ、背骨を伝う寄生虫は呼吸筋に届く経路をなぞっている。
「側坐核を刺激すれば、羞恥が快楽へ転じる回路……」
心拍一九八の数値が脳裏に浮かび、白衣を直す久慈の震える指と重なった。ペンを走らせながら、わずかに笑みが零れる。
次の場面では、視床下部に触手が伸びる。安直なCG、だが生理反応の描写だけは現実に近い。
「現実に届かせるのは技術的に難しい……まあ、だからこそ面白い」
グラスを置き、皮肉を含んだ声が漏れた。
テレビの中の虚構は安っぽい悲鳴で終わる。だが深雪のノートには、新たな研究計画の断片が刻まれていた。
――次は、もっと確かめられる。
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