藤井さんの悔しい気持ち。
朔夜が、「じゃあ、藤井さんそろそろ話をしましょうか。」
ミレアが、澪央にそっと耳打ちして
「藤井さんなら、話が終わったら、朔夜が
藤井さんの事を 1度気絶させるからね」
「お? 気絶とな? 物騒すぎないか?」
「自分に憑いたバケモノの話なんて忘れた方がいいよ。原因を突き止めて2度と藤井さんに
悪いのが憑かないようにしなきゃね。」
ミレアが、少し悲しい顔をした。
藤井修平(37) は、
THE HUMAN STORY 写真コンテスト
の概要を見ていた。
テーマは、
一枚の写真から、その人の物語が伝わる作品を募集、とある。
コンテストの大賞が欲しかった。
まだ、それが夢のままだった。
勝負に出るなら、使うカメラは決まっていた。
Leica M4 発売:1967年 35mmフィルム式
レンジファインダー完全機械式(露出計なし)
ドイツ製
レンズは Summicron 50mm F2。
人物を撮るなら50mmは相性がいい。
被写体との距離を自分で決めて、表情をじっくり切り取りたい。
自分がカメラマンを目指すきっかけになった
このカメラで、勝負に出る。
ただ。被写体がなかなか決まらなかった。
綺麗なモデルなら山ほどいる。
だけど。その人の物語が伝わる1枚。
それを撮りたい。
カメラマンの後輩たちの実力と発想に
脱帽する。
アマチュアに負けたコンテストもあった。
考えれば考えるほどわからなくなる。
迷走していた。
「藤井さんはもう、実力あるから
コンテストなんて別にこだわらなくていいんじゃないですか? 仕事も安定してるし。」
後輩が褒めてくれたのは、わかる。
だが、違う。
「今日飲みにいきませんか?」
仕事終わりに誘われる。
「悪いなぁ、別件で忙しいんだよ、また
今度、誘って」
と断る事が増えた。
1人で悶々とする時間が増えた。
悪夢を見るようになった。
部屋は、散らかって荒れていた。
普段なら綺麗にしていた。
大切なカメラや機材を几帳面に
レイアウトしていた。
今では、テーブルの上にはビールの空き缶。
散らばった服。
シンクに積まれた食器。
浮かばないアイディア。
焦りが、諦めに変わっていく。
もう、どうでも良くなった。
タバコは、加熱式から紙タバコへ
戻した。この方が肺に響くからだ。
話を聞いていた朔夜が、
「藤井さんの原因は、心労から始まったんだね…。
さて、解決に向けて考えようか、と言っても、どうしようか。」
颯太が、
「なぁ!! 藤井さんと山とか海とか行こうよ!!」
童丸が「うみいきたい!!」とピョンピョン跳ねる
「なんで藤井さんと遊びに行くんだよ」
澪央が呆れていた。
「ちげーよ!!藤井さんを自然いっぱいの
明るい所にまず行った方が良くね?っておもったんだよ。」
澪央は、パッと明るい表情で
「それ、いーな!!まずは、人物に拘らないで
撮りたいモン撮れば??」
朔夜も「バケモノも払ったし、そうだね。
まず、自然からパワー貰おうか!」
ミレアが
「決まりだね!じゃあ早速藤井さんには
1度気絶してもらおう!!」
颯太が、
「朔夜ぁ、気絶してる間藤井さんに
部屋綺麗に掃除しろって暗示かけてー」
「いいけど…急ぐの?」
「だってさぁ、せっかく海とか行って帰ってきても、部屋汚かったら萎えるじゃん」
颯太の言葉に皆頷いた。
澪央は
「ついでに、太陽の魔法使いも探そうぜ。」
と言ったら
「どうまるがそらでよぶから
みんなでそらにいこうね。」
「はぁ?空ぁー??ナニ言ってんだよ童丸ぅ」
颯太が呆れていた。
澪央が「童丸、絵本でも見たかぁ」と苦笑い。
朔夜だけ、内心
鬼の子の能力を改めて調べよう。
そう思っていた。




