↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界好きの本気 ~俺はきっと異世界に行く~  作者: シラ猫
第一部:異世界転移への挑戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/31

神隠しの謎③

「健三、何か分かったか?」


 俺はソファーに座ったまま、システムデスクに向かっている健三に声をかけた。


 健三は椅子に座り、パソコンの画面を食い入るように見つめている。


「もう少しでござる。先ほど見つけた新聞記事について、さらに詳しい情報がないか調べているところでござるよ」


「やっぱり、50年前の事件については情報が少ないのか?」


「そうでござるな。何しろ半世紀も前の事件でござる。現在のようにインターネットで簡単に情報が手に入る時代ではなかったでござるからな」


 健三はキーボードを叩きながら答えた。


 俺たちは先ほど、約50年前に起きた小学生の失踪事件についての記事を見つけていた。


 当時、小学四年生の男の子が学校からの帰宅途中に行方不明になったという。


 警察による捜索が行われたものの、結局その子は見つからず、事件は未解決のままになっていた。


 今回の事件と、あまりにも状況が似ている。


 偶然なのだろうか。


 それとも、何か関係があるのだろうか。


「その男の子、結局どうなったんだろうね……」


 京子がスマホに転送された新聞記事を見ながら呟いた。


「家族も、ずっと探していたんだろうな」


 俺はそう答えながら、記事に目を落とした。


 突然、大切な家族がいなくなる。


 それがどれほど辛いことなのか、想像するだけでも胸が苦しくなる。


 今、行方不明になっている子供の家族も、きっと同じような思いをしているはずだ。


「何とか手掛かりが見つかればいいんだけど……」


 佳苗が心配そうに呟いた。


「そうだな。せめて、今度の事件だけでも解決できればいいんだけど」


 俺たちの間に、少し重たい沈黙が流れた。


 そのとき、京子がソファーの上で足を組み替えた。


 ミニスカートの裾が少し揺れ、俺は思わず視線をそらした。


 おいおい……。今の、見えそうになったぞ。


 もしかして、コイツ、わざとやってるんじゃないだろうな?


