5/5
第五話 朝
朝起きてスマホを開いてももうおはようは来ない。
そのことが僕に一番現実を突きつけた。
いざなわれるようにキッチンに行き、火をつけ煙を吐く。
4本吸っていたことには後から気づいた。
どれだけキッチンにいたかは覚えていない。
泣いた。
溢れて止まらなかった。
初めて人を愛した僕には、止め方もわからない。
泣く権利も慰められる権利も持っていない。
昨日まで一番近くにいたのに、友達にすら戻れない。
あまりにも残酷すぎる。
この町のどこかであなたは息をしている。
それが嬉しいのか、悲しいのか涙が出る。
「みんなこうやって大人になるんだ。」
そう言い聞かせるしかなかった。
それでも、もう来ないおはようを探してしまう。
町に出れば、どこを見てもあなただった。
1つや2つじゃない。
住みにくい街になってしまった。
いつかあなたを思い出しても、苦しくならない日が来るのだろうか。
いつか同じように誰かを愛せるだろうか。
その日が来るまで、もうしばらくここにいようと思う。
(完)




