バケモノ退治!
「さぁ、藤井さん。いきますよ!」
俺は気合いを入れた。
目の前の化け物が、こっちを向いてニヤリと笑った。
うわぁぁぁ! 笑ってんじゃねえよ!
しかも口から緑色の煙が、モワモワ出ている。
キモいな。
「澪央! 右!」
ミレアの声に、俺は慌てて横に飛び退いた。
ブォンッ!
化け物の腕らしきものが、さっきまで俺が立っていた場所を通り過ぎる。
あっぶねぇ!!
「颯太! 魔法陣!」
「わかってるって!」
颯太の足元にも魔法陣が浮かび上がった。
「よっしゃあ! こんな化け物、ぶっ飛ばしてやる!」
颯太が、手を銃の形にして
『イグニス・サギッタ!!』
と、唱える。
颯太の指先から、勢いのある。炎が化け物に向かって飛んでいく。
ガスバーナーみたいな炎。
いけるか?
ところが。
化け物は身体をねじると、炎を避けた。
「うそだろ!?」
「颯太、狙いが雑!」
「うざぁ!慣れてねーから許して!」
くそ。
化け物が再び飛びかかってくる。
今度は颯太に向かって一直線だ。
「うわっ! こっち来んな!ブスぅ!」
颯太が飛び退く。
その瞬間、化け物の背後で童丸がビリビリと音を立てた。
「ンギィィィ!」
バチバチバチッ!
童丸の身体から雷がほとばしる。
化け物が怯んだ。
「ナイス!童丸ー!!」颯太も叫ぶ。
「今だよ、澪央!」
ミレアが叫ぶ。
「わかってる!」
俺は魔法陣に意識を集中させた。
怖い。
めちゃくちゃ怖い。
でも、ここで逃げたら藤井さんはどうなる?
あの人だって、好きで化け物に憑かれているわけじゃないはずだ。
「ミレア! どうすればいい?」
「化け物の動きを止めて! その隙に魔法をぶつけるんだ!」
「簡単に言うなぁ!」
俺は化け物を見据えた。
手を銃の形にして、構える。
『アクア・サギッタ!!』
指先から、水流が勢いよく噴出する。
「いっけぇぇー!!!」
朔夜が
童丸に、「童丸。少し雷の電力をわけてくれるかな?」と言いながら、
童丸と手を合わせる
合わせた手から
バチバチっと音が響く。
「ありがとう。チャージ完了!さぁ、
いくよ! オバケさん。」
朔夜の瞳が、月の色に変わる。
手の平を真っ直ぐバケモノに向けて
『ルナ・サンダー!』
と朔夜が唱えた。
手のひらから、バリバリと
雷が発射された。
朔夜に付いている妖精、ユエが
「朔夜!まだ気を抜かないで!」
と叫ぶ。
雷の電流がバケモノの足元に走り、その身体を包み込もうとした。
ところが、化け物は緑色の煙を吐き出した。
光が煙に触れた途端、バチッと弾かれる。
「効いてねぇ!?」
「違うよ! 押し返されているだけ!」
ミレアが俺の肩から飛び立った。
「澪央、魔法を切らないで!澪央、童丸から
雷わけて貰って!!」
「えっ?どうやるんだよ!!」
「朔夜の見たでしょ、童丸と手を合わせて!
鬼の子は、好きな相手になら能力わけてくれるから!!急いで!」
童丸は、真剣な顔で俺の方に手をむける
「みお。どうまるのビリビリあげる」
「うす!頼むわ!!」
澪央は童丸と手を合わせた。
澪央の体全身からバチバチと
電気が、溢れる。
イグニも、「颯太ぁ!! 童丸と手を合わせるんだ」
「ほぇ?わ、わかった」
ピリピリっ。
「ん?俺の電気、弱くね?」颯太が呟く。
「しかたないよ。鬼の子が分ける能力は
相手を思う気持ちに比例する。無いよりましだから、がんばれ颯太!」
イグニの言葉でガッカリしたけど
まぁいーわ。やるしかねーだろ。
颯太は、バケモノを睨み付けた。
化け物が再び唸った。
「ンギャァァァ!」
緑色の煙が膨れ上がり、光を押し返してくる。
くそっ。
このままじゃ、押し負ける。
「澪央!」
颯太が叫んだ。
「俺が煙を散らす! お前はそのまま押さえろ!」
「どうやって!?」
「知らねぇよ! やってみるんだよ!」
颯太が両手を前に突き出した。
「イグニス・サギッタ!」
雷の電気を含んだ炎が、指先から放たれた。
緑色の煙が揺らいだ。
その隙に、童丸の雷が走る。
バチィィッ!
