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λ:ASTRA 〜星の共鳴者〜  作者: Pemo


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12/16

第11話_藍色 (改稿済み)

気になる箇所に修正を入れました。

ご不便おかけしますが何卒よろしくお願い申し上げます。

――Nemesis(ネメシス)


第一精鋭隊の隊長執務室は、装飾がない。


机と、端末と、壁の勲章。それだけの部屋で、女性隊長はE-4区画の報告書を読んでいた。


十六機編成。交戦時間十七分。全機戦闘不能。


そして、死者ゼロ。


報告書をなぞる指が、その一行で止まった。


砲口の変形。推進器の破壊。誘爆は弾倉のみ。コックピットへの直撃は、十六機のどれにも、一発もない。偶然なら奇跡だ。偶然でないなら——十七分の混戦の中で、十六機ぶんの急所を全部外し続けたことになる。


殺せなかったのではない。殺さなかった。


「……確認する必要がある」


隊長は端末を閉じ、出撃承認の書類に自分の名を入れた。上への報告は後でいい。報告書の文字では、これは測れない。


---


「妙な依頼、というのはこれだ」


ガルムが依頼書を机に置いた。依頼主の欄を見て、俺は眉を寄せた。ヘリオス連邦、軍部直轄。報酬は標準額の三倍。依頼内容の欄には、一行だけ。


「F-9区画の通過」


「これだけですか」


「これだけだ。連邦の研究船が一隻、どうしてもF-9を通る必要がある。積荷は不明。最優先で守れ、とだけ」とガルムは煙草に火をつけた。「F-9は王権の補給ルートのど真ん中だ。連邦の艦隊が入れば、それだけで宣戦布告になる。今は表向き停戦中だからな。だが傭兵の護衛なら、建前上は民間の取引だ」


「建前ですか」


「全部が建前の世界だ」とガルムは言った。「断るか」


「受けます」


「一つ言っておく。罠かもしれん」


「その可能性は考えています」


「わかってて行くのか」


「罠だとしても、俺がそれより強ければ問題ありません」


ガルムは長い間、俺を見た。それから煙を吐いて、頷いた。


「帰ってこい」


「はい」


---


出発前、モスが格納庫に駆け込んできた。


「燈さん、また単独ですか」


「そうだ」


「F-9って、王権の補給ルートじゃないですか。あそこに単独って」


「モス」


「はい」


「カレーの店は、どうなった」


モスが一瞬止まって、それから顔を明るくした。


「候補、三つまで絞りました。一つは宙港の商業区の外れで、地球出身のオーナーがやってるって噂の店です。まだ確認は取れてないんですけど」


「じゃあ、帰ってきたら確認に行こう」


「約束ですよ」とモスは言った。「絶対帰ってきてくださいよ」


「ああ」


---


F-9区画に入った瞬間から、見えていた。


区画全体に、魔力波の網が張られている。岩塊の影から影へ、細い糸が渡されていた。一本一本は目を凝らさなければ見えない。だが全体を引いて見れば、それは巨大な蜘蛛の巣だった。索敵網。通れば、その瞬間に検知される。


「λ、見えるか」


「あん、てな、で、び、じゃく、な、は、どう、を、けん、ち、して、い、ます。もう、じょう、の、はい、ち、です。……ぱ、いろっと、は、みえ、て、い、ます、か」


「見えてる。糸の色までな」


「けい、ろ、を、けい、さん、し、ます、か。もう、を、かい、ひ、する、ルート、が——」


「いや。真ん中を通る」


「……い、と、を、かく、にん、し、ます」


「罠だと分かって入る。相手が何を用意したか、先にこっちが知る。避けて進めば、一番深い場所で食らうことになる」


λは二秒黙った。


「りょう、かい、です。けい、かい、を、さい、だい、に、し、ます」


網を抜ける瞬間、微かな震動が糸を走った。これで、向こうは気づいた。


三十秒後、岩塊の影から二十機が現れた。


---


二十。E-4の十六を超える数だった。だが数よりも、色が違った。


電磁加速砲の青白が六つ——ただし、知っている青白じゃない。充填が三段階に分かれ、段階ごとに色が変わる。青白、蒼白、そして白銀。白銀が発射の色だ。弾速は通常の三倍近い。


ビーム砲の橙が五つ。純度が高い。岩塊のラムディマジナリーと干渉しにくい光だ。つまり、岩に隠れても防げない。


爆裂弾の赤が四つ。


そして、残りの五機——金色だった。


兵装の色じゃない。機体全体から、金色の魔力波が滲み出ていた。充填も何もしていない。ただそこにいるだけで、光っている。


「λ、金色は何だ」


「きん、いろ、の、ま、りょく、は、きょう、めい、りょく、の、たか、い、ぱ、いろっと、の、とく、ちょう、です。すう、ひゃく、まん、にん、に、ひと、り。ほん、もの、の、えー、す、きゅう、です」


数百万人に一人。数万人に一人の共鳴者の、さらに上。それが五機。


通信が来た。王権の軍用チャンネル。暗号化が解除されている。聞かせるつもりだ。


『傭兵機、応答せよ。こちらアストラ王権第一精鋭隊。貴機を標的として指定している。研究船を放棄し、即時投降せよ』


女性の声だった。


落ち着いていて、温度がない。命令に慣れた声。そして俺には、声の主の色が見えた。金色の五機の中央、最も静かな光を放つ機体。指揮官だ。


「断る」


『一機で二十機を相手にする気か』


「依頼通り守る」


『E-4の件は把握している』と声は言った。『十六機、十七分、死者ゼロ。数字は読んだ。だが、あれは烏合の衆だ。第一精鋭隊は違う。——見せてみろ。数字の中身を』


投降勧告のはずが、最後だけ、試験官の言葉になっていた。


俺の中で、何かが一段、深く沈んだ。


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