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臨界マジックヒストリー  作者: コラソン


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灼熱の試練??水と炎と月。



「一歩でも動かせばいいんだな……よし、みんな、行くぞ!」


俺の掛け声に、颯太と朔夜が力強く頷く。まずは基本、魔法陣の展開だ!


「「「『Lux Arcana』!!」」」


ブゥンー

俺たち三人の足元に、それぞれの属性を宿した鮮やかな魔法陣が広がった。

最上階の熱気が、さらに魔力によってビリビリと震え出す。


「あら、綺麗な魔法陣ね。ベースはしっかりしてるじゃない。でも、そんな可愛い魔力で、この私を動かせるかしらぁ?」

ソルちゃんがふんぞり返り、大胸筋をピクピクと挑発的に動かす。


「おう!それな!!そうだよ!俺と澪央なんて

まだ新米マジカルだわ!だからなんだよ!!」


「だから颯太、煽るなってーじゃねぇわ

ナイス煽りぃー!!気持ちはまけてねぇってな!」

魔法陣の上で澪央が不敵に笑う。


「澪央と颯太は、実践で育つからね!まぁ

見てなよ、ちんちくりん!」

俺の肩で、ミレアがビシッとソルちゃんを指差した。


「澪央、つぎ、攻撃魔法!『アクア・サギッタ』打って!!」


「了解っ!」

俺は右手の親指と人差し指を突き出し、ソルちゃんに狙いを定めた。


「颯太も!『イグニス・サギッタ』唱えて!」


イグニも負けじと、颯太の耳元で大声で指示を出す。


ミレアが「2人で攻撃を合わせて!!幼なじみの

本領発揮して!」と叫ぶ。


「おうよ!合わせて撃ち抜いてやるわ!

