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勇者を探して5【念願の……】

 目的がふりだしに戻ってしまった俺達は、良くも悪くも、Lv.Upに明け暮れるしかなかった。勇者を探そうにも、町の中をうろうろしているだけでは、仕方ない。次の町へ向かうにも、歩いて最低でも、五日かかる。その間に、何度モンスターと遭遇するのかは、予測することは出来ない。そして俺達は、その能力・モンスターの得意不得意がバラバラで、戦闘における戦闘員は、一回二人程だという事だ。極め付けは、戦闘員になりたい非戦闘員がいる事だ。

「何、何? それって、もしかして俺のこと? 俺だって、強くなりてぇよ! でも、Lv.が上がっても、強くなんねぇんだから、しゃあねぇじゃねぇか!!」


「それでは皆さん、今日も頑張りますか?」

「気持ち悪い話し方しないでよ!」

「パパパ、真面目似合わない」

「うっせぇよ! ほら! 行くぞ!!」

 宿屋から出て、今日もLv.Upの為に、モンスター討伐へ出発する。少し前までは、【悪ガキ】と【パシリ】は、戦力外だったが、今や俺は立派に戦力となった。ただ武具がヘボイのが、玉に瑕だけど……。

 町の外には、見渡す限り平原が広がり、今日も、モンスターの姿は見えない。こういう時、一番頼りになるのは、ノピノプなのだ。どこからともなく、モンスターを呼び寄せてくる。だから今日も、あてもなく散歩する事にする。

「ぶにょぶにょ、いっぱい来た。ぶにょぶにょが、いっぱい来たぁ! 気持ち悪いぶにょぶにょが、いっぱい来たぁぁ!!」

 ほら、ノピノプの隠された能力《魔獣使い》。これで、モンスター探しの手間が省けるって寸法だ。

『……って、あれ?』

 ノピノプは、ジェリースラームがよほど嫌いらしく、乱心状態になり、一人でジェリースラームの大群の中で、暴れ回っている。サラも、魔法攻撃をせず、時折ノピノプに回復魔法をかけるだけだった。

「出番……ねぇわな……やっぱり」

 横で呟く声が聞こえた。

 ニコムリンだ。俺も、似たような事を考えたが、コイツは、とことんそれを痛感しているようだな。当たり前か……。どれだけLv.Upしても、全く強くならないんだから。

 ノピノプが、肩で息をしながら、ジェリースラームの破片の中で、立ち尽くしていると、いつもと同じように、Lv.Upカウンターの音が聞こえた。

(【パパパ・ンパ・ペペンペン】は、Lv.が【18】になった。攻撃力が11、防御力が14上がった)

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【29】になった。防御力が10上がった。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【30】になった。生まれて初めて、パシリであると自覚した。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【31】になった。既に、強くなる事への執着はない。【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【32】になった。あと1Lv.で、何かが起こる)

「あれ? これだけ?」

「またかよ! 何が、強くなる事への執着は……だ! あるよ! あるに決まってんじゃねぇか! 強くなりてぇに、決まってっだろ!」

 俺達の間には、かなりの温度差があるようで、ニコムリンの叫びを、もう聞きたくなかった。けれども、気になる事を言っていた。《あと1Lv.で、何かが起こる》と。いったい何が、起こるというのだろうか……。

「蝶々! おっきい蝶々だよぉ! 綺麗だねぇ、おっきい蝶々ぉ!」

 ノピノプは既に立ち直ったらしく、近寄るデカイ蝶、ビグバタライに見とれている。

「私、虫は無理だからね!」

 サラの声が、ビグバタライと反対の方向へと消えていく。

「うわぁ。おっきい蝶々ぉ。羽もおっきいねぇ」

 ノピノプが、そう言うのも当然だ。ビグバタライの大きさは、ヒュムホーンを4体合わせた程だ。下に入れば、屋根があるのかと、勘違いしてしまいそうになる。しかしビグバタライは、野生種の中では、極端に大人しく、大きさに反して、かなり弱いモンスターの分類なのだ。

「これならお前でも、戦えっだろ!? 行くぞ!」

 ニコムリンの肩を、ポンと叩くと、俺は一足先にビグバタライの下に走り込むと、その重たそうな腹に、鉄の棒を投げ付けた。しかし、弾力性のあるその皮膚は、その攻撃に何も感じていないようだった。やる気なさ気に駆けてくるニコムリンに、指で上と合図する。軽く頷いたニコムリンは、俺の手を踏み台に、ビグバタライの上へとジャンプした。ビグバタライの背の上に乗ったニコムリンは、ペーパーナイフをその身に突き立てると、頭の方から、尻の方へ駆け抜け、臓器を撒き散らしながら、落下するビグバタライと一緒に、地面に降りた。

