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勇者を探して4【レベルアップ、そしてレベルアップ】

 ジェリースラームを倒して調子に乗った俺は、虫でも動物系でもないモンスターを探し求めていた。

 平原を360度見渡し、動物系や虫系のモンスターを発見すると、戦闘区域から離脱する。そんな事を繰り返しながら、しばらく歩き続けていると、平原を抜け、林へとたどり着いた。

「おいパパパ。どこまで行くんだよ!」

 歩き回るだけに、不信感を覚えたのか、ニコムリンがイライラしている。

「ちょっと耳を貸せ」

「何だよ」

「アイツら二人が、戦えば強ぇ。でも、動物系や虫系は、可哀相だの嫌いだので、戦いやがらねぇ」

「だから何だよ!?」

「だから、動物系や虫系以外のモンスターなら、俺達ゃ、楽してLv.Up出来んじゃねぇか」

「ほう。なるほどなるほど。パパパ、ずるいな」

「頭が良いと、言ってくれよ」

 そんな事を話ながら、林の木にもたれ掛かった。

「パパパ駄目! 早くそいつから離れて!!」

 サラの声が聞こえた瞬間、俺達の周りの木が突然動き出した。

「ツリーウォーカーか!」

 咄嗟に、ツリーウォーカーの幹を鉄の棒で殴り付けると、辺りを見渡した。

「パパパ! 俺達、囲まれてんじゃねぇ!?」

 ニコムリンのペーパーナイフが、珍しく役に立つようで、ツリーウォーカーの幹を剥ぎ取っている。

「よし! これなら俺達で!!」

 構えに入ろうとした瞬間、周りのツリーウォーカー達が、一斉に燃え上がる。そこへ、まるで手慣れたきこりかのように、ノピノプが飛び込んでくると、一本、また一本と、ツリーウォーカー達を切り倒していった。

「で、出る幕がねぇ……」

「俺ら……、雑魚くねぇ?」

 顔を見合わせ、ため息混じりに小言を言っていると、Lv.Upカウンターが鳴り響いた。

(【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【9】になった。攻撃力が12、速さが8、生命力が26上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【10】になった。攻撃力が18、防御力が12、魔法攻撃力が14、魔法防御力が11、生命力が27上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【11】になった。攻撃力が13、防御力が10、速さが24、生命力が47上がった)

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【11】になった。土下座のプロになった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【12】になった。買い物上手になった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【13】になった。節約術を覚えた。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【14】になった。生命力が100上がった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【15】になった。今回はLv.Upなんてどうでもいい)

(【ノピノプ・ボポン・アイヤーン】は、Lv.が【5】になった。攻撃力が13、防御力が15、生命力が27上がった)

「だからちょっと待て!! どうして俺だけ、強くならねぇんだよ! 土下座のプロって何だ!? 買い物上手になったり、節約術を覚えてどうする!? 俺は母ちゃんか!? っていうか、テメェが何で、Lv.Upなんてどうでもいいって言うんだよ! 馬鹿にしてんのか!!」

 ニコムリンは、大声を出しLv.Upカウンターを地面に投げ付けたが、しばらくしてから、拾い上げると、傷や破損箇所がないか、入念に調べていた。

 でもまあ、気持ちはわからん訳ではないけどな……。


 サラが魔法の連発しすぎで疲れたらしく、モンスターを探しつつ、町へ一旦戻ることにした。

 ニコムリンは納得いかないらしく、「Lv.Up」「Lv.Up」と呪文のように唱えてる。

「あ! ワンワン来た! ワンワン来たよぉ。ワンワン走ってくるよぉ」

 一人やけに無邪気なヤツがいるのだが……。

『……ってワンワン!?』

 慌てて辺りを見渡すと、ウォルフが四匹走ってくる。

『うし! Lv.Upして、どれだけ強くなったか試してみるか!』

 走り込むウォルフを待ち構えながら、鉄の棒を握り締めた。

「ワンワンお手!」

 無邪気な戦士は、ウォルフ相手にお手を要求している。

「下がってろノピノプ!」

 叫ぶと同時に、ウォルフのもとへ走り込むと、一匹の頭部を殴り付けた。キャイン。と情けない声をあげて、ウォルフが沈黙する。

『よし! 確実に強くなってんじゃねぇか!? ニコムリンは役に立たねぇから、後の三匹も殺っちまうか!?』

 仲間がやられて、怯むウォルフを立て続けに、二匹殴り飛ばす。初めのウォルフと同じように、情けない声をあげて沈黙する。

『へ! 余裕になってきたんじゃねぇの!?』

 勢いに任せて、最後の一匹を殴ろうとした時だった。

「だめぇ! ワンワン、痛い痛いって。ワンワン、嫌々しているよぉ。ほら、お手だってするし……。ちんちんだって、するんだよぉ」

 止めに入ったノピノプの後ろに隠れたウォルフは、ノピノプの右手に右足を、ちょこんと乗せて尻尾を振っている。

『お前は魔獣使いか!』

 そう思っていると、ウォルフは逃げるように走り去っていった。

 獲物が……。Lv.Upの素が……。と嘆く間もなくポンポンピリリン。ポンププリンと、Lv.Upカウンターが鳴り響く。

(【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【12】になった。攻撃力が10、速さが12、魔法攻撃力が10、魔法力が24上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【13】になった。防御力が12、速さが8、魔法防御力が17、生命力が31上がった)

