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勇者を探して3【レベルアップ】

 今日は、朝から情報収集を開始した。ノピノプとサラは、役に立たないので、俺とニコムリンがメインになって町中を歩き回る。

 ひとまず聞く事は二つだけ。近くの町や村の場所。あとは駄目元で、勇者の情報だ。

 手当たり次第に、町中のオッサン・オバハン・ガキ・野郎・お姉様に話を聞いて回るが、結局勇者に関する情報については、全く掴めなかった。

 この町を出ると、次の町まではかなりあるらしい。歩いて行くとなると、最低でも五日はかかるそうだ。

 そう言われてみれば、この町には、それなりに強そうなヤツらが、ごろごろいやがる。少し納得できたような気がした。


 宿屋の前に戻ると、ノピノプが無邪気に石の下にいるダンゴムシを、せっせと袋に入れている。

「ノピノプ! それ大事な道具袋!」

 慌てて取りに行こうとすると、サラが立ちはだかり、話し掛けてきた。

「ちょっとパパパ。情報収集の結果、どうだったのよ」

「ちょっと待ってくれ。先にあの袋を……」

「袋なんて後回しでいいわ! あなた達、私達が頼りないからって、二人で出掛けたのよね! それなのに、帰ってきたと思ったら、報告も無しに袋の心配? リーダーする気があるんだったら、もう少しリーダーとしての責任感持ちなさいよね!」

 そんなサラの言葉を聞いている間にも、ノピノプはせっせせっせと、ダンゴムシを入れ続けている。気が付くと、「面白いか?」とニコムリンも参加しているではないか。

「サラ。報告は、ちゃんとする! だから、ちょっと先に袋を……」

 サラをすり抜けようとした俺だったが、「だから袋は後!」と耳を引っ張られ、元の位置に戻された。

『こうなったら、さっさと報告して、袋を取り戻さなければ……』

「わかった。報告するよ。まずは勇者だけど、やっぱ、いきなり初めの町で情報が掴める程、甘くねぇわ。で、次の町は、歩いて最低でも五日はかかるんだと。それなりに強くなるまでは、この町から離れられねぇな。って、これでいいだろ!」

 早口で報告を済ませると、袋奪還へ急ぐ。

「ちょっと、待ちなさいよ」

 また、止められた。もう報告は、済ませたのに。

「そうなんだ。次の町まで、五日もかかるんだ。じゃあ、勇者探しは、しばらくおあずけね。……でね、私達も少し情報収集をして、有益な情報を掴んだの。聞きたい?」

『これは嫌がらせだ。ただの嫌がらせだ。俺を袋から遠ざける、ただの嫌がらせだ。ここで嫌がったり、拒否をしたところで、捕まって「聞きなさい!」とか、言われるんだ。だったら、初めっから聞いといた方が無難だな』