化け物の身体が大きく跳ねた。
「今だよ、澪央!」
ミレアの声が響く。
俺は息を吸い込んだ。
怖いのは変わらない。
でも、俺はもう逃げない。
『アクア・サギッタ!!』
足元の魔法陣が、ひときわ強く輝いた。
指先から放たれた水流は、雷の電力を帯びて
眩しく光る。
光がバケモノを包み込む。
朔夜も『ルナ・サンダー!』
バケモノを狙う。
「ギィィィィッ!!」
化け物が暴れる。
それでも、澪央は魔法を解かなかった。
「藤井さんから離れろよー!!このブスヤロー!」
光がパアァァァンと弾けた。
スタジオいっぱいに、白い光が広がる。
そして。
化け物の姿が、ゆっくりと薄れていった。
緑色の煙が消える。
釣り上がっていた目も、ヨダレを垂らした口も、光の中に溶けていく。
最後に残った黒い影が、俺を睨みつけた。
――まだ、終わっていない。
そう思った瞬間。
童丸が、小さな手を伸ばした。
バチッ!
雷が一筋、化け物を貫いた。
颯太も、「仕上げだコンニャロ!『イグニス・サギッタ』 俺の技!くらえ!ブス!」
颯太もバケモノめがけて命中させる。
「ギャアアアアッ!!」
叫び声が響き渡る。
……終わった?
俺は魔法陣を消し、へなへなとその場に座り込んだ。
「お、終わったぁぁぁ……」
颯太も床にへたり込む。
「マジで無理……。俺、モデルのバイトって聞いてたんだけど……」
命懸けの除霊みたいだなぁ。
朔夜が、倒れているスタッフたちを確認しながら近づいてきた。
「大丈夫。みんな眠っているだけだよ。童丸の雷は、ちゃんと加減されていたみたいだね」
……加減?
あれで?
俺は童丸を見た。
童丸は何事もなかったかのように、俺のところへ歩いてくる。
そして。
「みお」
俺の背中に、よじ登ろうとした。
「いや、童丸! 今は勘弁してくれ!」
俺の体力は、もうゼロなんだよ!
そのとき。
「……ん?」
床に倒れていた藤井さんが、ゆっくりと身体を起こした。
俺たちは一斉に振り返った。
藤井さんは、ぼんやりと周囲を見回している。
そして、不思議そうに呟いた。
「……あれ? 俺、何してたんだっけ?」
俺は、ようやく息を吐いた。
よかった。
本当に、よかった。
だけど。
朔夜の表情は、まだ晴れていなかった。
朔夜が
「まだ。終わってないよ。
彼方送り、済ませないと。それから
藤井さんと、話をしなくちゃいけない。」
ミレアが
「付かれてるところ悪いけど
魔法陣、出してね」
とにっこり笑う。
イグニも
「カエルム・レミットやろうな颯太!」
と颯太の頭をポンポンした。
まだ終わってないのかよぉ。
でも。やらなくちゃ帰れないんだろ?
「朔夜!!これ終わったら、焼肉つれてって!!」
澪央が叫ぶ
朔夜が笑って「了解」と、返事をする。
『ルクス・アルカーナ!!』
ブゥン。
魔法陣が再び足元に出現した。
さぁ、仕上げの、時間だ!!
魔法使いの役割を果たす!