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【16】になった。エアガンを持つ仮免許を得た。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【17】になった。攻撃力が2、防御力が1、速さが9上がった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【18】になった。靴を舌で磨けるようになった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【19】になった。後少しの辛抱だ。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【20】になった。二枚舌が三枚舌にパワーアップした)

(【サラ・デ・リーリア】は、Lv.が【4】になった。攻撃力が17、速さが12、生命力が19、魔法力が26上がり、新たな魔法を覚えた)

「くそぉぉぉぉ!! 後少しの辛抱って何だよ! 靴なんて舐めねぇし! 三枚舌って、八方美人か俺は!? なんなんだよ、この職業はよ!」

 ニコムリンが荒れている。尋常でないくらい荒れている。ヤツももう、何処に怒りをぶつければいいのか、わかんねぇんだな……。ご愁傷様……。

『パシリじゃなくて、よかったぁ……』

 そう感じたのは、俺だけじゃない筈だ。


 町に入る前に、裏の魔王城を見学に行こうという話になった。実質、劇的にLv.Upしているのは、俺とニコムリンだけであって、サラもノピノプも、たいして強くはなっていない。もしかすると、町の表には雑魚が多くて、裏側に高Lv.なモンスターが、いるんじゃないか? というのも、狙いの一つであった。

 特に何の変哲もない、平原を進みながら、町の裏側へと回り込むと、城なんて物はなく、小さな小屋があるだけだった。モンスターも特にいないし、ガセネタだったんじゃねぇの? とも、思ったりした。しかし、小屋の中を覗いた瞬間、そんな甘い考えは、吹き飛んだ。

 小屋の中は、人が息をする事も出来ないくらい、障気に満ちており、その中で一匹のモンスターが、じっと、こっちを見ていたのだ。しかしそのモンスターは、攻撃どころか、襲ってくる様子もなく、ただただ、こちらを睨み続けている。

「テ、テメェ……が、……魔王……なの……かよ……!? じゃなくて、……なのですか? じゃなくて、……なのかよ!?」

 出来るだけ声を張り上げ、小屋のモンスターに話し掛けたが、モンスターは、少しも動かず、少し笑っただけだった。

「あなたを……、じゃなくて……、お前を……、でもなくて……、テメェを……、そのうち、倒しにきて……やるから……な!」

 そう言った途端、小屋のモンスターは大きな声で笑い、「そうだな。この世界には、赤い兜を被り、青い鎧に身を包み、緑の小手に、黄色いブーツ、七色の盾に、透明の剣を持った、勇者なる者がおるらしいな。もし、お前達が、その勇者とやらを連れて来たら、勝負してやってもよいぞ」と言い放った。

『なんだ? その装備は。まるでピエロじゃねぇか……』

 そうは思いつつも、その威圧的な視線に、どうする事も出来ない俺達は、小屋からそそくさと立ち去った。

「おいパパパ! 結局、勇者探さねぇと、いけねぇんじゃねぇか!」

「しゃーねぇだろ! 魔王の注文なんだからよ!」

「赤鬼さ〜ん。青鬼さ〜ん。こっちこっち〜」

「どちらにしても、もうしばらくLv.Upしないといけないわね」

「結局、そうなるのかよ。俺も強くなんねぇかなぁ……」

「鬼さんこちら、手のなる方へ。あはははは」

「そんじゃ、まぁ、町で一息ついたら、続きやろうか」

「それしかなさそうね」

「赤鬼さんも、青鬼さんも、おっきいねぇ!」

「ってノピノプ! 何連れて来てんだよ!!」

「うわぁぁぁぁ!! 鬼だ! ヒュムホーンじゃねぇか!?」

「後は任せた! ガンバレ! 俺の分まで!」

 そう言って、戦闘区域から離脱したニコムリンを尻目に、俺とサラは、人間の約1.5倍の大きさのヒュムホーンへと走り込んでいった。ノピノプは……、戦力外だな。やけに楽しそうだ。

