第148話「二度目の宣言」
四月、皇帝が再び宣言した。
「双子を——ライアンの後継候補として育てる。そして、エレナは帝国に留まり、生涯ライアンの元で暮らす」
応接室に、全員が集まっていた。
ルシアンも、外交訪問中という名目で同席していた。
「……父上」
ライアンが立ち上がった。
「その宣言は——エレナの意向を聞きましたか」
「聞かなくていい。帝国の決定だ」
「しかし——エレナは帝国の皇女である前に、一人の人間です」
「ライアン」
「子どもたちを後継にすることも——エレナに聞きましたか」
「……聞かなかった」
「なぜですか」
「帝国の利益のためだ」
「エレナの幸せは、帝国の利益に含まれませんか」
皇帝が、ライアンを見た。
「……お前は、珍しく強く言うな」
「大切なことだから」
エレナが立ち上がった。
全員の目が、エレナに向いた。
「……一つだけ、言わせてください」
「エレナ——」
「父上」
エレナが、皇帝を見た。
記憶は、まだ全部は戻っていない。でも——今この瞬間、はっきりと言えることがあった。
「私は——帝国のために生きることを、受け入れます。二十五年間、ここにいなかった分、できることをしたい。でも——」
「でも?」
「この子たちの父親のことを、消すことはできません。子どもたちが大きくなったとき、父親のことを知る権利があります。そして——」
エレナがルシアンを見た。
「私の中に、この人を大切に思う気持ちがある。記憶がなくても、ある。それを——なかったことにすることは、できません」
部屋が静まり返った。
皇帝が、エレナを見た。
皇后が、静かに目を閉じた。
ルシアンがエレナを見ていた。
「……強くなったな、エレナ」
低い声で、ルシアンが言った。
エレナが、少し笑った。
「……あなたが、そう言ってくれたから、と思います」