 ハッピーセットで食らいやがれーー!」

颯太も同じように手を銃の形にして、ソルちゃんに構えた。


「行くぞ、呼吸あわせるぞ

『アクア・サギッタぁ』!」

「澪央!任せろ『イグニス・サギッタ』!!」


俺の指先から激しい水流の矢が、

颯太の指先から強烈な炎の矢が、

同時に放たれた。


 赤と青の閃光がらせんを描きながら、凄まじいスピードでソルちゃんへと迫る。


「ちょっとソル! 生意気なちんちくりん共の合体攻撃よ、油断しないで!」

ソルの肩でソレイユがキーキーと騒ぐが、ソルちゃんはフッと妖艶に微笑んだだけだった。


「ウフフ、熱くて冷たい、刺激的なお注射ね❤ だけど、効かないわよん!」


ソルちゃんが前に腕を交差させて

筋肉を膨らませた瞬間、その身体からパッと弾けた黄金のオーラが、水の矢と炎の矢を容赦なくかき消してしまった。


「うわ! 直撃したのに、びくともしてねぇな」

颯太が目玉を飛び出させる。


「ヤー!パワー!みたいだな。」

藤井さんがこっそり呟いていた。


「当然よ!私の筋肉は、太陽の加護を受けた絶対防御の盾なんだから!」

ソルちゃんがパチンとウインクを飛ばす。


「マッスルバカかよぉ」颯太がこぼす。


「……やっぱり、生半可な攻撃じゃ一歩も動かせない。だったら、次は僕の番だね」


一歩前に出たのは朔夜だった。その肩で、月の妖精ユエが静かに目を光らせる。


「朔夜、ソルが攻撃を弾いた一瞬の隙を突く。僕の魔力で、彼の影を縛るよ」

「頼む、ユエ」


朔夜が静かに呪文を唱えようとしたその時――。


ぐぅぅぅぅぅううう。


静まり返った塔の最上階に、盛大にお腹の空くような音が鳴り響いた。

音の主は……ソルちゃんだった。


「あ、いやだわ、お腹が空いちゃった❤ これじゃあ試練の続きなんてできないわぁ。……ねぇ、朔ちゃんっ、約束、覚えてるかしら?」


ソルちゃんが、うるうるした瞳で朔夜をねっとりと見つめる。


「無理無理無理無理」

一瞬でクールな顔を崩し、絶望に染まる朔夜。


「ちょっと朔夜!ソルの空腹が限界になったら、この塔ごと私たち焼き尽くされちゃうんだからね!さっさとプロテインをシェイクしなさい!」


ソレイユが勝ち誇ったように腰に手を当てて命令する。


「そうだぞ朔夜。ここは日本の、いや、地球の未来のために、お前が腹を括るしかない!」


「颯太、本当に後で覚えてなよ、僕はいま

精神がゾンビになってるからね!!」


朔夜は般若のような顔で颯太を睨みつけながらも、

観念したようにソルちゃんから「はいっ!お願いねっ」と手渡されたシェイカーを受け取った。


「みお、さくちゃんは、なにしてるのー?」

童丸が不思議そうにしていた。


「あー、童丸。あれはさ、大人の階段を上る儀式だ。だけど子供には目の毒だ。」

俺は童丸の目を覆いながら、静かに朔夜の背中を見守った。


カシャカシャカシャカシャ。

やる気のなさそうな、

怒りを込めたような音を出しながらシェイカーを振る朔夜。


その姿は、ある意味でどんな魔法よりも恐ろしかった。


「……できました。特製プロテインです」

プライドを完全にへし折られた顔で、朔夜がプロテインの入ったグラスを差し出す。


「いやん❤ 違うでしょ? 条件は『あーん』よ❤」

ソルちゃんが口を「お」の形にして待っている。


「僕はこんな事をするために、魔法使いになったんじゃない!!くそっ」

朔夜の手が、怒りと羞恥心でプルプルと震える。そして――。


「……ほら、飲んでください(怒)」


限界まで低い声で、朔夜がソルちゃんの口元にグラスを突き出した。


「んん〜〜❤ 五臓六腑に染み渡るわぁぁぁ!! 朔ちゃんがシェイクしてくれたプロテイン、最高❤」


ソルちゃんが全身からプロテインの喜びのオーラ(?)を放ち、筋肉がさらに一回り大きくなったような気がした。


「ふぅ、ごちそうさま。約束通り、少しだけヒントをあげるわ。……あなたたちが探している『おひさまのおしろ』。そこにはね、最近、宇宙の彼方からすっ飛んできた『ものすごい大物』が居座っているらしいわよ?」


ソルちゃんの言葉に、俺と颯太はビクッと身体を震わせた。

宇宙の彼方からすっ飛んできた、大物……。


「それって、もしかして……」

俺が呟くと、ソルちゃんはニヤリと笑って、再び戦闘態勢に入った。


「さあ、お遊びはここまでよ!プロテインのおかげで力がみなぎってきたわ!

さあ、続きを始めましょう

私を動かせたら、おしろへ行く方法を本当に教えてあげる!」


ソルちゃんが再び不敵に微笑み、その肉体から放たれる黄金の熱気がさらに濃密になった。


普通の魔法使いなら近づくことすら躊躇する圧倒的な威圧感。


「颯太。俺、身に染みたわ

太陽の魔法使いも月の魔法使いも

俺や颯太とは最初から魔法使いとしての『位(ステージ)』全っぜん違うのな。」


「くそっ、やっぱり俺たちのサギッタじゃ、あの肉体(シールド)に触れることすらできないのかよぉ」

颯太が歯噛みする。


「ううん、諦めるのは早いよ!」

ミレアが俺の肩から飛び立ち、空中で力強く叫んだ。

「澪央、颯太!水と炎の魔力を、朔夜の『月の魔力』に預けるのよ! 格上の魔法使いである朔夜なら、二人の力を何倍にも増幅してソルに届けることができるよ!」


「僕の魔力に……? なるほど、僕が二人の魔力を調停する触媒になればいいんだね」


プロテインの怒りで(?)すでに限界突破していた朔夜が、鋭い眼光でソルちゃんを睨み据えた。その肩で、ユエが青白い月の光を放ちながら静かに告げる。


「朔夜、行きましょう。位が同じ太陽が相手なら、私の魔力も全開で貸し出せる。あのオネェを、一歩と言わず十歩は下がらせてあげるから」

「頼む、ユエ。……みんな、僕の合図に合わせろ!」


朔夜の言葉に、俺と颯太は大きく頷いた。


「「「『Lux Arcana』!!」」」


再び展開された魔法陣。しかし今度は、朔夜の足元の魔法陣がひときわ大きく輝き、俺と颯太の魔法陣を取り込むようにして巨大な複合魔法陣へと変化していく。


「お、おいおい!なんか魔力の密度がさっきと全然違うぞ!」

イグニが颯太の頭の上でパタパタと焦ったように羽ばたく。


「いくよ、澪央、颯太!

