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まさかお前が!?

 俺は、ヴァンと合流し、忍者姿のプレイヤーキラーに襲われたことを打ち明けた。


「……忍者男か。」

「ああ。アイツの口ぶりだと、リアルでも人を殺してそうだ。……スクショしたから、これを現像してNM運営に照会してみよう。」

 俺は直ぐにログアウトし、スクショデータを現像した。



 俺は警察署に出勤し、捜査本部へと足を運んだ。


「佐々木係長。事件の件でちょっとよろしいでしょうか?」

「雲河原係長。何かあったのか?」

 俺が声を掛けたのは、うちの警察署の強行犯係の係長の佐々木警部補だ。


「実は、容疑者と思われ者と遭遇しました。」

「何だと!? 本当なのか!」

 佐々木係長は、かなり取り乱していた。


 無理もないことだろう。

 犯行現場に防犯カメラは無く、目撃情報も無い。

 怨恨の線も、潰れている状況なのだ。

 情報が有れば、喉から手が出る程、欲しい状況だっただろう。


「これです。」

「ん? この写真がどうかしたのか?」

 俺は懐から忍者男の写真を取り出した。


「コイツは、NMのプレイヤーキラーです。コイツの犯行現場にも黒色のカードが残されていました。」

「何だと!? 沢野弘の現場にも黒色のカードが落ちていたが。同一犯だとでも言うのか!?」

「俺もNMの世界でコイツに襲われました。その時に少し会話をしたのですが、コイツはこう言っていたんです。『……この前は最高だったなぁ。さっきも別の場所で一人殺したが、物足りなさを感じたよ。……もうこっちの世界じゃ満足出来そうにないな。』って。」

「かなり有力な情報だな。直ぐにNM運営に問い合わせよう!」

 俺は、佐々木係長に写真を手渡し、捜査本部を後にした。


 これで、人物を特定出来れば、後は其奴を調べて行くだけだ。



 俺が捜査本部を出ると、溜息を吐きながら窓の外を眺めている田黒を見つけた。


「よ! 田黒どうした? 溜息なんか吐いて?」

「雲河原係長。課長にどなられたんですよ。『お前なんか刑事にいらない』って。」

 田黒のいる刑事課の課長もかなりの曲者で、上から物を言うだけで、全然事件の指揮は取れないし、部下がどれだけの事件を抱えているか知ろうともしない人物なのだ。


「あの課長も曲者だからな。……仕事かなり溜まってるのか?」

「ええ。でも、佐々木係長から小林部長に注意して貰って、佐々木係長が少し負担してくれたので、大丈夫そうです。」

「……そうか。何かあればいつでも相談に乗るからな。」

「ありがとうございます。」

 結果として、今回の件があったから、田黒の業務負担が明るみになり、良かったのかも知れないな。


 田黒の顔から笑顔も見れた事だし、俺は地域課に戻ろうと動き出す。


「……そう言えば、係長はNMをプレイしているんでしたっけ?」

「ん? ああやっているが? どうかしたのか?」

「雷を使う剣士の知り合いって居ませんか?」

 雷を使う剣士? それって……。


「……どうだろうな。他に特徴は無いのか?」

「確か、金髪のイケメン面でした。あと見たこともない剣を使ってます。恐らく高レベルのプレイヤーですね。」

 田黒が言っているのは、間違いなく俺のことだろう。

 だが、何故俺のことを探しているんだ?