 頭の中で素早い計算をし、諦め半分で軽く頷いた。

「よかったぁ。要らないとか、言われたらどうしようかと思ってたんだ」

『よく言うぜ』

「それじゃあ、本当に凄い情報だからびっくりしないでね」

『おいおい。ニコムリン、そのダンゴムシをどうすんだよ……』

「魔王の城なんだけど……」

『どうして、こっちに持ってくんだよ!』

「この町の裏山にあるんだって……」

『それをどうするつもりだぁ!』

「もうさ、勇者探さずに、私達で魔王倒しちゃおうか?」

『なるほど! よっしゃ! やってまえ!』

「どう思う?」

『今だ! そこだ!』

「ねぇってば、どう思うの!?」

「行けぇぇぇぇ!!」

「キャア! びっくりした。どうしたの? 突然、大きな声出して……。って何してるのよ、アンタ。ノピノプの相手でも、してなさいよね」

 サラの襟元に、ダンゴムシを入れようとしていたニコムリンだったが、呆気なくサラに発見され、ノピノプのもとへ突き返された。

「あれ?」

「あれ? じゃないわよ! それじゃあ、行くのね。じゃあLv.Upしないといけないわね……」

 一人で盛り上がるサラを見ながら、『何処に行くんだ?』と思ったが、『袋! 道具袋!!』と頭に浮かぶと、一目散にノピノプのもとへと走り込んだ。

「もうそれ以上、ダンゴムシ入れんじゃねぇよ!!」


「ちょっと待ちやがれ! そんな事決めたヤツは、どいつだよ!」

 ニコムリンに怒鳴られたサラは、すぐさま俺を指差した。

「え? 俺? いつ決めた? そんなこと……」

「言ったじゃない! 「行けぇぇぇぇ!!」って。それとも、何!? あれは違うとか、言うんじゃないわよね!?」

 全く覚えはなかったが、ここで「そんなの知らねぇよ!」なんて言おうものなら、後々どうなることかわかったものじゃない。

「よく考えろ。何処にいるかもわからない、勇者を探して旅をする事を考えれば、すぐ近くにいる魔王を、ここでぶっ飛ばした方が、断然楽じゃねぇか!?」

「でもよパパパ。このパーティー、戦闘員が、悪ガキとパシリで、非戦闘員が戦士とWMマスターなんだぜ。勝てると思うのかよ!?」

「だから、Lv.Upしてだな……」

「土下座が上手くなったり、力が上がった気になるだけの、Lv.Upでかよ!」

 確かにそれも一理ある。蝸牛一匹に長時間かけて、戦う悪ガキとパシリ。傍観する戦士とWMマスター。魔王との決戦で、雌雄を決するのがどちらかなんて、一目瞭然だ。

「しかしよぉ……。俺も覚えてねぇんだけど、やるって言っちまったもんを、撤回できねぇだろ?」

 ニコムリンの傍に近寄ると、チラチラ、サラを確認しながら、小声で耳打ちする。

「でも、このままじゃ、確実に俺達死ぬぜ」

「もしかしたら、もう少ししたら、グンッと強くなるかもしんねぇじゃん」

「それを言ったら、ずぅっとチンケなLv.Upしか、しねぇかもしんねぇじゃん」

「それを言ったら、身も蓋も無いじゃん」

「でも、本当の事だろ」

 コソコソと話をしている俺達を見て、サラがゆっくりと近付いてきた。

「って訳だよ、ニコムリン。これから、頑張ろうじゃないか」

「わかったよ、パパパ。じゃあ、頑張ってLv.Upしないといけないな」

「「ハハハハハハ……ハァ」」

 笑いは乾いていたが、サラに気付かれずに、済んだようだった。

「じゃあLv.Upに生きましょうか!? 二人とも! 頑張んなさいよ!!」

『おいおい……。テメェは、はじめっから、戦わない気、満々かよ……』


 町中で、Lv.Upする事は不可能なので、とりあえず町の外に出る。その途端、サラがとんでもない事を言い出した。

「手っ取り早くLv.Upする為には、チマチマ倒すよりも、まとめて倒した方が早そうね。よし! モンスターの群れを探すのよ!」

『テメェ、戦いもしねぇくせに……』

 と思ったが、愚痴を言っても始まらないので、出来れば一匹ずつがいいと思いながら、モンスターを探して歩いた。

「うわぁ。ぶにょぶにょが、ついてくるよぉ」

 見渡す限りの平原には、モンスターどころか、冒険者すらも見当たらない。

「ぶにょぶにょ。殖えていくよぉ」

「もう少し、進んでみるか?」

 モンスターを探して、平原を歩くと、こんなに平和なら、次の町まで行けるのでは? と思えてくる。

「ぶにょぶにょいっぱい、気持ち悪いよぉ!」

 ノピノプが、なんだかうるさい。こんな時は、たいてい良いことがないのだ。振り返り確認すると、俺達の前方には、全く姿を見せなかったモンスターが、徒党を組んで、俺達に近付きつつあった。