 手を銃の形に……いや、今度は両手を前に突き出して!ありったけの魔力を僕に注いで!!」


ミレアの指示通り、俺と颯太は両手を前に突き出し、すべての魔力を朔夜の背中へと集中させた。


「はあああっ!!」

「燃えろおおおっ!!」


俺の水流と颯太の業火が、朔夜の放つ冷徹な月の魔力へと吸い込まれていく。

三つの属性が混ざり合い、朔夜の手元で、目を開けていられないほどの凄まじい光の球体へと凝縮されていった。


「あらぁ……?ちょっとこれは、お肌が焦げちゃいそうな熱量ね……!」

さすがのソルちゃんも、その顔から余裕の笑みが消え、がっしりと両足を床に踏みしめて防御の姿勢を取った。

ソレイユも「ちょっとソル、これマジでヤバいって!」とソルの頭の後ろに隠れる。


「これで……終わりだ!僕にプロテインをシェイクさせた罪は重い!」


朔夜が完全に私怨の混じった(?)凄まじい咆哮とともに、両手をソルちゃんへと突き出した。


「『Aqua・Ignis・Luna Sagitta(水炎の月矢)』ーーーーーーッ!!!!」


放たれたのは、ただの矢ではない。

水の激流と炎の烈火が、美しい三日月の形をした巨大な光の刃となってらせんを描き、轟音を立てながら塔の最上階を駆け抜けた! 


ドゴオオオオオオオオオオオオォォォォンッ!!!


眩い光が炸裂し、激しい衝撃波が海の塔を大きく揺らす。

「うわああああっ!?」と颯太が風圧で吹き飛びそうになり、

藤井さんは「おい、凄いな……!奇跡の一枚だ!」と叫びながら必死にライカを構える。


童丸は「すごーい!キラキラだー!」とパチパチ手を叩いている。


やがて、もうもうと立ち込める白い水蒸気の向こうから、

「ふぅ……。危なかったわぁ……」

という声が聞こえてきた。


ゆっくりと蒸気が晴れていく。

そこにいたソルちゃんは、金色のタンクトップが少しだけ焦げ、丸ボーズの頭から煙をプツプツと立たせていた。


正式に、その足元は――。


元の位置から、きれいに『3歩』後ろへと下がっていた。


「……やった、動いた……」

俺が声を上げると、その場にへなへなと座り込んだ。

魔力を使い果たして、もう指一本動かせない。颯太も

「ま、マジで動かした……朔夜、お前怒らせると一番怖いわ……」と白目を剥いている。


ソルちゃんは自分の足元を見つめた後、ハァ、と大きなため息をつき、それから満面の笑みで俺たちを振り返った。


「ウフフ❤ 完敗よ、あなたたち。まさかこの私を3歩も下がらせるなんてね。

特に朔ちゃん。あの執念に満ちた魔力、最高にクールでゾクゾクしちゃったわァ❤」


「……二度と、やりません」

朔夜はユエの影に隠れるようにして、ぷいっと顔を背けた。


「さーて、約束だものね。おひさまのおしろ……『太陽宮』への行き方を教えてあげるわ。ソレイユ、例の『アレ』を出しなさい」


ソルちゃんがパチンと指を鳴らすと、

肩のソレイユが「ふん、しょうがないなぁー!」と言いながら、口からキラキラと輝く黄金の鍵を吐き出した。


「リバースでキー…いや何かちがうな。

鍵の吐き戻し………。」


颯太がぶつぶつ言っていたけど

俺達は、鍵を手に入れた。




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