表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/5

第四話 終電


ちゃんと寝れていたのかはわからないが気付けば朝になっていた。


一晩考えた。


答えは出ていた。


刻一刻と最後の電話への時間が近づいていた。


いつもなにも考えずにかけていた。


彼女への電話が、こんなに心臓の音を聞きながらかける日がくるとは夢にも思っていなかった。


電話をかけた。


すぐには出なかった。


彼女が出るまでのほんの数コール、途方もないほど長い時間に感じた。


彼女が出た。


出てすぐに外にいるのが分かった。


理由は聞くまでもなかった。


少しの沈黙を破り


「僕は別れたくない。でももうどうしても一緒にいられないなら、諦める。」


一晩考えていたから、言葉はすっと出た。


「私の考えは変わらない。」


彼女が言った。


僕はわかっていた。


僕が何を言っても彼女の考えが変わらないこと。


「最後だし、終電まで話そ。」


彼女の声はすでに震えていた。


今までの思い出をたくさん話した。


初めて会ったとき。


同棲を始めたとき。


彼女の実家に行ったとき。


何時間でも話せたと思う。


彼女は話しているうちに泣くのを我慢しなくなった。


「この前初めてオムライス作ってくれたでしょ?」


彼女が言った。


「あの時いじけながら、私のオムライスしか食べないって言ってくれた時、辛くて仕方なかった。私はもう会わないって決めてたから。」


今まで以上に泣いているのが電話越しにも伝わってきた。


「時間がなくても最後に作ってあげればよかった。そのことだけ後悔してる。」


溢れる涙が止まらなかった。


僕も彼女も。


「また作ってよ。」


ついさっき、この言葉をいう権利を僕は失っていた。


「そろそろ終電がきちゃうから行くね。」


僕の口からはいろんな言葉が出そうだった。


引き留める言葉も。


謝る言葉も。


愛の言葉も。


でも次の会話が最後の会話になるのが分かっていた。


「人生で一番幸せな一年半だった。ほんとにありがとう。」


「私も。幸せになってね。」


もう、「またね」はなくなってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