第十話 証言
議会の臨時委員会は、朝から満席だった。
傍聴席。
記者席。
廊下。
建物の外まで人がいた。
証言台にイシが座っている。
顔は青かった。
委員が尋ねた。
「あなたはキーツ首相に違法な身体改造を行いましたか」
イシは水を飲んだ。
手が震えていた。
「はい」
会場がざわめいた。
「静粛に!」
議長が木槌を叩く。
「誰の指示ですか」
イシは答えなかった。
視線を上げる。
後方にキョウソ側の人間がいる。
知っている顔だった。
昔から。
逃げても見つける。
逆らえば家族まで追う。
そう言われ続けた。
イシには家族はいなかった。
それでも怖かった。
人間とはそういうものだ。
「答えてください」
イシは息を吐いた。
「宗教団体です」
ざわめきがいちだんと大きくなる。
「指導者本人の命令ですか」
「手術室にいました」
誰かが立ち上がった。
警備員が制止する。
「キーツ首相本人の意思は?」
イシは迷った。
「あの子は……」
言い直した。
「本人は、力を得られると聞いて同意しました」
「危険性を説明しましたか」
「しました」
「十分に?」
長い沈黙。
「いいえ」
その一言だけは、小さかった。
しかし会場全体に届いた。
「身体にはどのような処置を」
「人工組織と、団体側から提供された生体組織を接合しました」
「その組織とは?」
イシが唇を噛む。
「制御装置を含んでいました」
ざわめきが消えた。
一瞬。
本当に音がなくなった。
「つまり?」
「外部から干渉できます」
「本人の意思に反して?」
「可能です」
記者たちが一斉に端末を操作し始める。
議員が尋ねた。
「現在も?」
イシは答えた。
「現在もです」
その証言は一時間後には国中へ流れた。
官邸で映像を見たキーツは、最初笑った。
「アホやな」
誰も笑わなかった。
「こんなん誰が信じんねん」
ブンカンが視線をそらした。
「なあ」
沈黙。
「誰が信じるんやって聞いてんねん!」
キーツは端末を投げた。
壁へ当たった。
床へ落ちた。
画面は割れたが、映像は流れ続けていた。
イシの顔。
自分の脚の図面。
接合部。
制御信号。
キーツはゆっくり右脚を見た。
「嘘や」
脚が震えた。
「おかあさんが、そんなこと」
コクドが立っていた。
何も言わない。
その沈黙が、答えのように思えた。
キーツは初めて、自分が頂点ではない可能性を考えた。