「おいサラ! あの気持ちの悪いの、何ていうモンス……」

「…………」

 咄嗟にサラへ確認しようと、話し掛けたが、サラは聞いた事もない言葉をブツブツと呟きながら、鉄の杖を、空へと掲げていた。

 もう一度、モンスターの方へ目を向けると、「ぶにょぶにょ気持ち悪い!! あっち行け! いなくなれ!!」と、ノピノプがモンスターを一刀両断に、ぶち殺している。

『おいおい、どうなってんだよ?』

 と、ニコムリンを見ると、呆気にとられ、間抜け顔でノピノプを眺めていた。

「ノピノプ、危ないからどいて!!」

 サラは、そう叫ぶと同時に、「悪しき者よ、紅蓮の業火で消滅せよ! 《炎の渦》!!」と叫ぶと、モンスターの方へ杖の先端を向ける。

 それと同時に、地面から無数の火の竜巻が出てきたかと思うと、ぶにょぶにょモンスター達を、一匹残らず消し炭へと変えていった。

「ぉぉぉおお! スゲェ! スゲェなお前ら!!」

 俺がサラに声をかけた瞬間、「ぶにょぶにょやっつけたよ! 凄いでしょ! ニコムリン凄いでしょ!」と、声が聞こえ、ノピノプとニコムリンが、手を繋いで跳びはねていた。

「なぁサラ、今のモンスターは、何ていうモンスターなんだ?」

「パパパ、あれも知らないの? あれは、ジェリースラームっていう、原始モンスターよ」

 俺を小馬鹿にしたように見ると、「ちょっとは、勉強しなさいよね」と付け足した。

 ポンポンピリリン。ポンププリンと、Lv.Upカウンターが、奇妙な音を出し始めた。

「Lv.Upだ!」

 慌てて、カウンターを取り出す。

(【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【5】になった。パシリが使えるようになった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【6】になった。攻撃力が5上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【7】になった。防御力が10上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【8】になった。速さが15上がった)

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【6】になった。土下座が更に上手くなった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【7】になった。相手の顔色を見る事を覚えた。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【8】になった。速さが20上がった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【9】になった。水鉄砲の所持を許された。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【10】になった。媚びへつらうを習得した)

(【ノピノプ・ボポン・アイヤーン】は、Lv.が【3】になった。攻撃力が12、防御力が10、魔法防御力が7、生命力が20上がった。【ノピノプ・ボポン・アイヤーン】は、Lv.が【4】になった。攻撃力が10、防御力が5、速さが5、生命力が30上がった)

(【サラ・デ・リーリア】は、Lv.が【3】になった。攻撃力が15、防御力が10、速さが5、魔法攻撃力が10、魔法防御力が8、生命力が22、魔法力が34上がった)

 カウンターが全てを言い放った瞬間、ぶちギレたのは、ニコムリン一人だった。俺は、少しだけでも、能力が上がったので、キレるには到らなかった。


☆パパパ:悪ガキLv.8【攻撃力15 防御力15 速さ20 魔法攻撃力15 魔法防御力15 生命力65 魔法力0】


☆ニコムリン:パシリLv.10【攻撃力9 防御力3 速さ30 魔法攻撃力0 魔法防御力0 生命力50 魔法力0】


☆ノピノプ:戦士Lv.4【攻撃力54 防御力41 速さ16 魔法攻撃力0 魔法防御力27 生命力165 魔法力0】


☆サラ:WMマスターLv.3【攻撃力83 防御力61 速さ42 魔法攻撃力85 魔法防御力63 生命力392 魔法力184】


「さぁて、どんどんLv.Upしていこうじゃねぇか! ジェリースラーム、また来いよ! テメェらだったら、サラもノピノプも、大戦力だ!!」

「ちょっと待てぇ! コラァ!! 土下座が更に上手くなったり、水鉄砲を持てたり、媚びへつらったり出来るだけの俺は、どーすんだよ!! バーロォ!!」




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