 そんなことを考えていると、隣から妙な視線を感じた。


 ゆっくり顔を向けると、佳苗がこちらを見ていた。


 にっこりと微笑んでいる。


 ……いや、待て。


 その笑顔、なんだか怖いんですけど。


「ゴホン!」


 俺は慌てて咳払いをした。


 そして、何事もなかったかのように新聞記事へ視線を戻す。


 ……頼むから、今のことは忘れてくれ。


「知也、どうかした?」


 京子が不思議そうにこちらを見た。


「いや、何でもない。ちょっと喉が気になっただけだ」


「ふーん……」


 京子は特に気にする様子もなく、再び記事に目を向けた。


 隣の佳苗は、相変わらず微笑んでいる。


 俺はそれ以上、何も言わないことにした。


「ところで、京子殿。今回の事件と50年前の事件について、何か共通点は見つかったでござるか?」


 健三が椅子を少し回し、こちらに顔を向けた。


「そうね。まず、どちらも小学生が突然いなくなっていること。それから、学校からの帰宅途中という点も似ているわ」


 京子はテーブルの上に置いてあったノートを手に取った。


「もちろん、これだけで同じ事件だとは言えないけどね。ただ、同じ地域で似たような失踪事件が起きているのは気になるわ」


「確かに。しかも、今回だけじゃない可能性もあるってことか」


 俺がそう言うと、京子は小さく頷いた。


「そう。だから、まずは50年前の事件について、もう少し詳しく調べたいの」


「了解でござる。もう少し検索するでござるよ」


 健三は再びパソコンに向き直った。


 キーボードを叩く音が部屋に響く。


 俺たち三人は、健三の検索結果が出るのを待った。


 しばらくして、健三が小さく声を上げた。


「おおっ! これは興味深い記事でござる!」


「何か見つかったの?」


 京子が身を乗り出した。


「50年前の事件について、当時の新聞に続報が掲載されていたようでござる」


「続報?」


「そうでござる。最初の記事とは別の日付の新聞で、行方不明になった男の子の足取りについて触れられているでござるよ」


 健三は画面を操作し、記事を表示した。


「どれどれ……」


 俺も画面に目を向けた。


 そこには、当時の捜索状況と、男の子が最後に目撃された場所について書かれていた。


「最後に目撃された場所が分かったのか?」


「そのようでござる。記事によると、男の子は学校から帰る途中、ある場所で目撃されたのを最後に消息を絶ったらしいでござる」


「その場所って、どこなの?」


 京子が尋ねた。


 健三は記事を確認しながら答えた。


「現在の地名と照らし合わせる必要があるでござるが、どうやら今回の事件が起きた地域から、それほど離れていない場所のようでござる」


「えっ……」


 俺は思わず声を漏らした。


 50年前の事件と今回の事件。


 どちらも小学生が帰宅途中に姿を消している。


 しかも、事件が起きた場所まで近いというのか。


「それって、偶然にしては出来すぎていない?」


 佳苗が不安そうに言った。


「私もそう思う。まだ断定はできないけど、調べる価値は十分にあるわね」


 京子は画面を見つめたまま答えた。


「でも、どうして50年も間が空いているんだろう?」


 佳苗の何気ない一言に、俺たちは顔を見合わせた。


 確かに、そこは気になる。


 もし今回の事件と50年前の事件に関係があるのなら、なぜ半世紀もの時間が経ってから、再び同じようなことが起きたのだろうか。


「それは、まだ分からないでござるな」


 健三が少し困ったように答えた。


「今の段階では、共通点を整理することが先決でござる。憶測だけで結論を出すのは危険でござるからな」


「そうね。まずは、当時の事件が起きた場所を正確に特定したいわ」


 京子はノートに何かを書き込みながら続けた。


「それから、今回の事件との距離や周辺の状況も調べたい。何か共通するものがあるかもしれないから」


「なるほどな。場所が分かれば、実際に行ってみることもできるか」


「そうね。ただ、今はまだ情報が足りないわ」


 俺は腕を組み、もう一度新聞記事を見つめた。


 50年前に姿を消した男の子。


 そして、今、同じように行方不明になっている子供。


 もし、この二つの事件がつながっているのなら、その裏には何か理由があるのかもしれない。


 だが、それが何なのかは、まだ誰にも分からない。


「健三、もう少し調べてみてくれ。何か小さなことでもいい。手掛かりがあるかもしれない」


「承知したでござる!」


 健三は再び画面に向き直り、検索を続けた。


 しばらくすると、健三は検索する言葉を変え始めた。


 事件が起きた当時の地名だけでなく、学校名や周辺の施設、新聞記事に記載されている地名など、いくつかの言葉を組み合わせて調べているようだった。


「そんなに検索の仕方を変えているのか?」


 俺が尋ねると、健三は椅子に座ったまま答えた。


「同じ情報でも、検索する言葉によって結果が変わることがあるのでござる。特に古い事件の場合、記事の見出しや地名の表記が現在とは異なることもあるでござるからな」


「なるほどね。ひとつの言葉だけで探していても、見つからない情報があるかもしれないってことか」


 京子が納得したように頷いた。


「その通りでござる。新聞記事に書かれた地名が現在も使われているとは限らないでござる。町村の合併や区画整理などで、昔の地名が変わっている可能性もあるでござるよ」


「それなら、記事に書かれている場所だけで判断するのは危険ね」


 京子はノートに目を落とした。


「そうね。まずは当時の地名と現在の地名を照らし合わせて、正確な場所を確認する必要があるわ」


「でも、同じ地域で、同じように子供が帰宅途中に行方不明になっている。これは偶然として片付けるには気になるわね」


 京子の言葉に、俺も頷いた。


 確かに、似ているというだけで同じ原因だと考えるのは早計だ。


 しかし、これだけ共通点があると、何か関係があるのではないかと考えてしまう。


「それに、50年前の事件も未解決のままなのよね?」


 京子が確認するように尋ねた。


「最初に見つけた記事では、そうなっていたでござる。続報にも、男の子が見つかったという記載はないようでござるな」


「ということは、当時も結局、手掛かりが途絶えてしまったのか……」


 俺は記事を見つめた。


 行方不明になった男の子は、どんな気持ちで最後の場所にいたのだろう。


 家に帰るつもりだったのか。

 それとも、誰かと一緒にいたのだろうか。


 もちろん、今となっては知る由もない。


 ただ、当時の家族の気持ちを考えると、胸が重くなった。


「健三、最後に目撃された場所について、もう少し詳しい情報はないのか?」


「今、探しているところでござる。記事には地名が載っているものの、具体的な場所までは書かれていないようでござるな」


「目撃された場所が分かれば、そこから何か分かるかもしれないのにね」


 佳苗が残念そうに言った。


「そうね。学校からその場所までの道のりや、当時の周辺環境も分かれば、事件の状況を考える手掛かりになるかもしれない」


 京子はノートに書き込んだ内容を見直していた。


「ただ、今の地図と昔の地図では、道路や建物の位置も違っている可能性があるわ。そこも考慮しないといけないわね」


「確かに。昔はあった道が今はなくなっているかもしれないし、逆に新しい道ができていることもあるだろうな」


「そういうこと。だから、記事に書かれた情報をひとつずつ確認していく必要があるの」


 京子の説明を聞きながら、俺は改めて今回の事件の難しさを感じていた。


 50年という時間は、俺たちが思っている以上に長い。


 当時のことを知っている人も少なくなっているだろうし、残された資料も限られている。


 それでも、何か手掛かりが残っているかもしれない。


「おおっ、もうひとつ見つかったでござる!」


 健三の声に、俺たちは再び画面へと注目した。


「今度は何?」


 京子が尋ねる。


「当時の地域に関する別の記事でござる。事件そのものの記事ではないのでござるが、周辺の地名を確認する参考になりそうでござる」


「それは使えそうね。ちょっと見せて」


 京子は健三の画面を確認しようとした。


 健三は椅子を少し回し、画面が見やすいように向きを調整した。


「なるほど……。この地名なら、現在の地図でも確認できそうね」


 京子は記事の内容をノートに書き留めた。


「ただ、まだ正確な場所までは分からないわね」


「そうでござるな。もう少し資料を探す必要があるでござる」


 俺は二つの記事を見比べた。


 50年前の事件と今回の事件。


 同じ地域で、似たような状況の失踪事件が起きている。


 しかも、最後に目撃された場所も、今回の事件が起きた地域から遠くないらしい。


 偶然だと片付けるには、気になる点が多すぎた。


 しかし、今の段階では、二つの事件がつながっていると断言できるものは何もない。


 俺たちにできるのは、残された情報をひとつずつ確認していくことだけだった。


「まずは、この場所を正確に特定することね」


 京子がノートを閉じた。


「そうでござるな。もう少し調べれば、何か見つかるかもしれないでござる」


 健三は再びパソコンに向き直った。


 俺たちは、まだ答えの見えない古い事件の記事を見つめていた。


 50年前に姿を消した男の子。


 その最後の足取りには、いったい何が隠されているのだろう。


 そして、今回の事件との間には、本当に何かつながりがあるのだろうか。


 今はまだ、その答えを知る者はいなかった。

面白いと思って頂けましたら、下の☆マークから評価・リアクション登録などをお願い致します!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。