第9話 下半身への拘束
「……では、久慈主任。改めて確認します。今回のデータ収集にあたり、下半身への拘束も容認していただいてよろしいですね?」
白衣の裾を整えながら、私は低く問いかけた。
返答を待つまでもなく、久慈の両脚には既に拘束具がかけられている。
淡い青色の患者着が開かれ、大腿から下腹部にかけて露わにされた姿は、医学的には「被験体の準備完了」に過ぎない。だがその生々しい光景は、どうしても観察者の神経を昂らせる。
「……ちょっと、きつすぎない?」
苦笑を混じらせた久慈の声。表情にはまだ余裕が残っている。
彼女にとっては“実験”の延長にすぎないという意識なのだろう。
「一般的な治験の範囲内です。もちろんご協力はお願い致しますよ」
私が静かに言葉を返すと、久慈は肩をすくめた。
「そうよね……わかったわ」
その瞬間、拘束具が金属音を立てて締まり、下半身の動きは完全に封じられる。
太腿から膝にかけての筋肉はわずかに緊張していたが、それすらもベルトに押さえ込まれていく。
わずかに覗く皮膚は白く滑らかで、冷たい照明にさらされ、研究室の空気を際立たせた。
私は記録用のペンを走らせる。
――拘束状態、被験体の反応に顕著な変化なし。
心拍数・呼吸とも安定。皮膚電位に微弱な上昇がみられるが、これは緊張による正常範囲内。
「では……始めましょうか」
観察対象の身体を、私は冷静に見据えた。