「金髪の剣士は多いからな。それよりも、その剣士と何かあったのか?」

「仕事が終わって、ゲームにログインしたんですけど、其奴に斬られたんですよ。」

 ……まさか、な。


「そ、そうなのか。」

「こっちの有利な場所だったんですけどね〜。」

「……有利な場所?」

「ええ。路地裏だったので、俺の短剣の方が、相手の剣より使いやすいですから。」

「……。」

 言葉が出ないとはこのことだったのか。

 俺は、元部下がこんな大事件を引き起こすなんて、考えてもみなかった。


「……係長どうしたんですか?」

「……田黒。お前が殺ったのか?」

「え?」

「お前が忍者男なんだろ!」

 今までの会話から、俺は間違いなく田黒が忍者男であると判断したのだ。


「……どうして係長がそれを? ま、まさか金髪の剣士!?」

「ああそうだよ! あれは俺だ!」

 まさか、田黒だったなんて。

 嘘だと思いたいが、そういう訳には行かない。


「……そ、そんな。」

「お前が、沢野弘を殺したんだな?」

 俺は、田黒に詰め寄る。


「お、俺は……。」

 田黒は急に俺を突き飛ばし、逃走を企てる。


「おーーい。神。」

「風雅! 田黒を確保しろ!」

 俺は、直ぐに風雅に叫んだ。


「よく分からんが、分かった!」

「くそっ!」

 田黒は、風雅に進路を妨害されたため、反転して再び俺の方に向かってくる。


「どけーー!」

 田黒は、ポケットに隠し持っていたナイフを取り出し、俺を切りつけようとした。


「ハッ!!」

「がっ!?」

 俺は、腰に付けていた警棒を抜き、警棒で田黒のナイフを持つ手を撃ち落とし、そのまま現行犯逮捕する。


 騒ぎを聞きつけた署員達が駆けつけ、田黒の身柄を引き渡した。


 田黒の取調べは、同じ警察署の警察官ではなく、本部の警察官が行うこととなった。



「まさか、こんな結末になるとはな。」

「田黒の奴。何であんなことを。」

「全部自供したよ。仕事のストレスだそうだ。最後のトドメが沢野弘と佐内恵菜だったんだろう。」

 まだ刑事課に入ったばかりで、碌に仕事も分からないのに、仕事を押し付けられ過ぎて、相当なストレスが溜まっていたそうだ。


 そこに、今回の被害者のトラブルの処理まで小林部長に押し付けられ、爆発してしまったそうだ。


 最初は、ゲーム内のNPCを殺してストレス発散をしていたが、それでは満足出来ないようになり、次第にプレイヤーを襲うようになった。


 最終的に、最後のトリガーを引いた沢野弘を殺そうと、沢野弘を尾行していたらしい。


 そして、堂平タバコ店近くの人通りが少ない場所で殺害した。


 田黒の携帯電話の位置情報も、被害時刻にその場所を示しており、田黒の家からは血のついた服や刃物が差押えられた。


「俺がもっと田黒のことを気に掛けていれば、防げたのにな。」

「お前の責任じゃねぇだろ。アイツが勝手に仕出かしたことだ。」

 後悔しても、もう結果は変わらない。

 でも、俺にもまだやらなければならないことがある。



「全く、迷惑な奴だ。殺人事件なんて起こしやがって! 最近の若い奴はコレだからダメなんだ! キレやすいんだよ。仕事も碌に出来もしないし。こんなに仕事を溜め込んで。本当に迷惑な奴だ。」

 小林巡査部長は、田黒が座っていた椅子を何度も蹴りつける。


 余りにも小林巡査部長が椅子を蹴りつけるものだから、椅子は破損してしまう。


「器物損壊だな。」

 俺は、小林巡査部長にそう宣言した。


「あ? 何ふざけたこと言ってやがる! 」

「俺は見たぞ。アンタが椅子を蹴って壊したのを。お前らも見てたよな?」

 俺は、刑事課で小林巡査部長の暴挙を見ていた者達に同意を求める。


「アンタは警察のゴミだ! 腐ったみかんは取り除かなきゃならない!」

 同じ籠に腐ったみかんがあったら、他のみかんもダメになるように、組織に腐った人物が居たら、組織全体が腐ってしまう。


「なっ!?」

「アンタはもう終わりなんだよ!」

 この後、俺が小林巡査部長が故意に椅子を破壊したとして組織に報告し、刑事課の若手達も小林巡査部長からパワハラを受けていたと報告したため、小林巡査部長は、この職を去ることとなった。


「田黒、お前の苦しみに気付いてやれなくてすまなかった。俺が上に報告して、小林巡査部長はクビになったよ。お前も、大変だったな。……だけど、田黒。お前の仕出かしたことは決して許されるものじゃない。それだけは忘れるな。」

 俺の言葉に、田黒は泣き叫ぶのだった。

今回のおまけ


神;さて、今日はみんなでモン○ンだ!


風雅;一狩しようぜ! って何でだよ!?


神;いや、みんなで狩猟に行こうと思ってな。


風雅;どうしたんだよいきなり?


雪;どうしたんですか?


日影;何々?


風雅;いや、神がモン○ンだって、いきなり言い出して。


雪;モン? なんですか?


神;俺は、遂に猟銃の許可を取って、猟銃を買ったんだよ!


風雅:そうなのか? でも、俺達は猟銃なんて持ってねぇぞ。


雪:猟銃ってどこで許可を取るんですか?


神:警察署の生活安全課で申請して、審査に通れば許可が出るんだ。


雪:そうなんですか! 知りませんでした。


風雅:特殊な仕事だからな。


日影:あれ? 私のお爺ちゃんが田舎で狩猟してますけど、確か今日から狩猟禁止ですよね?


神:な、なんだと!?


作者:今日(2月16日)から、「全国狩猟禁止」だ。

11月15日の解禁日まで北海道以外の全国で狩猟禁止の筈だよ。


神:折角、猟銃を買ったと言うのに!


雪:ドンマイです。


※狩猟期間は、市町村により若干延長しています。

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