朔夜の案件
うっわぁぁぁぁ!!
朔夜に招かれて自宅へ入ったが
レベルの高い部屋だった。
シンプルな部屋だけど、広い。
なんなら、居候したいくらいだ。
だけど感心している場合じゃない。
早速本題に入る。
「で、朔夜の案件って?」
朔夜が、コーヒーを俺と颯太の前に置きながら
「モデルの仕事で、スタジオに行った時に
すぐわかったんだけど…」
カメラマンの後ろに怨霊が付いていた。
カメラマン藤井修平(37)
普段は普通に明るくて頼れるアニキ。
職業柄、ラフなスタイルだけど
こなれた感じが格好よくて、無精髭も
ハマるイケオジだ。
撮影の日、朔夜は藤井さんに違和感を
感じた。
「おはようございます。今日も撮影よろしく
お願いします。」と
朔夜が品良く頭を下げた。
いつもなら
「今日も宜しくね!」と爽やかに
挨拶を返してくれる。
朔夜は顔を上げて驚愕した。
目の前にいる藤井さんは、
顔色も悪く、目の焦点も合っていない。
後ろに、黒くて大きな化け物が見える。
朔夜は騒ぐことなく、藤井さんの様子を
観察していた。
観察していると、
ファインダーを覗く時だけ、
いつもの藤井さんに戻る。
お気に入りのフィルムカメラを
この日の撮影で使っていた。
元来、カメラ愛が凄い人で
今もこの古いカメラを
大切にしていた。
だけど、よほどの依頼の時や、
藤井さんが、勝負に出る時以外
フィルムカメラを普段使わない。
「俺のライカはコンテストとか、
本当に特別な時にしか使わないんだよ。
壊れても、部品の調達で泣く羽目になるからなぁ。大切に使ってるんだよ。」
なんて藤井さんは話していた。
それなのに。
いつもの撮影で、何故?
朔夜は、疑問に思った。
心配だったのは、
藤井さんが、撮影の休憩時間になると、
ボーッと視点の定まらない顔で座っていた。
元々、フレンドリーな藤井さん。
いつもなら
休憩に入るとアシスタントや、
モデル達とワイワイ話をしているのに。
機材スタッフが、
「ここ最近、藤井さんと仕事するの
やりづらくて…」
とボソボソ言っていた。
「あぁ、わかる! ボーッとしてたかと思ったら急にキレるし、付いていけないよ。」
スタイリストもげんなりしている。
「私も、モデルのメイク直しのとき、怒鳴られちゃって。」
ヒソヒソ聞こえてくる。
藤井さんは、何らかの原因で
怨霊が付いている。
朔夜は、そう確信していたから、
「お寺の住職さんに話をしに行ったんだよ。
あぁ、近いうちに澪央と颯太もお寺に行こう。紹介するから。」
ホラー系が全く苦手な俺は
「ちょっと待って? お寺の坊さんだけで
何とか出来ないの?」
と聞いてみた。
だって普通に怖いし。
「僕達はね、魔法使いだけど、お寺の住職さんに神社の神主さん、教会の神父さんなんて
人達と連携してる。」
颯太が感心しながら
「今までそんな人達と関わったことないからなぁ、なんか、神社仏閣の合コンみたいだな。」
なんて言ってたけど
本当にそう。関わるとしたら、
神社に初詣とか?お盆にお墓参りとか?
教会に至っては、利用する機会は無い。
それがどう関わっていくのか、
全く謎だったけど
「澪央と颯太も一緒に藤井さんを助けよう。」
朔夜が、そう言って微笑んだ。
まてまてまて…
童丸が「みんなでオバケたいじだー!!」
と張り切っていた。
いや、童丸。おまえも立派に
バケモノだけどな。
澪央は深いため息をついた。




