太陽のマジカルオネェ
「あの、ソルさん!俺達、どうしても宇宙……
いや、『おひさまのおしろ』に行く方法を知りたくて、あんたを訪ねてきたんだ!」
俺が真剣な顔で訴えると、ソルちゃんは太い人差し指を口元に当てて、「あら?」と小首を傾げた。その拍子に、大胸筋が波打つようにピクピクと動く。
颯太が「筋肉番付かよ…」
と呟いた。
「おひさまのおしろですって?
ずいぶんとロマンチックな場所を目指すのねぇ。でも、あそこは普通の人間や並の魔法使いじゃ、近づいただけで真っ黒焦げよ?」
「そこをなんとか教えてくれよ、ソルちゃん!この通りだ!」
颯太がすかさず頭を下げた。
ついでに童丸も「やだあ、いきたいぃぃ!!」
とちょっとキレる
ソルちゃんは童丸の姿を見ると、そのギラギラした瞳を少しだけ和らげた。
「あら、可愛い!鬼の子ちゃんね!
それに、あなたたちの肩にいる妖精ちゃんたち。水のミレアに、炎のイグニ、月のユエね。ふふん、ただの迷子ちゃんじゃなさそうね」
すると、ソルの肩に乗っていた太陽の妖精が,パタパタと羽を羽ばたかせながら、生意気そうな高音でしゃべりだした。
「ちょっと、そっちのちんちくりん共!
よぉく聞けや!!
ソルを『オネェ』呼ばわりするなんて、百年早いんだよ!この人は偉大なる太陽の魔法使い!」
「ちんちくりんは、おめーもだわ!!」
「おいっっ颯太!ちんちくりん煽ってどーすんだよ!」澪央が颯太の腕を掴む。
「なんだよあいつぅ!さっき挨拶した時から
態度デカくてやな感じなんだよ!」
イグニが颯太の肩から飛び上がり、全身から小さな火の粉を散らして怒った。
「イグニ!!落ち着いて……
太陽の妖精『ソレイユ』、口が悪いなぁ。
主人の影響?」
ミレアがやれやれと首を振る。
「まぁ、でも……ソレイユ、真面目に『おひさまのおしろ』に行く方法を探しているんだ。
知っているなら教えてほしい」
ユエが朔夜の肩から、鈴を転がすような声で静かに諭した。
「ふん、月のユエに免じてちょっとだけ教えてあげてもいいけどぉ……」
ソレイユがソルの耳元に寄り添う。
「まっ、いいわ。可愛い男の子たちの頼みだし、妖精ちゃんたちにも免じて、お話くらいは聞いてあげる。……だけど、タダで教えるほど、私、安い女じゃないのよねぇ?」
「おいこら、男子だろうがー」
颯太が呆れる。
ソルちゃんは急に、モデルのようなポーズを決めてウインクしてきた。
「ソル……ちゃん、条件?あるの?」
朔夜が引きつった笑顔のまま、
警戒度をマックスにして尋ねる。
するとソルちゃんは、待ってましたとばかりに朔夜との距離を詰め、丸太のような腕で朔夜の肩を抱き寄せた。
「いやん、そんなに身構えないで❤ 条件は簡単よ。私の『試練』をクリアすること。
この子が私のために特製のプロテインをシェイクして、あーんって口に運んでくれること❤」
「朔夜、頼むわ。犠牲になってくれ」
澪央が真顔で拝む。
「どうまるからも、おねがい!ままにあいたい」
クールな朔夜の顔が、今までに見たことがないほど真っ青に染まる。
「おい、朔っ……!頼むよ。」
澪央がさらに拝む。
「俺、普通に宇宙行ってみたい
だって、シャトル代払えないしな!」
颯太が笑顔で胸を張る。
「颯太…。悪いけど僕は無理だよ…」
「あら、ユエの契約者なんだから、それくらいのご奉仕は当然!!」
ソレイユがこれ見よがしに勝ち誇った笑みを浮かべた。
「そこをなんとか頑張れ!朔ちゃん!」
颯太が完全に悪のりしていた。
本気で嫌がる朔夜。
そんな中、藤井さんはちゃっかり
「あ、いいですね、そのアングル」なんて言いながら、ライカのシャッターを連写していた。緊迫感が完全に死んでいる。
澪央が「目の前の不思議より、ファインダーの標準が大切かよー」と颯太がまだ笑っている
俺はコホンと一つ咳払いをして、ソルちゃんに向き直った。
「わかった、試練でもプロテインでも何でも受けて立つよ?で、その試練って、一体何をすればいいんだよ。」
俺がそう問いかけると、ソルちゃんの雰囲気が一瞬で変わった。
オネェのノリはそのままなのに、放たれるプレッシャーが、部屋の温度をさらに数度跳ね上げる。
「ウフフ、威勢がいいわねぇ、澪央ちゃん。
太陽の試練はね……この塔の最上階から、私を力づくで一歩でも動かすことよ。あなたたちの魔法、私に見せて頂戴?」
ソルちゃんが拳を軽く握ると、その全身から、まるで本物の太陽のような黄金のオーラが立ち上った。
目映い光のなか、ソルちゃんは
不適に笑った。




