第49話「発表の日」
四月の半ば、公式発表の日が来た。
王宮の大広間に、宮廷の主要な人物が集まった。国王が壇上に立ち、エレナへの王室特別称号の授与を正式に宣言した。
エレナは壇の前に立った。
大広間の全員の視線が、エレナに向いていた。
好意的な目、批判的な目、好奇の目、驚きの目——様々な視線が、全方向から刺さる。エレナは背筋を伸ばし、正面を見た。
(怖い)
正直にそう思った。
(でも、逃げない)
国王が言葉を述べた。
「エレナ・コールの王宮における功績——外交案件への貢献、王弟殿下への誠実な補佐、王宮の危機における機転——これらを認め、王室特別称号を授与する」
称号を受け取るとき、エレナは国王と目が合った。
国王が、わずかに頷いた。
エレナも頷いた。
式典が終わって、廊下に出ると、リーナとソーニャが飛んできた。
「エレナさん!」
「おめでとうございます!」
二人が同時に言った。エレナは笑った。
マリアも来た。
「……おめでとうございます」
静かに言った。その目に、複雑な感情があったが——それでも、誠実な言葉だった。
「ありがとうございます」
エレナは真剣な目でマリアを見た。
「マリアさんが警告してくれたこと、ずっと覚えています。あの言葉が、私を助けました」
マリアが少し俯いた。
「……いいえ」
「本当のことです」
マリアは何も言わなかった。でもその目が、少し和らいだ。
その夜、ルシアンが言った。
「お疲れ様だった」
「緊張しました」
「顔に出ていなかった」
「見えないところで足が震えていました」
ルシアンが、珍しくエレナの頭に手を置いた。梳くように。
「よくやった」
「ルシアンが準備してくれたから、できました」
「お前が、お前自身の力でやった」
エレナは少し考えた。
「半分ずつ、ですね」
「そうかもしれない」
「それで十分です」
ルシアンが、エレナを引き寄せた。
「これからも——半分ずつ、やろう」
エレナはその言葉を、静かに受け取った。
半分ずつ。二人で。
それが、これからの二人の形だ。




