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有志達の勇気

 景吾の案に興味を持った有志達は自分達の街や村で主だった面々を集めて優良企業を誘致すべきかどうか話し合った。変化を面倒臭がり余所者に対して反射的に反発する者が少なくなかった。一方、町村の破綻を恐れて案を受け入れる者もいた。


 景吾と連絡を取っていた富裕層達は有志達と直接連絡を取り合うようになっていた。この冬の農閑期、温暖化とはいえ雪は相変わらず降っていた。富裕層達の何人かは秋田に足を運んだ。


 景吾の職場の有る地域では引退を本気で考えている八十代の農家が少なくない。町工場でも引退間際の高齢者が多い。外から来た有志達は現地の有志達の聞き取りを行なった。


 地元では単に情報技術を学ぶのではなく、先祖伝来の農地をどうすべきか、このまま工場や会社を閉鎖するのか切羽詰まっていた。後継者が来るとは想定できないし、来たとしても受け入れる余裕がない。自分達がどんなに頑張っても今後十年も耐えられない。


 聞き取りをした有志達はいくらか提案した。今までの技術や知識を若手に気前良く教える。その若手を都市部から来てもらう。インフレの中、長時間労働でも所得が上がらない若手は都市部でくすぶっている。大家から許可をもらって使わなくなった民家を修繕して貸す。


 二十代三十代に期待するだけではなく還暦前の世代にも期待する。様々な世代が試行錯誤しながら共同体を作り直していく。地元で譲れない文化や信仰をなるべく言語化して移住希望者に理解してもらう。


 自分達は何が出来て何をしたいのか。有志達は侃々諤々と話し合った。特に地元の有志達は自分達の希望や苦悩を言語化するのに苦労した。近所や親戚への遠慮も有るし矜持や自尊心も有る。正直な感情の吐露は勇気が要る。外から来た有志達は傾聴しながら質問していく。


 SNSの使い方やサイトの作り方を教わり、地元の有志達は都会でくすぶっている若手に刺激を与えてみた。興味を持ってもらえるような条件や文言を慎重に考えて書く。


 時折、地方議会議員や役所が違反がないか問題がないか視察に来る。


 春が来た。景吾の故郷でも景吾の呼びかけで青山夫婦が移住してきた。夫の博士ひろしは情報技術分野で活躍し、更に株式投資で巨万の富を築いた。妻の由美ゆみは精神科医だ。景吾の母親の運営する虹の雪にも何度か直接、足を運んでいる。


 虹の雪の利用者達は青山夫婦を最初は警戒していたが、博士が温和で由美が柔軟に接していたので次第に慣れていった。景吾の父親は挨拶に来た夫婦を快く受け入れたが、直接的な支援はしなかった。景吾の母親は自分達の町を変える青山夫婦を不安に思いながらも町の人達との間を取り持っていた。


 他の町村にも富裕層の有志達何人かが五つの市町村に移住してきた。景吾は余計な口出しをせず、仕事の傍らで横目で見守っていた。

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