 サラは走り込むと同時に、ノピノプから鉄の剣を奪い取ると、赤いヒュムホーンの左足を斬り付けた。ブシュゥッ!! と音を立てて左足を切断されたヒュムホーンは、バランスを崩して倒れそうになる。そこへ俺が、正面から飛び込み、ヒュムホーンの顔面を力いっぱい殴り飛ばした。バランスが悪いうえに、強打を受けたヒュムホーンは、その大きな身体を支える事も出来ずに倒れ込んだ。

「まずは一匹ぃぃ!!」

「次行くわよ!」

 残りのヒュムホーンを探して、瞬時に立ち上がった俺達だったが、目の前の光景に、ただただ黙祷を捧げるしかなかった。

 ノピノプが、得意とする地獄の鬼ごっこ。その鬼役が、ノピノプに渡されたのだ。ヒュムホーンは、鬼ごっこのルールなんて知っている筈がない。しかしノピノプは、とても嬉しそうにしている。「あ!」と、サラが声に出した瞬間、ヒュムホーンの両足は、関節と逆方向へ折り曲げられた。「グオォォォォ」と、悲痛な声を出すヒュムホーンへノピノプは、「あはははははは」と笑いながら、その両腕を引きちぎった。

「鬼さん、痛い? 鬼さん、痛いの? 鬼さんは、鬼だから痛くなんてないよね?」

 意味のわからない事を言いながら、腕の無くなった断面に、自分の手を突っ込み、その中をグリグリと掻き回している。ヒュムホーンは、悲痛な叫び声をあげながら、のたうちまわったが、ノピノプに押さえ付けられたまま、腕のついていた断面から、身体の中を掻き回され、白目をむいて気を失った。

「鬼さん。こんな所で寝たら、風邪ひくよ。鬼さん、鬼さんてばっ! もっと、遊ぼうよぉ……」

 ヒュムホーンの肩を掴み、地面にヒュムホーンの後頭部を打ち付けながら、叫び続けるノピノプを見て、ヒュムホーンに同情した俺達は、ノピノプを引きはがすと、その場を立ち去った。

「鬼さ〜ん! また、遊ぼうね〜!」

 ヒュムホーンからノピノプを引き離すと同時に、Lv.Upカウンターが、鳴り響いた。

(【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【14】になった。攻撃力が13、魔法攻撃力が14、生命力が29上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【15】になった。防御力が10、魔法防御力が14、生命力が25上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【16】になった。攻撃力が11、速さが12、生命力が34、魔法力が21上がった。【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【17】になった。ただLv.が上がっただけだった)

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【21】になった。噂話に鋭くなった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【22】になった。土下座を他人に教えられるようになった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【23】になった。他人の頼みを無視出来なくなった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【24】になった。攻撃力が19、速さが28、生命力が46上がった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【25】になった。パワーアップ八方美人になった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【26】になった。喜んで毒味が出来るようになった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【27】になった。Lv.Upしても強くならないので、ヤケクソになってきた。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【28】になった。速さが25、生命力が25上がり、もう少しの辛抱だと悟った)

(【ノピノプ・ボポン・アイヤーン】は、Lv.が【6】になった。攻撃力が27、防御力が13、魔法防御力が11、生命力が47上がった。【ノピノプ・ボポン・アイヤーン】は、Lv.が【7】になった。攻撃力が19、防御力が20、速さが10、生命力が43上がった)

(【サラ・デ・リーリア】は、Lv.が【5】になった。攻撃力が19、防御力が17、速さが14、魔法攻撃力が24、魔法防御力が21、生命力が35、魔法力が28上がった)

「あ〜! 意味不明だ! ヤケクソになったって、誰のせいだよ! パワーアップ八方美人って、何ができんだよ! あ〜、もうやめたやめた。もう、うぜえわ!」

『スゲェLv.Upカウンター。ヤケクソになってる』

『凄いわLv.Upカウンター。本当に、ヤケをおこしているわ』

「鬼さ〜ん! バイバ〜イ!! また、遊ぼうねぇ!」

 まとまりのなくなった俺達だったが、ひとまず町へ転がり込んだのだった。


☆パパパ:悪ガキLv.17【攻撃力92 防御力59 速さ84 魔法攻撃力53 魔法防御力57 生命力284 魔法力45】


☆ニコムリン:パシリLv.28【攻撃力30 防御力4 速さ92 魔法攻撃力0 魔法防御力0 生命力221 魔法力0】


☆ノピノプ:戦士Lv.5【攻撃力113 防御力89 速さ26 魔法攻撃力0 魔法防御力38 生命力282 魔法力0】


☆サラ:WMマスターLv.4【攻撃力1119 防御力78 速さ68 魔法攻撃力109 魔法防御力84 生命力446 魔法力238】


『ニコムリンには悪ぃが、俺は確実に強くなってんじゃねぇか!?』




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