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女医乃深雪の記録ー快楽の追及ー日常侵食編  作者: 女医乃深雪


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第124話 空圧の幻影と、抗えぬ肉体

「……っ、ふぅ……」

 特別研究室を後にした久慈は、人気の途絶えた夜の廊下を、ヒールの音を極力殺しながら歩いていた。

 深雪によって首筋のパッチはすでに剥がされているというのに、脊髄から下半身の奥深くに向け、あの「ツーン」という微かな疼きが未だに波打つように走り続けている。

 身体の芯に巣食った熱は一向に収まらず、一歩足を踏み出すたびに、過敏になりきった股間が下着に擦れてビクッと腰が震えた。

(とにかく、早く拭き取らないと……)

 誰かとすれ違えば、一目で異常な状態だとバレてしまう。久慈は助教授としての矜持で不自然な歩き方を必死に抑え込みながら、最も人目に付かない奥の女子トイレへと身を滑り込ませた。

 個室に入り、鍵をかけるなり便座に腰を下ろす。

 荒くなる呼吸を整えながらストッキングごと下着を下ろすと、そこには久慈の理性すら揺るがす惨状が広がっていた。

 クロッチ部分は、じっとりという言葉では生ぬるいほど、自身の溢れ出した愛液でぐっしょりと重く濡れそぼっていたのだ。

(……冗談でしょう。私、ただ椅子に座って、拘束テストを受けていただけなのに)

 信じがたい現実に愕然としながらも、久慈はトイレットペーパーを巻き取る。

 ただ、不快な濡れを早く清拭したかった。熱を持った身体をどうこうしようなどという意図は、毛頭ない。あくまで事務的な対処として、ペーパーを押し当てた――その瞬間だった。

「――っっ!?」

 ペーパー越しに、彼女の最も敏感な弱点である陰核に微かに触れた途端。

 ビィンッ! と、脳髄を真っ白に染め上げるような鋭い痺れが走り、久慈の身体は弾かれたように便座の上で大きく跳ねた。

「ん、っ……ぁ……っ」

 咄嗟に口元を覆い、喉の奥から漏れそうになった甘い嬌声を必死に呑み込む。ガクガクと両膝が震え、ペーパーを持った手が無力にだらりと落ちた。

 ほんのわずかに擦れただけだ。それなのに、信じられないほどの強烈な快感が全身を貫き、視界がチカチカと明滅している。

(なんで……どうしてこんなに濡れたの? ただの空圧パッドよ。直接的な刺激なんて一切なかった。それなのに……)

 原因を突き詰めようと思考を深めるほどに、久慈の脳裏には以前のデータ取りでの記憶が鮮明にフラッシュバックしていた。

『――少し波形が乱れているようですが』

『い、いや……っ、違うわ……少し、緊張して……』

 深雪に波形の乱れを指摘され、機材への緊張だと体よく誤魔化したあの時。久慈はすでに、自身の奥底でうごめく微かな熱をうっすらと自覚し始めていたのだ。

 そして今日の、『スマート空圧式処置チェア』による絶対的な拘束。

 骨盤から太ももにかけてをみっちりとガードされ、無防備に足を大きく開かれた状態。恥ずかしさから本能的に足を閉じようと力を込めても、その必死の抵抗はすべて特殊ポリウレタンの空圧パッドにフワッと分散・吸収され、ピクリとも身体を動かすことができなかった。

(あの時……私の力は完全に無効化された。私は、誰かの命令や威圧に屈したわけじゃない。ただ、圧倒的な機械の力によって、自身の肉体が完全に縫い留められたという『圧倒的な不自由』そのものに……理屈を超えた熱を感じていたんだわ)

 それは誰かに支配される悦びではない。ピクリとも動かせないという物理的な拘束状態に対する、甘美な陶酔。

 自分がだらしなく濡れてしまった真の理由――自らの奥底に隠されていた特異な嗜好の正体を悟り、久慈の背筋をゾクゾクとするような快感が駆け上がる。

「あっ……ふぁ……っ」

 便座にへたり込んだまま、その絶対的な拘束感をリアルに回顧したことで、脊髄に残る毒の余韻が一気に燃え上がった。

 自身の抵抗がすべて物理的に吸収され、完全に封じ込められることへの倒錯した悦楽。その深淵を覗き込んでしまった脳は、もはや恐怖や戸惑いではなく、自らの本性がもたらす甘い気付きにどっぷりと沈み込んでいく。

 そこにはもはや、助教授としての真っ当な理性が入り込む余地など残されてはいなかった。

 強烈な真実を突きつけられて完全にショートした思考のまま、彼女はただ、抗いがたい『思考酔い』の波に無抵抗に呑み込まれていく。

 やがて――漏れ出そうになる嬌声を塞ぐように左手で自らの口を強く押さえつけ、空いた右手は、導かれるように真っ直ぐ、最も敏感に疼き続ける熱の源へと伸びていった。

 静まり返った夜の院内。冷たく無機質なトイレの個室には、自らの内に潜むフェティシズムに酔いしれ、深く堕ちていく女の甘く湿った吐息だけが、誰に知られることもなく微かに響き続けた。

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