 ポンポンピリリン。ポンププリン! Lv.Upカウンターが鳴っている。しかし、今回もハモりが少ない。

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、Lv.が【33】になった。長かった下積み生活が、終了した。もうこれ以上、Lv.Upしない)

「……ん、だとぉ!! Lv.Upしないって、どういう事だよ! 全っっ然っ! 強くなってねぇじゃねぇか!!」

 もう、ニコムリンの叫びは悲痛だった。でも、あのカウンターの言葉……。《下積み生活が終了した》……。これは……。

「ニコムリン! 町へ帰るぞ!」

「どうしたんだよ、パパパ」

「早く帰っぞ! いいから、帰んだよ!」


 全く状況を理解していないニコムリンを引きずるようにして、俺達は、町へ戻ると、一目散に冒険者ギルドへ駆け込んだ。

「オッサン! このギルド証と、カウンター見てくれ!」

 ギルドのオッサンに、ニコムリンのギルド証とLv.Upカウンターを差し出すと、オッサンは理解した顔になると、それを手に取った。しばらく、カウンターを眺めていたが、目の前の台に静かに置いた。

「ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン君! おめでとうございます! 職業【パシリ】最高Lv.になりましたので、スキルアップが可能となりました! さあニコムリン君、スキルアップ後の、次の職業を選んでください!」

「な、な、な、何ぃ! スキルアップぅ〜!! マジかよ! パシリ脱出かよ!」

 うなだれていたニコムリンは、跳び上がると、浮かれた様子で、オッサンの所へ近付いていった。

「ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン君だね。君には、三つの職業選択が可能となった。よく考えて、解答を聞かせてくれるかね? それでは、三つの職業を発表するよ。【鉄砲玉】【特攻隊】【下っ端】。この三つから、よく考えて、選んでくれよ」

「これって……、スキルアップ……してんのか……? 【鉄砲玉】って、早い話パシリと変わんなくねぇ? 【特攻隊】、命の危険の香りが、プンプンすんだけど……。【下っ端】……、これが一番強そう……か?」

 ニコムリンは、やる気のない表情で職業を選んでいたが、真剣な表情になったと思うと、オッサンの顔を見た。

「決まりましたか?」

「ああ、決まった」

「で、どれにしますか?」

「特攻隊……で、頼む」

「わかりました。それでは、ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン君は、これより職業を【特攻隊】にチェンジし、スキルアップします!」

 オッサンがそう言った途端、ニコムリンのLv.Upカウンターが鳴りだした。

(【ニコムリン・ヨボヨボ・フリフリン】は、スキルアップし、Lv.が【1】になった。攻撃力が30、速さが15上がり、防御力が14、生命力が100下がった)

 落ち込んでいるかと思い、ニコムリンを見たが「思った通りだな」と、余裕の表情を浮かべていた。

 ギルドを出て武具屋に向かう。道中ニコムリンは無口だったが、特に落ち込んだ様子は、見られなかった。

「お、兄さん達また来たね。誰か、スキルアップでもしたのかい?」

「ああ、俺がスキルアップした」

「パシリの兄さんかい。で、何になったんだい?」

「特攻隊」

「そうか、特攻隊か。じゃあ、そのペーパーナイフとジャージは、引き取ろう。そして、この鉄の槍とスポーツシューズと交換してやろう」

「ペーパーナイフよりも、格段に強そうだな。……なぁ、聞いてもいいか? もし、鉄砲玉や下っ端だったら、どんな武器になってたんだ?」

「知りたいか? そうだわな。知りたいわな。じゃあ、教えてやろう。鉄砲玉は、ペーパーナイフのままだ。そして下っ端は、この角棒だ。兄ちゃん、その選択は、ある意味正解だよ!」

「よし! Lv.Up再開すんぞ!」

 やけに張り切るニコムリンだったが、俺達は、胸につかえた不安を、取り除く事が出来なかった。


☆パパパ:悪ガキLv.18【攻撃力103 防御力73 速さ84 魔法攻撃力53 魔法防御力57 生命力284 魔法力45】


☆ニコムリン:特攻隊Lv.1【攻撃力60 防御力0 速さ107 魔法攻撃力0 魔法防御力0 生命力121 魔法力0】


☆ノピノプ:戦士Lv.5【攻撃力113 防御力89 速さ26 魔法攻撃力0 魔法防御力38 生命力282 魔法力0】


☆サラ:WMマスターLv.4【攻撃力1119 防御力78 速さ68 魔法攻撃力109 魔法防御力84 生命力446 魔法力238】


『ニコムリン……。本当に強くなったのか……? 防御力0ってヤバくねぇか?』




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