↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亀裂【改】  作者: きじの美猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/12

第九話 取引

キョウソは苛立っていた。

長年かけて築いたものが崩れ始めている。


政治家を育てた。

役人を入れた。

司法へ金を流した。

企業を通して資金を循環させた。

移民経路を作った。

国外勢力ともつながった。


一つの国家を外から攻める必要などなかった。

内側から少しずつ変えればいい。

法律を一つ。

制度を一つ。

任命を一つ。


十年。

二十年。

国民が気づいたときには、すでに戻せない。

そのはずだった。


通信画面にオウの顔が映る。

「支援を増やしていただきたい」

キョウソが言う。

オウは笑った。

「なぜ私が?」

「我々が崩れれば、あなたにも不利益が」

「勘違いするな」

オウは指で机を叩いた。


「私はおまえたちの友人ではない」

キョウソの眉が動く。

「利用価値があったから使っただけだ」

「まだ価値はある」

「なら証明しろ」

通信が切れた。


次にキタノクニへ連絡した。

返答すら来なかった。

キョウソは端末を投げつけた。

壁へ当たり、床へ落ちる。

部屋の隅でコクドが見ていた。


「何を見ている!!」

何もかもが腹立たしい。

コクドはキョウソから目をそらさなかった。

「おまえもか」

返事はない。


キョウソが近づく。

「誰のおかげでここにいられると思っている」

コクドの顔は動かなかった。

「拾ってやった」

その言葉で、ほんのわずかに目が変わった。


キョウソは気づかなかった。

彼女は何人もの子どもを拾った。

キーツもそうだった。

コクドもそうだった。

名前を与えた。

居場所を与えた。

仕事を与えた。

その代わりに人生を奪った。

それをキョウソは恩と呼んだ。


「キーツはもう長くない」

コクドの指がわずかに動いた。

「次を探す」

初めて、コクドが口を開いた。


「また?」

小さな声だった。

キョウソが振り返る。

「何だ」

「また、作るのか」

「必要ならな」

沈黙。


「使えないものを捨て、新しいものを用意する。

それの何がおかしい」

コクドは答えなかった。


ただ。

その日から、心に忍ばせていた小さな刃は実体となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。