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黒薔薇の檻  作者: 麗夜
148/150

第148話「二度目の宣言」

四月、皇帝が再び宣言した。

「双子を——ライアンの後継候補として育てる。そして、エレナは帝国に留まり、生涯ライアンの元で暮らす」

応接室に、全員が集まっていた。

ルシアンも、外交訪問中という名目で同席していた。

「……父上」

ライアンが立ち上がった。

「その宣言は——エレナの意向を聞きましたか」

「聞かなくていい。帝国の決定だ」

「しかし——エレナは帝国の皇女である前に、一人の人間です」

「ライアン」

「子どもたちを後継にすることも——エレナに聞きましたか」

「……聞かなかった」

「なぜですか」

「帝国の利益のためだ」

「エレナの幸せは、帝国の利益に含まれませんか」

皇帝が、ライアンを見た。

「……お前は、珍しく強く言うな」

「大切なことだから」

エレナが立ち上がった。

全員の目が、エレナに向いた。

「……一つだけ、言わせてください」

「エレナ——」

「父上」

エレナが、皇帝を見た。

記憶は、まだ全部は戻っていない。でも——今この瞬間、はっきりと言えることがあった。

「私は——帝国のために生きることを、受け入れます。二十五年間、ここにいなかった分、できることをしたい。でも——」

「でも?」

「この子たちの父親のことを、消すことはできません。子どもたちが大きくなったとき、父親のことを知る権利があります。そして——」

エレナがルシアンを見た。

「私の中に、この人を大切に思う気持ちがある。記憶がなくても、ある。それを——なかったことにすることは、できません」

部屋が静まり返った。

皇帝が、エレナを見た。

皇后が、静かに目を閉じた。

ルシアンがエレナを見ていた。

「……強くなったな、エレナ」

低い声で、ルシアンが言った。

エレナが、少し笑った。

「……あなたが、そう言ってくれたから、と思います」

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